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第四章 scene4 クレープ

屋敷の庭は静かだった。


女の子二人の声が、少し離れた客間から漏れてくる。

笑ったり、真剣に黙ったり、何かを書きつける音がしたり。


レオンは庭のベンチに寝転がり、空を見上げていた。


「……任せろ、って言ったのは俺なんだけどな」

言ったそばから悩む男である。


(“ガーデンパーティーを楽しくする役目”)

胸を叩いて引き受けたくせに――

「……何やりゃいいんだ……」


まず浮かぶのは単純なもの。


「踊る?歌う?」

(……いや。俺がやるのは違う)


「生演奏?」

(悪くねぇ。でも、どこでもあるよな)


「大道芸?」

(騒がしいだけになる可能性……大。却下)


「虫放ってキャーって言わせる……?」

(俺、バカか)


頭を抱える。


(貴族のパーティーって、

“すげぇショー”が必要なんじゃねぇのか?)


でも――

庭の向こうで、リリアの笑い声が風に乗った。

それだけで、少し冷静になる。


 いや、違うな、

 “見せるため”のパーティーじゃない

 “あの子が笑うため”のパーティーだ


貴族とか格式とか関係なくていい。

ただ――“楽しい”があればいい。


(だったら――)

今度こそ、ちゃんと考える。


一緒に踊る?

→ 綺麗なドレスだ。台無し。却下。


一緒にゲーム?

→ 走れない子もいる。ケガしたら最悪。却下。


一緒に料理?

→ 火は危ない。皿も危ない。ドレス燃える未来が見える。却下。



「……うーーーーーん」


芝生に寝転び、また空。


(“一緒にできて”

“座ってても楽しめて”

“綺麗で”

“思い出に残る”)


(そんな都合のいいモン――)



――浮かんだ。


「……“作る”じゃなくて、“飾る”なら?」


思わず体を起こした。


(完成品を渡すんじゃなくて――

“自分の好きな形に完成させる体験”があったら?)


(それなら、動けなくてもできる。

ドレスも汚れねぇ。

しかも――“自分だけのもの”になる)


目に、少し光が宿る。

「たとえば……」


薄い卵の生地。

そこに甘い匂いのソース、果物、可愛い飾り。


“選んで”

“組み合わせて”

“世界で一つのスイーツ”ができあがる。


「……それ、いいじゃねぇか」


胸がじんわりと熱くなる。


(俺、自分が“見せる側”ばっか考えてたけど)


(必要なのは――

“主役に光を当てる仕掛け”だ)



レオンは立ち上がる。


「……よし。これサーヤに言ってみよ」


そう呟いて歩き出し、扉をノックする。


「サーヤ、ちょい良いか――」


客間へ顔を出した瞬間。

机いっぱいに広がる案、絵、言葉。

サーヤとリリアが、未来を楽しそうに描いている。


(……これ、守りてぇな)


胸の奥で、静かにそんな感情が灯る。


レオンは咳払いした。


「お前らが“心のご馳走”考えてるならさ、

俺は――“遊べるご馳走”どうかなと思って」


サーヤ

「――なにそれ?」


レオンは笑う。


「“飾れるスイーツ”。

卵の薄い生地に、

その場で選んで飾って――

“私だけの一皿”にするやつ」


リリアの瞳がぱっと輝く。

「……!」


サーヤの口が、ゆっくり笑みに変わる。

「クレープね」


「あぁ、クレープだ。……悪くねぇだろ?

選ぶだけだけど、自分で完成させた“オリジナル”。

主役が、“仕上げる側”になるんだ」


リリアは胸に手を当てる。

「……楽しそう……!」


サーヤは微笑む。

「最高よ、レオン」


その言葉に、レオンは少し照れながら胸を張った。


「よっしゃ」

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