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第三章 scene10 逃げる?

体格のいい男三人。

肩で風切って歩くだけで、“この街の空気を知ってる連中”だと分かる。


「いい商売してんじゃねぇか」

レオン、自然に前へ出る。守るような位置取り。


「……何の用だ?今日はもう売り切れだ。買いたいならまたにしてくれ

「おいおい、待てって。決まってんだろ」


男は指で屋台をコツコツ叩いた。

「俺たちと“契約”しねぇか?」


サーヤの背筋が、ぞわっとする。

(あ、これやばいやつだ)


男は優しく笑っている。

でも、その目はまったく笑ってない。


「うちはなぁ、この街で『守り』をやってる。

安心して商売したいなら、後ろ盾は必要だろ?」


「売り場、守ってやる」

「商会にも口利いてやる」

「材料も優先して回してやる」


一拍。


「――その代わり、売上の三割、こっちに回せばいい」


空気が、凍った。三割?

それで済むはずない。これは“縛るための鎖”だ。


最初は三割。増えるに決まってる。

“守る”じゃない、“囲う”だ。


サーヤ、笑う。顔だけは。

「……お気遣いありがとうございます」

「でも――いりません」


男の笑顔が、ほんの少しだけ崩れた。


「お嬢ちゃん、俺らの提案を断るのか?」


レオンが静かに言う。

「俺たちは自由に旅してる。鎖首輪つけてまで、飯は売らねぇよ」


男たちの目が、冷たく細くなる。

一歩、距離が詰まる。


――やばい。

これ以上話すのは、危険だ。


サーヤはレオンの袖をつまむ。


「――レオン。行こっか」




数分後。


二人は 商会のドアをぶち開けていた。

「助けてぇぇぇ!!!!!」


職員たちが一斉に振り向く。

商会長が頭を抱えた。


「あーー……やっぱ来たのか、あいつら」


「やっぱ!??」


商会長はため息。


「商売がうまく回ると寄ってくる連中だ。

“守ってやる”って顔して、実質は搾る。

一度契約したら解約はほぼ不可能」


サーヤ、ぞっとする。

商会長はレオンの肩を叩いた。

「正解だ。逃げ込めてよかった。

うちは王都公認の商会。ここにいる間は安全だ」


(……助かった)


力が抜ける。


「ただな――」

「お前たち、もう目をつけられちまったら、ここで長く居座るのは無理だな」


レオン

「……やっぱそうなるか」


サーヤは口を引き結ぶ。


商会長は地図を広げる。


「次に行くなら、この街だ」

「治安良し」

「旅人歓迎」

「商売のルールは厳しいが、正直者が勝てる町」


そして笑う。

「“実力で勝負できる場所”がいいんだろ?」


胸が、ぐっと熱くなる。

サーヤはうなずいた。


「お願いします。そこへ行きたい」


レオンも笑う。

「また、腹減った奴らを幸せにしに行こうぜ」


サーヤは小さく、拳を握る。

うん、逃げるようで悔しいけど、次に向かおう!



夜風が髪を揺らし、世界はまた、新しい扉を開いてくれる予感がした。

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