表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/181

第四章 scene12 熊

しばらく歩いて。


風の音だけ。砂利を踏む足音だけ。


人の話し声も、馬車の音も、灯りもない。

ただただ“闇”と“静けさ”が広がる道。


 

サーヤ

「……ねぇ、レオン」


レオン

「ああ?」


サーヤ

「誰にも会わないし、暗いし、街もないんだけど」


声が少し情けない。


レオンは苦笑した。

「事実確認やめろ、不安になるだろ」



でも――

言われて改めて気づく。


周囲、真っ暗。道、細い。

灯り、ゼロ。


遠くに光るはずの街灯もない。

馬車の車輪の跡はあるけど、それすら薄い。


サーヤ

「ここ……本当に“次の街に続く道”?」


レオン

「大丈夫大丈夫。俺こう見えて旅慣れて――」


彼は言いかけて止まった。


サーヤ

「なに、今の間は」


レオン

「…………」


サーヤ

「ねぇ」


レオン

「…………だいぶ前から道標、見てねぇな」


 


風が吹いた。

草が揺れた。

夜が、余計に深くなった気がした。



サーヤ

「迷ってるじゃない!!!」


レオン

「違う!!“迷ってるかもしれない”だけだ!!!」


サーヤ

「それを世間では“迷ってる”って言うの!!!」



ちょっと泣きそうな声で続ける。


「街ない!人いない!明かりゼロ!

ねぇほんとどうするのこれ!?このままいくと異世界あるあるの “魔物出るやつ” だよ!?」



レオン

「落ち着け落ち着け!魔物なんかそう簡単に――」


ガサ……ッ


二人

「「…………」」



風。

木の葉。

小動物の音かもしれない。


でも――

今の二人にはそれが“死刑宣告の足音”に聞こえる。



サーヤはレオンの腕を掴んだ。


ギュッ!!!


レオン

「いだだだだ!!骨折る気か!!」


サーヤ

「怖いものは怖いの!!!

旅慣れてるとか言ってたくせに!!」


レオン

「言ったよな!?“旅慣れてる”って!

“方向音痴じゃない”とは言ってねぇ!!」


サーヤ

「最悪だよこの人!!!!」


レオン

「だから落ち着けって言って――」



ガサ……ッ



ふたり

「「…………?」」



サーヤの顔、引きつる。

レオンの肩、ピクリと跳ねる。


静寂。


次の瞬間――


ガサガサガサガサガサァッ!!


サーヤ

「ぎゃあああああああああああああ!!!??」


レオン

「来たああああああああああああああ!!!??」


荷車の陰に飛び込むサーヤ。

反射的にサーヤの前に立つレオン。(※男気はある)



茂みが大きく揺れて――


暗闇の中から、巨大な影 が現れた。



サーヤ

「く……」(喉が動かない)

(これ……絶対“魔物クマ”みたいなやつじゃん……!!!)


レオン

「来るなよ……マジで来るなよ……」


拳を握る。


影が一歩、出た。

月明かりにその姿が照らされる。


もふっ。



サーヤ

「………………え?」


レオン

「………………熊?」


いや。


ちがう。


大きな毛皮を羽織った人だった。


丸太みたいな腕。

信じられないくらいガタイのいい体格。

肩に担いでるのは――熊の皮。


そして顔には、豪快な傷と厳つい眉……



フードを外し、その人物は言った。


 

「――人か」

低くて渋い声。


サーヤ&レオン

「「ひっ」」


男は少し眉をひそめる。


「そんな声を出すな。熊は潰した」


足元を見ると、ほんとにでかい熊の死骸が転がってた。



サーヤ

「…………」


レオン

「…………」



二人同時に叫んだ。



「「熊おおおおおおおおおおおお!!!!!!」」



男は、ため息をついた。


「安心しろ。もう動かん」

(※完全に倒されていた)



レオン

(こいつ……ただの旅人じゃねぇ……)


サーヤ

(なにこの漫画に出てくる山の王者みたいな人)



男は静かに二人を見つめる。


「お前ら、こんな時間に何してる」


レオン

「……迷子です」


サーヤ

「迷子です……」



男は額を押さえた。

「……アホか」


即答。


そして次の瞬間。

大きな背中が、ふたりに向けられた。 


「――ついてこい」



レオン

「え?」


サーヤ

「へ?」


「夜の森は危ねぇ。この先に俺の小屋がある。

寝床くらい貸してやる」


サーヤ

(え……優しい……??)


レオン

(え……見た目めっちゃ怖いのに……??)



男は振り返らずに言う。


「置いてくなら置いてくでもいい。

ただ、次は熊、助けない」



サーヤ

「行きます!!!」


レオン

「即決!!!」



男、

ほんの一瞬だけ、口元が笑った気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ