第39話 『解散案』
南部穀物価格――前日比、四%下落。
暴落は緩やかになった。
だが、安心はない。
連盟会合は重苦しい空気に包まれていた。
クラフト村の餓死者。
暴動未遂。
価格乱高下。
違法認定の噂。
すべてが連盟を削っている。
「提案がある」
ブレイン村代表が口を開く。
視線が集まる。
「連盟を、一時解散すべきだ」
沈黙。
言葉は重く、しかし予想の範囲内。
「理由は」
アデルが冷静に問う。
「違法認定が現実になれば、全村が巻き添えだ」
「それを恐れて枠を壊すのか」
「村を守るためだ」
ブレイン村代表の声は震えている。
「市場も王都も敵だ」
「単独に戻れば、責任は分散する」
正論だ。
連盟があるから狙われる。
なければ、ただの小領。
「嬢」
ナディアが低く言う。
「どうする」
全員の視線がエリシアに集まる。
南区画の記憶がよぎる。
切った。
守るために。
だが今度は、枠を切るのか。
「解散すれば」
エリシアは静かに言う。
「価格はどうなりますか」
「……」
「暴騰は終わり、暴落も収まる」
ミレイアが答える。
「だが投機は勝つ」
バルドが。
「そして来年」
エリシアは続ける。
「干ばつが続けば、同じことが起きる」
沈黙。
「連盟は不完全です」
正直に言う。
「痛みも出ました」
クラフト村。
六歳の子。
「ですが」
視線を上げる。
「壊せば、何も残りません」
アデルが腕を組む。
「責任を背負う覚悟はあるか」
「あります」
「違法認定されてもか」
「はい」
ざわめき。
「南部代表として、私が引き受けます」
空気が変わる。
「……何を」
ブレイン村代表が呟く。
「王都で」
静かな声。
「公開の場で説明します」
全責任を。
「失敗も、餓死も、裏切りも」
胸が痛む。
だが逃げない。
「解散はしません」
断言。
沈黙。
レオンが立ち上がる。
「俺は残る」
短い言葉。
「半袋を見た」
ブレイン村代表が目を閉じる。
「……我々も残る」
震える声。
アデルが小さく頷く。
「ローヴェルもだ」
連盟は、ぎりぎりで繋がる。
だが代償は重い。
そのとき、王都から急報。
「正式通達!」
封蝋はギルドと王都議会。
ミレイアが読み上げる。
『南部連盟代表エリシア・ヴァルドールを王都公開審問へ召喚する』
静寂。
ついに来た。
「解散すれば、召喚は消えたかもしれない」
誰かが呟く。
「かもしれません」
エリシアは否定しない。
「だが、逃げれば連盟は死ぬ」
視線を全員に向ける。
「私は行きます」
怖い。
だが。
「責任ですから」
外では、乾いた風が吹く。
干ばつは続く。
連盟は解散しなかった。
代わりに、代表が選ばれた。
エリシアは、南部の顔となる。
王都へ向かう戦いが、始まる。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




