第四章 scene13 熊男
ちょっと待っとけよ、と言って
熊男が熊を担ぐ。
サーヤ・レオン
「生きてる奴より怖ぇーーー!!!」
男、無言でサーヤを見る。
無言でレオンを見る。
空気、張り詰める。
男
「…………騒ぐな。逃げるなら、勝手にしろ」
「「はい」」黙って、熊男の後をついていく。
ズシン、と熊を地面に降ろす。
焚き火の匂い。
血の鉄臭さ。
でも、妙に落ち着いた空気。
サーヤ(息を呑む)
(――怖い、けど……)
レオン
「……あんた、助けたてくれたのか。俺ら」
男、肩を回しながらぼそりと。
「……森で迷えば死ぬ。
熊に会えば死ぬ。
腹減っても、死ぬ」
「……生きて帰る奴を、わざわざ見捨てる理由もねぇ」
山小屋に案内される。
荒いけど、清潔に保たれた小屋。
皮を干した梁。
吊るされた燻製肉。
暖かい火。
サーヤ
「……すご……」
レオン
「……ちゃんと暮らしてんだな」
男、調理の準備を始める。
手際は無骨なのに、無駄がない。
サーヤ、耐えられず口を出す。
「ちょっとだけ……手伝ってもいい?」
男、じっと見る。
「……勝手にしろ」
⸻
•山菜
•木の実
•香草
•熊肉の脂の処理
•出汁の匂い
•湯気
だんだん部屋が「人の食卓の匂い」に変わっていく。
レオン
「腹減った……」
男
「静かに食え」
でも、湯気の向こうでちょっと口角上がってる。
サーヤ
(不器用……でも、優しい人だ)
「「 美味しい……」」
夜、火の音だけが響く。
レオン
「街まで行くなら、着いてっていいか。
熊、売るの手伝うよ」
男
「……勝手に付いてくるのか?」
サーヤ笑う
「私たち迷子だし」
男、焚き火を見る。
「…あぁ、そうだな…好きにしろ」
翌朝、
サーヤ
「美味しかった……ありがとう」
男
「食えたなら、それでいい」
レオン
「じゃ、街まで護衛してやるよ」
男
「護衛は、俺の役目だ」
ズシン、と熊の皮と肉を担ぐ。
レオン「…はい」
(冗談が通じねぇ)




