第七章 scene7 主婦です
ある日の午後。
《ルフナ湯館》の奥まった客室。
ルカ
「サーヤ、ちょっと来て!」
案内された部屋の壁紙の隅。
カーテンの裏。畳……じゃなく石敷き+絨毯の縁。
――嫌な黒っぽい影。
サーヤ
「……あー、これは……」
主婦の顔になって少し眉をしかめる。
ルカ
「魔道除湿石、ここの分が壊れててさ。
修理頼んだんだけど時間かかるんだって。
この部屋、使えないの困るんだよね……」
女将は腕組み。
女将
「漂白魔導水は強すぎて、素材が傷む。
匂いも残るし、客を入れられない。
“人が安心して寝られる清潔”が大事なのよ」
料理長
「厨房なら火で消毒できるが、部屋じゃそうもいかん」
空気が重くなる。
──そこに
“生活戦闘民族”特有のスイッチが入るサーヤ。
サーヤ
「……うん、じゃあ 魔道具に頼らないでいこう」
女将
「魔道具なしで?」
サーヤ
「魔道具ない家、いっぱいありますからね!」
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まず「湿気」をやっつける!
サーヤ
「とにかく“湿気と空気”の通り道を作る!」
・窓開放
・扇風板(風を送る魔導ファン)総動員
→これは許して
・湿気溜まりポイントを把握
・布ものは 全部外へ
ルカ
「布団まで!?」
サーヤ
「むしろ布団こそ敵!」
外の温泉街の乾いた風と、ほんのり温かい空気が布団を揺らす。
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「お湯 + 酢」で菌を弱らせろ!作戦
・酢を薄める
・雑巾に含ませる
・力任せに擦らない
「“落とす”より、“浮かす”」
料理長
「……理屈があるな」
女将
「ただこするより“頭いい掃除”ね」
「熱」でとどめを刺す!
サーヤ
「次、湯街の強み使います」
・温泉街 → 蒸気と熱がある
・石を温泉排熱で温め
・布で包み → 部屋の湿気ポイントへ配置
サーヤ
「疑似・乾燥器!魔道具じゃない!」
ルカ
「なにそれカッコイイ!」
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④ 匂いケア「生活の香り」
サーヤ
「強い香りはダメ。
“隠す匂い”じゃなく“癒す匂い”に」
・乾燥させた柑橘皮
・少量のハーブ
・布袋に入れて部屋の隅に
女将
「……これは」
ルカ
「自然の香りだ……」
温泉宿らしい
“落ち着く やさしい 清潔“ の空気が戻る。
⸻
翌日――
泊まったお客の一言が答えだった。
宿泊客
「昨日より、気持ちよく眠れました」
女将、満足そうに小さく笑う。
女将
「サーヤ」
サーヤ
「はい」
女将
「あなた……何者?」
料理長
「この宿に“生活の知恵”という武器が加わったな」
ルカ
「サーヤ、すごい!頼りになる!」
サーヤ
(……あーこれだ!)
(こういう瞬間のために、私、ここに来たんだ)
温泉の湯気が、ちょっとだけ誇らしげに揺れた。




