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第一章 scene8 お掃除大作戦!

家の奥まで陽が差し込む午後。

サーヤは腰に布を挟み、腕を組んだ。よし!

まずは――現場把握。


部屋の隅。

積まれた壊れた椅子の脚。

欠けて使えない食器。

古くなり過ぎた布。

そして、出しっぱなしの道具。

封印されたように重たい空気。


なるほど!これは戦いがいがあるわ。


ただ散らかってるんじゃなくて、片付ける余裕すらなかった生活の跡だ。胸の奥が少しだけ痛む。

でも――感傷は、あとあと。


サーヤは手を叩いた。

「――さあ、仕分け開始!」


片手で持てる物をまとめて床に並べていく。


使えるもの

磨けば使えるもの

修理すれば使えるもの

そして――完全に“不要なもの”


割れた皿は潔く処分。もう使わない木箱は解体して薪置きへ。ボロ布は雑巾候補に。

道具は用途ごとにまとめてひとまとめ。


ひとつひとつ床から消えていくたび、部屋の空気が、すこしだけ軽くなる。


「……ふぅ」

額の汗を袖で拭う。

うん、だいぶ“戦える現場”になってきた。


次は――道具。


サーヤは桶いっぱいに水を汲み、布をひたす。

ぎゅっと絞り、手に馴染ませる。


ただの布だけど。

ただの水だけど。


“準備された”だけで、道具は武器になる。


床。

棚。

カウンター。


一面を軽く拭くだけで、驚くほど汚れが取れた。

布は一瞬で黒くなる。


……これは、まただいぶ長いこと放置されてたのね


拭く。

すすぐ。

また拭く。


単調な動作なのに、心が少しずつ落ち着く。

彼女は――掃除が嫌いではなかった。


そして問題はここから。


そう、油汚れ。

棚の端。

調理場近くの壁。

鍋の底。


ベタつく。

ぬるつく。

水だけじゃ絶対に落ちない。


ここが、敵本陣ってわけね


洗剤なんてない。

でも。

サーヤは静かに笑った。


「あるじゃない……“この世界の洗剤”」

サーヤは外に出て、かまどの側へ歩く。

大きな桶。

灰の山。


かき混ぜれば、灰は水と混ざり、とろりとした灰汁になる。弱いけど確かなアルカリ。

ちゃんと油を落とす武器、ナイスわたし。


桶を抱え、ゆっくり持ち上げて家に戻る。

サーヤは桶を床に置き、満足げに頷いた。


「はい、“洗剤”確保完了」


布を浸す。

軽くしぼる。

そして、壁へ――。


サーヤの目が、わずかに輝いた。


ここは見知らぬ世界。

頼れるものなんてない。


でも。

わたしが主婦として積み上げてきた年季はどんな世界でも錆びない。


さあ――綺麗にしよう。この家も、この生活も


静かに、掃除の続きを始めた。


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