妖精歌謡その1
妖精かよう、というのが元ネタなので、ほぼほぼダジャレです。ついでに言うと、ボカロは知ってこそいるけど使ったことはないので、こんなことできるのかは謎です。クリ〇トンと聞くとオーディオメーカーしか思い浮かびませんし。
「妖精歌謡」1
桜3月春4月。
僕がじいさんの遺した家に居住を開始してから半年が過ぎた。
とある事情で謎の現金収入が入るようになったので、初めのころのように生活費の心配は(当面は)いらなくはなったけれど、その分というか妖精災害は逆に激しくなった気がする。まあ、あいつらの事を災害と呼ぶのも言いえて妙過ぎるきらいはあるけれど。今日は今日とて、朝から元気に家屋内を飛び回る音がする。・・・どう見てもアブかハエだよなぁ。
ミイナ「あ、私はハエでも良いよ。でもハエなら男だよネ。私、ち〇ち〇無いよ。」
朝から何を言ってやがる。いや、お前はそもそも性別なんぞあるんかい。例えばミミズなんかは、半分に切れても確か雌雄同体だからあまり関係なかったはずだが。
ミイナ「あ、失礼ネ。わたし土竜は嫌いよ。確かに名前に竜ってついてるけど。ドラゴンフライならOKだけどネ。」
こいつ、変なところで学があるな。大陸系だけど。でも・・・あれ、おかしい。ヤツの追撃がない。「ここかぁ、」と一言吠えたいが、その気配すら感じられない。
ミイナ「シイナとは繋がっている訳じゃないから、無理だよ。確かにアナタの人間としての勘(生存本能)は時々凄いけど、相手は妖精なんだから。」
ちょっと上から目線を感じる言葉に少々むっとしたけれど、確かにこいつらは妖精などというモノで、人知の枠からはみ出ている存在なのだ。と思えば怒るだけ無駄という事か。
ミイナ「あぁ良かった。落ち着いた・・・。」
ん、何かごにょごにょ言ってる。しっかり聞こうと耳を向けたところに、
ミイナ「シイナはね、今日は早朝から丑さんたちと農作業なの。」
思った以上に耳元でミイナが会話してきた。何か誤魔化そうとしている気がしないでもないが、腹が減ってきたし聞くのはまた後でも良いだろう。
ミイナ「そ、ごはんごはん。あ、でもそろそろシイナ帰ってくるかもだから、もうちょっと待っててくれる?」
なるほど、今日の作業はシイナの担当か。次の道の駅への出荷予定は明後日だから、今日はシイナだけ牛と畑か。
「あれ、牛と?」
ミイナ「ウサギはすぐにサボるからね。気が付くと変な目をして寝てるから、寅さんのお腹が膨れちゃうんだ。」
「牛は大丈夫なのか、食いではありそうだけど。」
ミイナ「寅さんだってそうそう大事な仲間を食べたりしない
ムーョ。たぶん。それに恐らく仲間内じゃ辰神様に次いで強いのは丑さんだからね。手を出したら大変だよ。でも、ウサギも狩りすぎるときんきゅうあんけんの時ちょっち困るんだけどね。」
「何だ、緊急案件って?」
ミイナ「あ~、んとね、彼らの統率者っぽい方がいて、その方がお帰りになるときはウサギが火に飛び込むんだよ。いくらでもお供え物はあるのにね。まあ決まりみたいなものだから。」
む~何とも血なまぐさい?話だが、何か引っかかる。
「もしかすると、その後復活してその方に抱きかかえられてたりするのかな?」
ミイナ「さすがぁ。良く知ってるね。あのウサギ、それを鼻にかけたりするから、なお寅さんを怒らせるんだけどね。あ、シイナが帰ってきた。お疲れぇ、シイナ。」
ミイナはそう言って玄関に迎えに出たが、僕は騙されない。即座に台所の冷蔵庫に駆け寄り、冷蔵庫の裏を指さして「そこだぁ!」と言ってやった。案の定そこにはミニキャベツ入りの背負子を背負ったシイナが、今にも飛び掛からんとしている姿があった。
ミイナ「あれ、シイナ。そんなとこで、お帰り。」
シイナ「いちもいつも心臓に悪い男ね。なんでわかったの?」
まあ、シイナだからな。そのくらいは読めるというものよ。
ミイナ「シイナぁ。そんなに仲良くしちゃズルいよ。」
シイナ「もう、こんな面倒、嫌だから黙って襲おうとしてたのに。ミイナの莫迦。」
いや、ミイナ。これは仲がいいからやっているんじゃなくてだな、要するに、
「妖精と人間の間には越えられない壁があるということさ。」
ミイナ「かべぇ?ぬりぬりのことぉ?・・・浮気はダメヨ。」
シイナ「・・・・・・」
シイナは恐らく、頭を抱えている。僕にはわかる。
ミイナ「確かに私のはあんまりないけど、ぬりぬりのようなまな板じゃないモン。」
シイナ「ぐ、ぐふぅ。げへへへ。」
違った。こいつ笑ってやがるんだ。どうしてくれよう、この羽虫めが。」
ミイナ「ねえ、聞いてるの。」
シイナ「げへ、げへ、げへへ。ねえ、ちゃんと聞いてあげたら?」
とりあえずミイナの口をその辺にあった絆創膏(テープ型)で塞いで、ついでにシイナの羽にも巻き付けてやる。
ミイナ「ウグウグウグ。」
シイナ「ちょっと~、何すんのよ!」
当然の罰だ。本当に何をいいやがる。
ミイナ「う、う、ふう。ちょっとぅ、酷いよぅ。いくら二人の仲だってぇ。」
シイナ「もう、のりが取りにくいってば。羽がくっついたらどうすんのよ。」
反省しろ、お前ら。特にミイナ、何だ、仲って?それにそのぬりぬりって何だ?
ミイナ「だってぇ、私たちってぇ、ごにょごにょ・・・。ぬりぬりはぬりぬりだよぉ。」
シイナ『あらら・・・。見事に真っ赤になっちゃって。いやぁ、真っ赤にしたのかなぁ、この性年はぁ?ついでに言っとくとそうね、ぬりぬりって言うのは日本古来のアレよ。知ってるでしょ?」
そんな当然のことのように言われても僕に何と言えと。水木先生的なアレの事はわかるけど、それは一般常識じゃないからな。少なくとも人間にとっては。
ミイナ「アナタにも仲良くしてほしいなぁ塗り塗り。結構便利なんだョ、逃げるときとか。」
シイナ「せっかくその辺にいるんだもんね。活用しないのは損ってものよ。」
ダメだ。やっぱりこいつらのペースにはまるとこちらの常識が怪しくなる。まず、色々問題点を洗い出してやろう。そう決めた。
とりあえず、畑から帰ったばかり?のシイナに話を聞いた。
シイナ「もう、照れることないぃ・・・いてててて、言わない言わない、もう言わないから、絆創膏はやめて。羽の手入れ大変なんだよ。」
ミイナ「むぅ・・・。」
何かミイナが不服そうなんだが、しばらくは触れない方がいいな。
「で、シイナ、何があったんだ?登場そのものはいつものノリだが、ちょっとだけ変だぞ。」
シイナ「ん、実はね。」
ミイナ「何、どうしたの?シイナらしくもない。あ、羽はダメだョ。許さないんだから。」
どうも未だに、こいつらの羽については謎のままだ。聞いても軽く躱されるし。それはさておき、シイナの反応が思いの外深刻そうなのが気にな・・・おい、ミイナ。少なくともシイナとどうにかなろうとは思っちゃいないから変な反応をするな。面倒くさい。
ミイナ「ホント?・・・うん、信じる・・・シイナ、ゴメンね。」
シイナ「ミイナ、・・・あたしも面白がってからかってごめんね。」
てめ、やっぱりからかってやがったのか。これは・・・・・・。
ミイナ「もう止めてあげて。それよりもシイナの話を聞いたげようよ。」
シイナ「ミイナ・・・、ありがとう。まあこの話はミイナにも関係ある事なんだけど。」
シイナの話を要約すると、こんな感じだ。今朝は除草中心に作業する予定だったので、僕には声を掛けずに例の畑に向かったとのこと。作業はしごく順調で、途中戌が逃げ出そうとするのをシバいたくらいでそれ以外の皆は真面目に作業に勤しんでいたのだが、作業も終盤、ただ帰るのももったいないので、ちょっと生り過ぎかと判断した野菜を、どうせなら出荷しようと思ったのが問題だったらしい。思い立ったが吉日とばかり、先日購入したノートパソコンから道の駅にメールを出したところ、担当さんに今月の道の駅祭への参加を打診された、というのだ。
ミイナ「へえ、凄いじゃん。シイナ、歌上手だからぴったしだと思うよ。」
シイナ「何いってるのよ。あんたも、よ。あたしら二人へのお誘いなんだから。」
ああ、だからミイナにも関係あると言った訳か・・・。でも、え、それ可能なのか?
「おい、シイナ。さすがにそれは。」
ミイナ「おっまつりおっまつり!」
シイナ「そうよ、判ってはいたのよ。でも・・・担当さん、口が上手いんだもん。ついOKしちゃったわよ。あそこでくされ戌がエンターキー押さなければというのは、言い訳ね。」
別に対面ではないのに口が上手いっていうのもアレだが、気持ちは判る。あの人たち強引だからなぁ。つい勢いってのもあったのだろう。乗せられやしぃタイプでもない(筈)だからよほどうまい煽り文句があったのだろう。って、まて、メールだあ、いつの間にそんな。
ミイナ「先週、言ったよね。」
シイナ「あんた事務手続き面倒くさがるから、あたしがやるからって事になってたでしょ。その一環よ。ミイナじゃちょい問題あるし。」
そうだ。前に道の駅から帰った後で、僕自身の口座を確認に銀行に行ったら、ちょっと驚くほどの金額が振り込まれていたのだ。5,6万かと想像していたのだけれど、以前から預かっていた分もあるとかで、結局7桁にもなる金額が振り込まれていたのだ。まあ、もともと申告するほどの収入も無くぶらぶら生きていたから、そのくらい(200以上だとさすがに困るけど)なら、無申告とかそういう問題は、各種控除金額内だから発生しないけれど、まあ、いずれ必要だし、必要経費にもなるし、ということでシイナ用にノートパソコン・プリンターと通信環境一式(句点モバイルの)もろもろを用意してあげたんだった。そうか、もうそこまで使いこなしていたのか。便利なヤツ、というか空恐ろしいな、シイナよ。他にも色々ツッコミどころはあるが、今現在僕たちの家計を支えているのは、シイナの技術で間違いない。いかに・・・、
ミイナ「怒らないで聞いてね。」
シイナ「あんたの人間としての存在があたしには必要だったのよ。相手から認識されないと何にもならない人間の世の中だもの。」
等と言われてはいても。とりあえず善後策は考えておかなければ。
ミイナ「ソーレそれそれお祭〇だ~。」
シイナ「ミイナはそればっかりね。まあ、のど自慢の審査員やるぐらいだから、大丈夫とは思うけれど。」
「で、シイナ。その審査員とやらは、いつ、どこで、何時間くらいやるんだ?それによっては必要な準備とか、色々ありそうだが。」
ミイナ「むぅ。シイナばっかり。」
シイナ「要綱はこのプリント。メールで送られてきたのを印刷しておいたわ。」
何々、日時は4月10日の午後1時から3時までぇ、お二人のデュエットとトークを絡めぇ、懇親会有りだとぉ、・・・
「お前、今からでもこれ、断れ。無理だろ、どう考えても。」
ミイナ「でもさ、スタッフさんにはいつもお世話になっているしぃ、お客さんも来るなら直接お礼言いたいよね。」
シイナ「そう、妖精が感謝の心を忘れたら妖精じゃないわ。是非とも出たいというのが正直なところよ。」
でもなあ、何か根性論ぽくなってきているのが不安ではあるか。どうしたもんか。
ミイナ「服、新調しよ。」
シイナ「そうよね。去年の獲物だけじゃね。」
いや、そもそも。
ミイナ「あれぇ、何も着てない方が?」
シイナ「本当にこの、性年はぁ。」
もう、好きに言いやがれ。というか、大前提を忘れてないか?
「着るものも何も、お前ら、僕以外の人に見えるのかよ?」
ミイナ「あ・・・。」
シイナ「れ・・・、そういえば。」
「だから色々あるだろうけど、突っ走り過ぎなんだって。まずは出席したいにしても、例えばオンライン出演じゃダメなのかとか先方に確認すべきなんじゃないか?」
ミイナ「なあるほど、賢い。」
シイナ「・・・そうね、少し舞い上がり過ぎてたわ。あんたの言う通りよ。じゃあ、それ、聞いてみてくれる?」
え、僕?
ミイナ「そうか、私たちじゃ声も一般人には届かないもんね。メールじゃ伝えにくいし。」
シイナ「そういうわけでお願いね。」
やられた。面倒くさいけれどその辺の折衝は、そうか僕じゃなきゃダメか。ブツブツ。
ミイナ「頑張ってね、ア・ナ・タ。」
シイナ「すまないけれど、よろしくね。」
案を出した以上は、それ以前に色々と面倒をかけている身としてはそのくらいの骨は折るモノか。とりあえずはスケジュール調整の電話だな。割と日程詰まってるけど大丈夫かな。
・・・ぷるる、ぷるる、ぷるる・・・
割とあっさりとその辺は決まって、一応二人はオンライン(風に)出演で、道の駅の展示物スペースに造る舞台上に机を置いて並べたパソコンを介してコメントや参加者の歌を審査する。パソコンを操作したり通信をつなげたりするのは僕の役回りということにして、僕がパソコン前に陣取るという配置が決まった。僕が操作しているように仮装したパソコンの情報を、さあそこからが思案のしどころだったのだが、シイナがとんでもない案を出してきた。ボカロソフトをリ〇・レ〇導入して、想定問答に即した音声を予め作っておけば、質問等がよほどひねくれたモノでなければ乗り切れる、というのだ。実際のところその辺の打ち込みスキルはシイナだけでなくミイナも凄まじいモノがあった。普通に僕の質問スピードより速く回答を打ち込んで回答音声を作成しやがる。この分なら電話で通常の会話すら可能なのではなかろうか。その位の能力である。後は不慮の事態がなければOKではないか、というところまで(事情を知らない)道の駅スタッフとパーテーション越しに会話する形式でシミュレーションを繰り返して大丈夫、という感触を得たうえで当日を迎えることとなった。いや、何だか道の駅スタッフのミイナ・シイナに対する期待の高さ、協力姿勢に対し、逆に恐ろしくもあったというのが本音ではある。どうやらシイナは、それどころかミイナもここの道の駅の生産者一同やお客さんたちとブログ等を通じて交流があるらしく、一部では熱狂的シンパがいる、とのこと。逆に彼女ら(ブログ等上なんだけど)を顎で使っている僕は(そんな事実は無いのだが)、その他大勢から見れば、諸悪の根源とも目されているかもしれないよ、気をつけなさい、というのがスタッフら大方の見方であったのは、驚きのあまり開いた口がふさがらない事態であった。僕、行かなくとも良いかな(でもそれも、何故かスタッフのお母さんたちに拒否された。)。彼女らの眼は寅さんが僕を見る時のソレに見えたというのがミイナの感想であった。おいおい、おいおい。ミイナ用のパソコンも用意し、それなりの出費はあったが、どうにかなりそうで良かった。
次回、「波乱、歌謡ショーの昼」に続く、のか?
2も完成はしているけれど、こんなのいいのかな。




