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ストーカー事件・1


 ピヨピヨというひよこの鳴き声で目が覚めた。この音はメールだね。

 誰だろうと携帯を操作すれば、龍貴からのメール。こんな時間に珍しいと思いながら送られたメールを読む。


「~ん?」


 寝ぼけ状態の思考で考えが上手くまとまらない。


「コーヒー飲もう。それがいい。」


 ケータイをポケットにつっ込み、静かにリビングの扉を開ける。後は慣れた動作でコーヒーを煎れるだけ。

 他に飲む人がいないから、ドリップ式のコーヒーをカップにセットし、お湯を注ぐ。時間は5時。

 いつもより1時間程早い目覚め。

 お弁当の下準備は済んでいるから、6時に起きれば十分なんだよね。あぁ、でもこの時間にこんなふうにのんびりとコーヒーを飲むのは良いかもしれない。落ち着くというか何と言うか。

 ある程度頭がスッキリした所で、龍貴から届いたメールを確認する。


『タイトルは純夜には秘密で』


 それからして怪しい。


 『純夜に3-Aの女がストーカー紛いの事をしてる。

 璃音には秘密だと言っていたけど、被害が及ぶかもしれないから、それだけは気をつけて』


「……」


 あぁ。そういえばそんなイベントがあったよね。

 けれどメールの返事をどう書けばいいのか分からず、口を噤んだまま時間だけが流れていく。


「(3ーA……担任は誰だっけ。純夜がいる2-Aの担任が佐山先生っていうのはよく覚えているんだよね。なんといっても攻略相手だし)」


 佐山先生とのフラグをたてた時、女生徒が他の学校に転校していったなぁ。確か純夜と仲の良い人物を男女に拘らず嫌がらせをして、問題が結構大きくなったんだよね。

 ゲームの世界だと、問題が大きくなっても然程後には引きずらない。次の章にいけば、噂なんていうものも消えている。

 けれどここは現実。ゲームではない。ゾッとして、思わず腕を交差して自分で自分を抱きしめるようにしながら力を込めた。




 物が飛んでこなくなった通学路。

 新学期が始まってそろそろ一ヶ月。出だしは兎も角、ザッとみる限り平和そのもの。

 初っ端に2日間連続で物が飛んできたから、純夜と龍貴があたりを警戒しながら歩いてるが、そろそろいいんじゃないかなと思う。

 警戒の理由はそれだけじゃないだろうけど。仕掛けてくるのは、誰でも開けられてしまう下駄箱や机だったと思う。


「純君。大丈夫だよ」


「前もそんな事言ってたよね」


「…そうだね」


 イベントだという事を話せないから、素直に頷く。

 純夜が怒ったら怖いんだよね。けれど、予想通り通学路では何も起こらなかった。

 2年と3年だと玄関が違う為、校舎の前で別れる。


「姉さん、気をつけてね」


「璃音。気をつけろよ」


 2人から言われ、とりあえず手を振って応えておく。多分、気をつけろの意味が違うと思うけどね。

 3年生専用の下駄箱。自分の所を開ける時は何かが仕掛けられている事を前提に、下敷きでガードしながら開けた。

 案の定何かが飛んでくるが、下敷きに当たって割れた。


「靴は……ないなぁ…」


 この分でいくと、机も被害にあっているかも。


「璃音おはよう。で、どうしたの?」


「あ。おはよう、真美ちゃん」


 真美ちゃんの怪訝そうな表情。


「知らない。開けたらこれだったし」


「…下敷きでガードしたって事は、何かしらの情報は提供されているんでしょ。それをじっくりと話してもらうからね」


「現場見られたら仕方ないか」


 一応真美ちゃんの下駄箱を開ける時も下敷きを使ったけど、何も飛んではこなかった。どうやら今の所は私限定なのかな。


「はい、靴」


 ゴミ箱に捨てられていた私の靴を持ち、ティッシュで汚れをとってくれる真美ちゃん。


「ありがと。そこのゴミ箱で良かったっていうべきかなぁ」


「ある意味良かったけど、やっちゃいけない事をやっちゃった子は誰かしらね」


 ……お怒り真美ちゃんです。

 真美ちゃんとは私は初等部からの付き合いなんだけど、真美ちゃんが怒る事は滅多にない。自分にされた事はさらりと受け流せるし、口論すれば相手を論破出来てしまう。頭の回転がものすごく早いんだ。

 私も前世の記憶があるから一応ついていけるというレベル。その下地がなかったら、真美ちゃんと親友にはなれなかったかもしれない。


 無言のまま真美ちゃんは白いタオルを取り出し、私の下駄箱を拭き出す。


「真美ちゃん。それは私がやるよ。流石に」


「大丈夫よ。拭き終わったから」


 白いタオルは真っ黒に汚れていた。一体何を塗ったのかは分からないけど、嫌がらせには十分なのかな。

 靴に塗られてなかったから良かった。流石に誤魔化せなくなりそうだしね。けれど今日からは全て持ち帰ろう。ちょっと大変だけど、被害に会うよりはマシだよね。


「タオルかして。洗って返すから」


 タオルを受け取る為に右手を差し出そうとすれば、それより先に鞄の中に仕舞われてしまう。


「鞄の中が汚れちゃうよ」


「袋に入れたから大丈夫よ。璃音。それより早く教室に行きましょ」


「……はーい」


 気分的にはドナドナです。連れ去られる感じです。情報を渡さないと諦めてくれそうにないなぁ…。





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