いつもと同じ日曜日
和田喬助さん主催の企画「世にも奇妙なショートショートコンテスト」参加作品です。詳細→ http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/183239/blogkey/551065/
朝だ。おはよう!
俺はベッドの上でむくりと起き上がる。平凡な男子高生の平凡な一日の始まりだ。
とはいえ窓の外を見れば、からりとした青空が広がっている。これは出かけるしかないないだろう。行き先なんてどこだっていい。
せっかくのすばらしき日曜日、家に閉じこもってちゃもったいない!
なーんて勢い込んでいたらベッドからおりるところでシーツがからまり、派手にころんでゲーム機をすっ飛ばした。
派手な音を立てて壁にぶつかったゲーム機は大破。……まあこれ、プレイ中に黒い影が映ったりして、故障かなと思ってたとこだし。いいか。
とにかく破片だけかたづけていこう。そう悪いことも続くまい。
ビバ! 日曜日!
…………。
前言、撤回。
今日は出かけるべき日じゃなかった。厄日飛び越え天中殺だ。
まずマンションを出て早々スニーカーのひもが切れ、あわててかがんだら、目の前に鉢植えが落ちてきた。
繁華街では、コインを落として拾いにいったらすぐうしろの自販機に乗用車がつっこんだ。運転席には誰も乗っていなかった(なんでだ)。
警察が来る前に適当に逃げ込んだ喫茶店。いきなりナイフが飛んできて横の壁に突き刺さった(犯人の目撃証言なし)。
すぐに店の人もとんできて平謝り。パフェを無料にしてもらった。許した。
そして今。
夜道を歩く俺のあとを、誰かがつけてきてることに気付いた。さすがに戦慄。
おいおいなんだよ男をストーキングして楽しいかよいや待てひょっとして俺じゃないだれかをって別に近くにだれもいねーよどうしたらいいんだこれ携帯でけーさつ呼ぶかでもその間に襲われたりしたらどうすんだいやいや気のせいだったらただの自意識過剰いやいやいやご時世的に自衛大事だからいやいやいやいや
うん。ちょっと落ち着こうか、俺。
まず状況を整理しよう。要は家に着くまでに巻けばいい。
それができないようだったら、やられる前に、ヤる。
完璧。
家とは違う方向に歩いていく。足音はないが、気配がしつこくついてくる。
暗がりの路地で、急に足を速めて角を曲がる。
気配がすっと近づいてきた。
もう、俺のすぐうしろに――
「うおりゃあああああああああああああぁぁっ!!」
「!?」
渾身のラリアットは見事、ストーカーの首をとらえた。
ふっとばされてころころと転がった首を大慌てで追いかけていくストーカー。拾われた首がうらめしげにこっちを見るから、俺は中指立ててメンチを切った。奴はびくっと震えてそそくさと逃げていった。
勝った……やったぞ!
俺は生き延びた!
意気揚々と帰宅。そして。
玄関先で、いきなりこけた。
思いっきり頭を打った。火花が出るくらいの衝撃。
やばい、と思う間もなく、意識はブラックアウトした。
――鳥の声が聞こえる。
ふっと目を開くと、さし込む光は明るかった。なんだか普通に寝てたことに違和感があるような、そんな気もするが……
まあいいや、朝だ。おはよう!
俺はベッドの上でむくりと起き上がる。平凡な男子高生の平凡な一日の始まりだ。
とはいえ窓の外を見れば、からりとした青空が広がっている。これは出かけるしかないないだろう。行き先なんてどこだっていい。
せっかくのすばらしき日曜日、家に閉じこもってちゃもったいない!
ENDLESS REPEAT