第38話 『囲い込み強化』
南部穀物価格――前日比、さらに六%下落。
暴落は本格化していた。
「底が見えません」
ミレイアが板を睨む。
「売りが止まらない」
投機資金が一斉に逃げている。
価格は炎だった。
今は崩落する塔だ。
「売らなかった村は正解か?」
ブレイン村代表が低く問う。
「短期では損」
エリシアは即答する。
「長期では不明」
正直すぎる答え。
そのとき、王都からの正式通達が届く。
封蝋は商人ギルド本館。
「開けます」
ミレイアが読み上げる。
『南部連盟の出荷調整行為を市場干渉の疑いとして調査対象とする』
空気が凍る。
「違法認定の布石か」
アデルが言う。
「はい」
エリシアは短く頷く。
バルドが動いた。
「連盟を潰す気だ」
ナディアが吐き捨てる。
価格を吊り上げ、
暴落させ、
最後に“違法”の烙印。
市場を混乱させた責任を連盟に押しつける。
「カイルは」
ミレイアが低く言う。
「派閥内で孤立」
圧力がかかっている。
王都。
ギルド本館。
「南部連盟は危険です」
バルドが公然と発言する。
「市場を歪めた」
カイルは静かに返す。
「歪めたのは投機です」
「証明できるか」
沈黙。
理事たちがざわつく。
「価格の乱高下は南部発」
バルドは続ける。
「連盟の統制が原因」
セリオが資料を差し出す。
グラフ。
価格曲線。
連盟成立日と暴騰の一致。
数字は雄弁だ。
「偶然だ」
カイルは言う。
「証明できるか」
再び。
追い詰められる。
ラグナ村。
「公開調査が入ります」
ミレイアが告げる。
「王都監査官派遣」
沈黙。
「狙いは」
アデルが問う。
「違法認定」
「潰す気だな」
ナディアが拳を握る。
エリシアは板を見つめる。
価格――暴落。
連盟――調査対象。
信頼――揺らぎ。
「恐れる必要はありません」
静かな声。
「隠していない」
「だが誤解はされる」
ブレイン村代表が言う。
「数字は切り取られる」
正しい。
「だから公開します」
エリシアは言う。
「連盟の全資料を」
ざわめき。
「弱みも晒す」
「はい」
アデルが目を細める。
「王都でやる気か」
「はい」
「公開討論を求めます」
全員が息を呑む。
「正気か」
ナディアが呟く。
「市場の中心で?」
「はい」
制度は隠せば歪む。
ならば、出す。
その夜。
カイルから私信が届く。
『バルドは連盟違法化を進めている。公開の場で戦え』
短い。
だが明確。
エリシアは小さく息を吐く。
「……逃げ道はない」
リリアナが言う。
「あなたは象徴になる」
「承知しています」
怖い。
だが。
「選びます」
またその言葉。
干ばつは続く。
価格は崩れた。
次に試されるのは、制度そのもの。
囲い込みは強化された。
連盟は、王都の視線に晒される。
戦場は、村から市場へ。
そして、王都へ。
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