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第六章 scene3 珈琲


小さな店の窓から、夕焼けが差し込む。

まだお客のいないカウンター。

磨いたテーブル。

静かな空気。


でも。

店の中だけは、やたら賑やかだった。



サーヤ

「カフェ!! 一度やってみたかったのよねー!!」


両手を広げてくるくる回る。


「期間限定なら、ちょっと遊びたいよね?

旅の店じゃなくて、“街の人が息抜きできる店”!

ああもう……何作ろう!!」



レオンは椅子に座り、ちょっと笑って見ていた。


レオン

「機嫌よすぎだろ、お前」


サーヤ

「だってさぁ!

女子の憧れの職業カフェだよ?」


胸の前でぎゅっと拳を握る。


「だったら!

“ここでほっとしてもらえる味”を出したい!」


 

サーヤ

「レオン!コーヒー好き?」


レオン

「あぁ」


(即答)


サーヤ

「じゃ!レオンは――」


指差す。

「“コーヒーマスター”ね!!」


レオン

「いや軽いな任命!!」


サーヤ

「だって妙に手際いいし、なんか色々凝りそうな顔してるし!」


レオン

「顔で職務決定すんな」

でも、ちょっと楽しそうだった。


カウンターに置かれたコーヒーポット。

まだ湯気の立たない静かな銀の器。


レオンはそれに視線を落とし、

「……まぁ、嫌いじゃねぇよ。

“淹れる時間”ってのは、落ち着く」


ぽつりと呟く。


サーヤはにやっと笑った。


「じゃあ決定。

あなた、“心を落ち着かせる時間担当”」



レオン

「役職名、重いな」


 

テーブルに紙を広げる。


サーヤ

「じゃあメニュー会議!」


ペンを持つ手が止まらない。

「甘いのは必須。

疲れてる人の脳に直撃するやつ!」


・しっとりケーキ

・焼きたてスコーン

・温かいプリン


サーヤ

(あ……子どもに作ったやつ、思い出す)

胸の奥がほんの少しだけきゅっとする。


でも――

(今は、この街の誰かの笑顔にしたいんだ)


自然と笑う。


 


サーヤ

「軽食もほしいよね!仕事の合間の人も来るし!」


・ホットサンド

・チーズトースト

・日替わり軽食


レオン

「“腹を満たすためじゃなくて、

ちゃんと“息をつくためのメニュー”、だな」


サーヤ

「そうそうそれ!!分かってるじゃん!」


レオン

「褒め方が雑なんだよ」



サーヤ

「ねぇ、レオン」


少しだけ、声が柔らかくなる。


「ここに来た人たちが、“まだ頑張れるな”って思えるお店にしたい。おじさんが大事にしてる空気だもん」


レオンはコーヒーポットを撫でて、静かに言う。


「じゃあ――俺は“そのための一杯”を淹れる。とりあえず、コーヒーの淹れ方を爺さんに習ってくるわ」



サーヤ

「うん!」


パン、と手を叩く。

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