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断罪後から始まる泣き虫悪役令嬢の泥だらけ領地再生記 ―追放先の辺境村で干ばつを止めたら、商人ギルドに目をつけられました―  作者: 夜凪ユリエ


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第24話 『切り捨ての代償』

 翌朝、ラグナ村の広場に全員が集められた。


 空は薄く白い。


 風はない。


 嵐の前の静けさのようだった。


 エリシアは板の前に立つ。


 その横には、ミレイアとリリアナ。


 ナディアとガイアも並ぶ。


「決めました」


 静かな声。


 村人たちの視線が集まる。


「倍返済は、諦めます」


 ざわ、と空気が揺れる。


「目標を修正します」


 板に新しい数字を書く。


 来年返済予定――半減。


 不足分――王都調達。


「王都へ行きます」


「本気か」


 ナディアが低く問う。


「はい」


「断罪されたのに?」


「だからこそです」


 エリシアは続ける。


「この村は、例外ではないと証明します」


 ガイアが腕を組む。


「返済不能になれば、土地を取られるぞ」


「その前に交渉します」


「相手は商人ギルドだ」


「分かっています」


 ミレイアが口を開く。


「紹介状は用意します」


 ざわめき。


 村人たちの視線が彼女に向く。


「監査官として、成功例を検証する義務があります」


 感情は見せない。


 だが、それは支援だ。


 リリアナも言う。


「教会としても、王都に状況を報告します」


 エリシアが一瞬、彼女を見る。


 対立してきた。


 だが今、並んでいる。


「ありがとうございます」


 そのとき、レオンの母が前に出た。


「嬢」


「はい」


「……あの子は、どうなるんですか」


 胸が締めつけられる。


「回復します」


 リリアナが静かに言う。


「ただ、無理はできません」


 レオンは、もう以前のように働けないかもしれない。


 未来を担うはずの若者。


 その未来に、傷が入った。


「私の責任です」


 エリシアは言う。


「いいえ」


 母は首を振る。


「あの子は、自分で選んだ」


 涙を拭いながら。


「でも、嬢も選んだ」


 その言葉は、重い。


 切り捨ての代償は、数字だけではない。


 人の未来だ。


 広場が静まる。


 エリシアは深く息を吸う。


「制度は続けます」


「まだ続けるのか」


「はい」


「なぜだ」


 若者が問う。


「止めれば、レオンの犠牲が無意味になる」


 沈黙。


「彼は未来に賭けました」


 胸が痛む。


「私は、その賭けを無駄にしません」


 ナディアが小さく笑う。


「重ぇな」


「はい」


「でも、それが嬢だ」


 ガイアがゆっくり頷く。


「……やれるだけやる」


 村人たちも、静かに頷く。


 全員ではない。


 だが、崩れてはいない。


 午後。


 エリシアは南区画に立つ。


 泥に沈んだ麦。


 あの線。


 ここから始まった。


「切り捨てた」


 小さく呟く。


「でも、守った」


 背後から足音。


 ミレイアだ。


「後悔していますか」


「しています」


 即答。


「それでも?」


「選びます」


 ミレイアは空を見上げる。


「合理的ではありません」


「分かっています」


「だが」


 言葉が止まる。


「……嫌いではありません」


 小さな変化。


 干ばつの本番は、まだ来ていない。


 だが、村はもう試練を越え始めている。


 エリシアは泥に膝をつき、土を握る。


 冷たい。


 だが、生きている。


 切り捨ての代償は重い。


 それでも。


 彼女は立ち上がる。


 王都へ向かう準備を始めるために。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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