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息抜きの時間・1




 最近知り合った子たちの距離感は如何なものでしょうか。何故か妙に至近距離なんだよね。近いよ。近すぎるよ!と声を高々に叫びたい。

 無理です。免疫ないんで本当に止めて下さい。本音はソレです。ソレ。

 純夜の姉という事で私をだしにするのはいいけれど、私にまでそれをやるのは勘弁してほしい。桐矢君は純夜を尋ねて、不意打ちで身体の何処かにキスをするのにはまってるとか。

 それを聞いた瞬間青ざめたよ。恐ろしい。心底嫌だ。

 そして鷹野先生。女装が麗しい程似合っていますが、やはり対象は男の人だったんですね。こんな事になるなら全ルート、隠しキャラ含むをクリアーしておけば良かったと、本当に今更ながら後悔していたりする。

 後資料集とか攻略本とか。璃音が可愛くて買ったのはたったの1冊。Lienの純夜の事が集中で取り上げられていたけど、他のは買わなかったんだよね。それ1冊で璃音ファンは十分だったから。

 けれど今思うと、上巻と書いてあったようなきもする。多分というか絶対、下巻にも役にたつ情報が載っていただろうと思う。なんて勿体無い事をしてしまったんだろう。

 今更だけど。本当に今更過ぎるけど。


「(きっと、今日は疲れてたんだ。だから思考が上手く纏まらなくなったんだよね)」


 それも後1時間の我慢だし、その1時間も好きな授業だ。武長先生の授業を受けた後、1回教室に戻り必要な道具を持って美術室に向かう。今日は選択授業が多いから楽なんだよね。

 美術は少ないから、尚更嬉しい。これに関しては3クラス合同なんだけど、基本私に対しては海藤君ぐらいしか寄ってこないから大丈夫。


「清宮」


「ん?」


 そんな事を考えていたら、さっそく海藤君から名前を呼ばれた。


「今日の課題ってなんだっけ?」


「今日は何の絵でも良いから1枚仕上げるんだと思うよ」


「そっか」


 海藤君が後ろを振り向きながら聞いてくる。海藤君は書道か音楽を選択しそうなイメージだったけど、何故か美術を選択したんだよね。

 それは兎も角、私は何を書こうかな。外に出て、歩きながら決めても良いんだよね。迷うなぁ。

 そういえば居間まで興味がなくて気がつかなかったんだけど、美術は瀬川君や統矢君もいるんだよね。

 自己紹介の時にはいなかったから、尚更気がつかなかった。瀬川君が手を振ってきたから振りかえしておいたけど。

 チャイムが鳴る1分程前。いつも通りの時間に先生が来て、教室を見渡した後今日の議題を黒板へと書いていく。

 案の定スケッチだった。

 美術の先生は50歳の田中守先生が受け持っている。絵を描く事が好きな私は、一年生の頃からお世話になっている先生だ。

 新しい事にも挑戦させてくれる先生で、とっても活動的。毎年田中先生には年賀状を送っているけれど、多分卒業しても送りそうな気がする。


「先生。グラウンドで描いてきます」


「あぁ、いっといで」


「はい」


 早々と教室から出て行く。今はまだ桜の花もあるし、どうせなら桜を描こうと思っていたら後ろからゾロゾロと。


「海藤君も外?」


「あぁ、そっちの方が気持ち良さそうだし」


「そうだね。暖かいし。眠らないようにね?」


 一応とばかりに言ってみたけど、海藤君は気まずそうに視線を逸らしながら、


「あ…勿論」


 説得力のない返答を返してきた。そんな海藤君はあやしいんだけど、まぁいっか。私も描く場所を決めて早く書き出さないと。来週も1時間とってくれると思うけど、描ける所までは描いておかないと。

 グラウンドをウロウロとしていたら、目の前に桜の花びらが落ちてきた。ここにしよう。運良くベンチもあるし、道具を並べても邪魔にならないしね。けれど海藤君じゃないけど、眠ったら気持ち良さそう。

 うとうととしそうな気分を吹き飛ばすように、私は筆を右手に持って構える。桜は綺麗だし可愛い。

 ピンクの花びらが風に仰がれ、ふわりふわりと落ちてくる。幻想的な雰囲気に魅了されながらも、私は桜と舞い落ちる花びらを描いていく。

 ここで大まかに描いておいて、次の美術で完成させよう。

 しかし、こうやって平和な日々が続くと、先日起こったばかりのストーカー被害が嘘のように思える。怖かったけど、というか私の場合は自分で首をつっこんで、危ない目にあっただけなんだよね。

 純夜たちには言えないけど。のど元は過ぎたとばかりに報告したら、絶対に怒られると思う。純夜や龍貴は怒った後に過保護が悪化する。

 絶対に言わない方が身の為だよね。油断しないように気をつけよう。

 そんなふうに考え事をしていたのが駄目だったのが、筆が滑って別の場所に色をつけてしまう。薄い色だから最終的には目立たなくなってくると思うけど。

 集中して描かないと、来週も終わらなさそう。

 それに好きな事をしている時の時間の流れは、今も昔も変わらずに早い。このままだと下書きすら終わらないかも。流石にそれは駄目だ。5分前にアラームが鳴るようにセットした腕時計を横に置いた。

 よしっ。集中。 

 好きな事だからあっさりと集中が出来て、気がつけば遠くで……じゃなくて隣から音が鳴っていた。

 あれ。もう時間なんだ。このぐらいまで描けていれば、次は教室で大丈夫。手早く片付け、私は美術室へ戻る為に少し早歩きで教室へと戻っていった。





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