表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/79

第一章 scene6 覚悟

―夜。


小さな部屋。

薄い布団。

硬い枕。


目を閉じれば、すぐに浮かぶのは“あの家”の景色。


明かりがついたリビング。

テレビの音。

鼻で笑う息子。

無言でスマホを見る娘。

それを横目に、今日も洗濯物を畳んでいた自分。 


…どうしてるかな

胸が、静かに痛む。


修。

いつも朝、ギリギリにしか起きないくせに、

意外と家族を見てる、優しい長男。


茜。

文句言いながらも手伝ってくれたり、

急に笑わせてくれる、可愛い娘。


そして――

夫。


仕事帰りの疲れた顔。

「お疲れ」って言い合うだけの夜。

 


……なんか、今さらになって、じんわり恋しくなる。


朝、当たり前みたいに「おはよ」って言えたこと。

夕飯を囲んで、全然まとまらない会話。

洗濯機の音。

電子レンジのピッという音。

全部ここには無い。


 ……寂しいな。

言葉にした瞬間、涙が滲みそうになった。


どうしてるだろう。

わたし、いなくなって、困ってないかな。

泣いてないかな。

怒ってないかな。


――あの家、ちゃんと回ってる?

布団をぎゅっと握る。

でも、次の瞬間、サーヤは小さく笑った。


いや、大丈夫よね、きっと

あの子たちは、泣き虫じゃない。

夫だって、弱くない。

わたしの家族は、そんなにやわじゃない。


だからわたしも、泣いて止まってる場合じゃない

胸の奥で、温かい火が灯る。

目をぎゅっと閉じ、心の中で手を合わせる。


――ねぇ。


修。

茜。

秋生。


あなたたちが幸せでありますように。

どうか、笑っていて。

もし、少しだけ寂しかったら……

それは、ごめん。


だけどね、わたしも、前に進むから

――新しい場所で、この“家”と“笑顔”を守るために。


静かに眠りへ沈んでいく。

夜が、優しく包む。



翌朝。


陽射し。

パンの匂い。

いつもの厨房の音。


サーヤは、ギュッと拳を握って言った。 


「父さん」

ハルトが振り向く。


少しだけ緊張して、でもはっきりと。


「……わたし、文字、習いたい」


ハルトの手が止まった。


そして驚いたように、目を見開いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ