皆で遊びましょう・2
結果から言うと……一番誘いたかった真美ちゃんが家族と『おばあちゃんの所に行くから無理』だった。仕方ないけどすごく残念。
「佐野さん、来れなくて残念だったね」
ぽてぽてと音をたてながら歩く私に、純夜が声をかけてくる。
「うん。本当に残念。純君の方はどうだったの?」
私が残念がっていたから、そう言ってくれたんだろうなってわかる純夜の態度。まだ真美ちゃんとの好感度は上がっていないんだね。真美ちゃんの気持ちだけで言うならイレギュラーだし。BLゲームだから。
私としては純夜が真美ちゃんとくっついてくれると嬉しいんだけどなぁ。
「俺の方はリュウと西岡。それぐらいかな」
「へぇ…(西岡君との好感度はちゃんと上がってたんだ。そして水守兄の名前がないって事は、好感度が低いんだね。あの近距離が苦手な私としては、かなりホッとしてたりするんだけどね。統矢君との仲も悪そうだし)」
「姉さんは俺かリュウの傍に居てね。GWだし。もし誰かに見られて勘違いされても困るしさ」
考え事をしていたら純夜が尤もな事を言ってくれる。それもそうだね。先生と2人っきりの写真を撮られたら後々面倒だし。
「うん。わかった」
よく考えてくれる弟だよね。私にしてみたらものすごく勿体無いぐらいの出来た弟だと思う。思わず手を合わせそうになったけど、それはやめておいた。
「璃音。純夜」
待ち合わせ場所に向かって歩いていたら、龍貴が元気良く声をかけてくる。家は近くだけど、基本的に家の外で待っているとかそういうのは一切ない。
でも呼吸1つ乱れていない所をみると、若さって素晴らしいと思うね。私も日々の運動はかかさないようにしてるけど、体力じゃ完全に負けているし。
「おはよう!」
今日も爽やかな笑顔で挨拶をしてくれる龍貴。私と純夜も笑顔を返しながら、
「おはよう。リュウ」
「龍君おはよう」
挨拶を返す。うーん、やっぱ爽やか。幼馴染みの目から見てもこれだけかっこよくて爽やかで、もてないはずはないと思うんだけど、純夜一筋なんだよね。
それも龍貴の良い所だと思うけどね。かっこよくて爽やかで一途。幼馴染みながら完璧だと思う。内心はこうやって褒めまくるけど、口には出さない。何ていうか純夜もそうなんだけど、今更過ぎるかなって感じがするんだよね。
とりあえず今の私が出来る事は、見守る事か仲介役しかないし。いつものように3人で話しながら歩いていたら、あっという間に待ち合わせ場所についた。
「おはようございます」
当初の予定より人が増えてる。吃驚したけど表情には出さず、挨拶だけしておいた。
「佐山と相良も誘っておいた。話しているうちに人数も増えたしな」
あぁ、つまり車の確保が目的なのかな。
「皆おはよう」
武長先生の車から出てきたのは鷹野先生。これも驚いた。実は高野先生はとっても美人な先生だけど、実際は男性だ。けれど女装はとんでもなく似合っている。その鷹野先生と武長先生は昔から噂があったりしているんだけど、先日その現場を直接見てしまった私としては、噂か真実か曖昧なラインだと思っている。
2人して同じ人を好きになったから、ひょっとしたらライバル関係かもしくは三角関係という新たなEDを目指しているのか。
まぁ、それは兎も角仲良しである事には間違いなさそうだ。
けれど車が三台あるんだけど、誰がどれに乗るんだろう。私と龍貴と純夜。それに海藤君に西岡君に統矢君。あ、瀬川君もいた。
少し離れた場所に統矢君と瀬川君の姿が見えた。ドライバーは除いて8人に車が3台。鷹野先生は武長先生の車に乗るんだろうなって思ったら、案の定助手席に鷹野先生の荷物が置いてあった。
つまり残り7人。純夜と龍貴は佐山先生の車にのるらしく、突っ立っていた私の手を掴もうとした所で、相良先生が私の名前を呼んだ。
「海藤と清宮は俺の車に乗ればいい」
西岡君も佐山先生の車に乗って、統矢君と瀬川君は武長先生の車に乗るらしい。気付いたら決まっていた。皆早いね。決めるの。
龍貴か純夜の近くに居て、とは言われたけど、車の中だからいいか。遊園地では一緒に行動するだろうし。
助手席の後ろの席に腰を下ろしながら、先日お世話になったばかりの相良先生を見る。どうやら今回も巻き込まれ、お世話をかけてしまう相良先生に、
「今日はお願いします」
と、軽くだけど頭を下げた。それに合わせて海藤君も頭を下げる。
「別に気にしなくていい。姪がほしがっていたものが買えるから、逆に助かった」
ミラーに写る相良先生は優しげな笑みを浮かべていた。確かに1人で行くのは微妙だろう。それでも頼むんじゃなく、態々来てくれた相良先生にはやっぱりお礼の言葉しか思いつかない。
お世話になりっぱなしだ。
「それより、手はどんな感じだ?」
「先週よりは随分マシになりました。今は痛いより痒いです」
未だに手袋が外せない両手。病院で治療してもらう度に見てるけど、空気に一切触れていないからなのか、痛みは元々少なかった。
今は痒いが勝っている両手の怪我。
「ころんだって言ってたな。もうじきとれそうか?」
真相を知らない海藤君は、怪我の心配をしてくれる。本当は知っている先生方にも、真相は知られたくなかったんだけど、録画されてしまっているなら仕方ない。
GW明けには、この仰々しいいかにも怪我をしていますっていう手袋と包帯は取れるから、そうしたらそんなに気にされなくなるかな。
「うん。GW明けに行ったら、これから解放されるんだ」
「そうか。良かったな」
「うん。心配してくれてありがとね」
事情を知らない海藤君にお礼を言いながら前を見たら、微かに眉間に皺が寄っている相良先生。やっぱり自分が受け持っているクラスの生徒のほうが可愛いって話を聞いたから、色々と思う事があるんだと思う。
私じゃわからないけど。
「心配ぐらいは当たり前にするぞ……友達だろ。俺達」
照れくさそうに行った後、海藤君がニカッと爽やかに笑う。流石爽やかイケメン。何故か私の周りには多いけど。爽やかなイケメンが。
海藤君とは中学からの知り合いだけど、ずっと同じクラスで6年目。ちゃんと友情は育まれていたんだなぁ…。しみじみと思いながら私も笑顔を返しておいた。
大丈夫。海藤君との友情は忘れないよ。純夜とクラスや学年は違うけど頑張って。この件については平等にしか応援出来ないけどね。
頑張れ海藤君。今日は大切な好感度を上げるチャンスの日だよ!




