親友からの相談・1
「んー。美味しい」
新作のケーキを頬張りながら声をあげた。
元々タルトは大好きだけど、ベリー系のタルトも美味しい。こういう味付けは大好き。
「はぅ。幸せ~」
「璃音は相変わらず璃音だね」
「意味がわからないよ。真美ちゃん」
「いいのいいの。璃音はそのままでいてって事だから」
「…ん~。何か凄く悩んでる?」
いつもと様子が全然違う真美ちゃん。元々相談という目的があってここに来たんだよね。
「んーと……本当は璃音に相談していいか迷ったんだけどね。
璃音しか相談する人がいないのよ。この件に関しては特に」
「とりあえず話してみて。聞くだけしか出来ないかもしれないけど」
大体、自分で解決してしまう真美ちゃんが、相談するという自体珍しい。フォークをお皿の上に置き、ジッと真美ちゃんを見つめる。
「……」
まだ話す事を迷っているのか、真美ちゃんは手を組んだまま口を噤む。急かさず、話し出すのを待ってみる。
「…あのさ」
五分程経った頃、真美ちゃんが重たい口を開いて話し始めた。
「この年で初めてなんだけどね…」
「うん」
「……純夜君にね……」
「うん?」
純夜の名前が出たけど、なんだろう。
不思議そうに見ていたら、耳まで真っ赤に染めながらそっぽを向く真美ちゃん。
「………惚れてしまったみたいなの」
長い沈黙の後、消えそうな程小さな声で呟く。
「そっか」
吃驚して、かなり素っ気無い態度を取っちゃった。流石無敵な主人公。男性も女性も関係なく惚れさすフェロモンを撒き散らす純夜。
あのクールな真美ちゃんを惚れさすなんて、流石としか言いようが無い。けれど純夜に惚れている女の子は珍しくはないから、真美ちゃんがそうなるのは当たり前の事だったのかもしれない。
「競争率高すぎて笑うしかないんだけどさ」
話を続ける真美ちゃん。
確かに、色々と競争率は凄すぎる。
私が納得して頷いていると、真美ちゃんが苦笑を浮かべながら言う。
「驚かないんだ?」
「ちょっと吃驚したけど、もて過ぎるのは身内だから知ってるしね」
競争率が男女問わず、というのが純夜の凄い所だけどね。
うぅむ。しかし真美ちゃんも参戦するんだ。流石のフェロモンだなぁ。ゲームだとBLしかなかったけど、現実だとこういう事もあるんだ。
この世界が現実だという事を、改めて噛み締める。
ゲームだと、下駄箱の中にラブレターがぎっしり、何て場面はないしね。
「頑張れしか言えないけど、それでOK?」
親友の真美ちゃんを応援したい気持ちはあるけど、公平にと決めたからにはそれを貫こうと思う。
「それで十分よ。璃音に秘密にしている事が嫌だっただけだし。あーすっきりした」
晴れ晴れとしている真美ちゃんに、良かったと私も頷く。
もし協力してほしいと言われれば困ったけど、真美ちゃんはそういうタイプではない。だから親友でいられる。
私に対して、純夜を好きな子が威圧的な態度に出たことがあったりして、そういうのが嫌で、ある程度女の子とは距離を取っちゃってたんだよね。女の子の友達に対しては。
精神年齢が相当上でついていけないという事もあったけど、そういういざこざに巻き込まれる事は避けたかった。
「璃音」
「ん?」
「私が振られても、璃音との友達関係は止めないから、璃音も覚悟して私と友人関係を続けてよね」
「そんなのは当たり前だよ」
真美ちゃんのこういう所も大好き。
「よしよし。今日はお姉さんが奢る!」
「…誕生日的には私の方が姉だけど」
「よしよし。今日は妹さんが奢っちゃう!」
「……」
誕生日を考えれば、私の方が妹になる。妹で言い直すと、真美ちゃんがつっこむ事を止め、ジト目で見てくる。
「ね。真美ちゃん」
「…しょうがない。今日はお言葉に甘える」
「ありがとー」
ついでにお土産のケーキを頼んだ後、食べ途中になっていたタルトの残りを頬張った。




