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第四章 scene11 また2人

――屋敷の灯りが遠くなる。

石畳の街道に、二人分の足音だけが落ちていく。


夜の風は少し冷たいけど、胸の奥はまだ“今日の余韻”で温かかった。



サーヤが息をつく。


「……終わっちゃったね。

リリアのガーデンパーティー」


レオンは肩を回しながら、少しだけ笑う。

「……ぶっちゃけ、ちょっと寂しいな」


サーヤも笑う。

「うん。わかる」


ほんの少し前まで、明日のメニューを考えて、

笑って、

走って、

準備して――


“今この瞬間”のために全員で動いてたのに。


今は静か。

風の音だけ。


“イベント”って、終わると急に世界が広くなる。



しばらく歩いて――

レオンが、ぽつりと口を開いた。


「……で、サーヤ」


横目でこちらを見る。


「どうする? これから」

真正面の質問。


足が、一瞬だけ止まる。


(そうだ……次に進まなきゃいけない)


パン屋。

祭り。

居酒屋ランチ。

ガーデンパーティー。


ずっと“やるべきこと”があった。


でも今――

久しぶりに“予定のない明日”がある。



サーヤは空を見上げる。


「……うん。たぶん私は、まだ“旅の途中”だと思う」


レオン

「だな」


サーヤは続ける。


「どこかで落ち着く日が来るのかもしれないし、

もう二度と腰を下ろさないのかもしれない」


「でも――」


少し笑う。


「誰かが『食べたい』『助けてほしい』『笑いたい』って言ってくれる限り、そこに行きたいんだと思う」



レオンは、しばらく黙っていた。


それから。

ふっと笑った。


「……相棒らしいわ」



レオンは頭をかく。


「じゃあ俺も言うか」


「俺は――」


少しだけ照れた顔で前を見る。


「“逃げない旅がしたい”」


サーヤ

「逃げない旅?」


レオン

「ああ」


「これまでの俺はさ。

“その場しのぎ”で楽しいこと探して、嫌になったらまた別の街。それでいいって顔して笑ってたけど――」


「今回みたいに、“責任背負って最後までやりきる”って……悪くねぇなって思った」



屋敷の灯りの残光が、後ろで優しく揺れる。



レオンは続ける。


「だからさ、俺は“ちゃんと関わる旅”がしたい」

「お前が“笑顔を作る旅”なら――」

「俺は“横で一緒に笑ってる旅”がいい」


サーヤ、吹き出す。

「なにそれ、雑な覚悟」


レオンも笑う。

「言葉選ぶの苦手なんだよ!!」


でも、二人とも笑ったあと――

同じ方向を見る。


サーヤ

「じゃあ――」


手を出す。

「行こうか。次の街へ」


レオンは、その手を見る。

そして少しだけため息をついて。


「……しゃーねぇな」


軽く、その手を叩いた。

「相棒。行くぞ」


街道の先は、まだ暗い。

でも、ちゃんと進めば――


また誰かの食卓に灯りがつく。

また誰かが“おかえり”と言う。

また誰かの人生の一日に、そっと混ざれる。


レオンが言う。


「次、どこ行く?」

サーヤは前を向いて答えた。


「――“まだ知らない誰かと会える場所”」


二人の影が並んで伸びる。

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