第一章 scene5 サーヤの計画
――静かな午後。
リナが帰って、家はしんと静まり返っていた。
窓から差し込む光が、埃を照らす。
散らかった小物。
積まれた布。
手つかずの食器。
サーヤ――いや、みのりは、腰に手を当てて大きく息を吸った。
さてと、まずやることは?
床に座り込み、正座。
目を閉じて、頭の中にホワイトボードを描く。
仕事で鍛えられた「脳内会議」、発動。
【現状の問題点】
・店が傾きかけ
・父ハルト限界
・家もボロ
・子どものサーヤが無理してる
・私、読み書き壊滅
はい、認めました。
でも、できるわ!
だって私は、何年も家を回してきた母親で。
人事も現場も背負ってきた会社員で。
そして――
サーヤは、“この店の娘”。
なら、やるべきことは――
胸の奥で、少しワクワクが生まれた。
わたしがここに来た意味がきっとある。
「……よし、やろう」
小さく宣言する。
脳内ホワイトボードに、順番を書き込んでいく。
【サーヤの改革プラン】
1.まず文字を習う
→ 教会横の学舎
→ リナに案内頼む
→ メモも帳簿も戦力! まずはここ!
2. 家の掃除と家事の整備
→ 家回り整理
→ 生活ルーティンを軽く
→ まず父と自分の生活を楽にする
3.店の手伝い
→ 動線整理
→ 片付け
→「サーヤにしかできないこと」を探す
4. そして、サーヤはぎゅっと拳を握った。
「店、繁盛させる!」
言ってみたら、胸がぐっと熱くなった。
「……うん、最大のミッションね。いいじゃん」
現代日本で何度も繰り返した言葉。
“どうせ無理”なんて、言わなかった自分。
その自分が、また顔を出す。




