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ストーカー事件・水守統矢視点


 人数は全部で5人。このぐらいの人数だったら背後を取られなければ楽勝だ。律が言った通りの場所で、壁に隠れるように立つ。狭い路地裏からあき超えてくる足音。そこからひらけた場所が俺の待機している場所でもある。

 どうせならここで2人程片付けた方が後々楽だ。

 つま先が見えた瞬間、俺はある程度力加減をしながら回し蹴りを食らわせた。一番最初に走っていた男は吹っ飛ばされるが、その後ろを走っていた4人が壁の代わりを果たしたのか、その場に崩れ落ちた。男達の足は止められたが、4人が俺の存在に気付いた瞬間、2人目にも蹴りを食らわし横へと蹴り飛ばした。

 これで後3人。

 しかも相手は突然現れた俺に対応出来ていないのか、3人目には鳩尾に拳を食い込ませた後に左足で蹴り飛ばす。

 後2人。

 倒れた3人の所為で足の踏み場がなくなると同時に後ろへと下がり、広い場所で残り2人を待ち構える。


「なっ……なんなんだよお前はぁッッ」


 一瞬で3人が地面に転がったように見えたのだろう。残った男の内1人が叫んだ。震えた声で。その時点で脅威も何も感じない。

 この程度で乱れる力量なら、初めからこんな事をしなければいいのに。呆れながらもしゃがみこみ、自分を男の視界から一瞬見失わせてから地面を蹴り飛び上がりながら膝を腹へとめり込ませながら、そのままの勢いで後ろに倒れこんだ男の後ろに立っていた最後の男に拳を鳩尾へと叩き込んだ。

 あっさりと片付いた男達を目の前に、俺はもう一度息を吐き出した。勿論、呆れの溜め息だ。

 恐らくというか絶対だろうが金で雇われたであろう男達。たったこれだけでやられる男達を態々金を出して雇うなんて、金持ちは無駄使いが好きだな。

 取り合えず男達を縛り、5人の携帯のデータをミニノートパソコンに写しておく。これには今回の事件の依頼メールや、そのほかにもヤバイデータが収められていた。

 無用心だな。パスワードもかけないなんて。どれだけ自分に自信を持っているのだろうか。

 呆れてものが言えない。

 公園にいた女は、清宮を捕縛する前に律が連絡をすると言っていたから、これで大丈夫だろう。一応男たちの携帯を使って、主犯の女にメールを送っておく。

 こいつらの回収もしてもらった方がいいしな。

 別にここに放置していても、問題はないとは思うが。


「後は清宮か」


 俺にとっては取るに足りない男達だったが、清宮にとってはそうはいかなかっただろう。どうしてこんなに危険でしかない行動をしたのか。

 この後会って直接言わなきゃいけない事が多そうだ。強くなりたくて剣道をやっているという話は俺も知っているが、それでも男5人を相手にするのは無謀でしかない。

 仮に男達の事を知らなかったとしても、ストーカーの呼び出しにたった1人で会いに行くなんて、やはり無謀としか言いようがない。

 そもそも、あそこまでやる人間の精神が正常であろうわけがないのだが、弟に対してあそこまでした女に腹がたったのだろう。わからなくもないが、こっちとしては心配で仕方ない。

 一方的な心配かもしれないが。


「さて…と。律と合流するか」


 歩いても5分程で着く場所に律の自宅はある。その時、パンツに入れてあった携帯が一度だけ揺れた。律からだろうと思って見てみれば、案の定律からだった。

 庭に横たわってシートを上に被せて隠れたらしい。汚れたが、そのおかげで怪我はないそうだ。ただ、清宮の両手の包帯は白いから、特に汚れが目立つみたいだけどな。

 出来れば両手の件も、事前に止めたかったというのが本音だったが、それは今更どうしようもないし、清宮には言わずに心に留めて置こうと思っている。

 弁当は作ってもらっているが、清宮に行動を制限出来る程親しくなったとは思っていない。今の所は俺の一方通行だ。この距離感はもどかしいが、それも仕方ないと自分に言い聞かせるように呟き、律と合流するために走り出した。

 メールだけじゃなく、この目で清宮の無事の姿を確認したい。そう思うと自然と足が速くなる。


 清宮と律が話している姿を見つけ、漸く身体から力を抜く事が出来た。歩いて距離を縮めながら、清宮の姿を確認する。

 メールの通り、庭の土で汚れただけのようだ。律のメールを疑っているわけではないが、実際自分の目で確認すると安心感が違う気がした。

 この件は俺と律と清宮。そしてz件を起こした女とその両親だけの間で終わるのだろう。

あの女は学園で起こした事件の責任は取らされない。大人同士の取引で、転校という形をとるだけだ。

 それは正直気に食わないが、これ以上害が清宮に及ばないならそれでいい。

 清宮が無事だったのだから。




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