第三章 scene1 祭り
2人はパン屋を発った。
そして街へ入る。
レオンの声が弾む。
「よし!いくぞサーヤ!今日から俺たちは――」
「――伝説の移動カルツォーネ屋になる!!」
ズドン!!!!(…と、本人たちは思っている)
屋台を開き。
旗を立て。
香りは最高。
味は完璧。
……なのに。
通りすぎる客。
見向きもしない市民。
チラッとこちらを見て――避けて通る。
レオン
「なんで!? なんでだ!!!
ほら見ろ! 香り!湯気!俺の最高の笑顔!!!完璧だろ!!!」
サーヤ、冷静。
「顔は関係ないから黙ってて」
数時間経過。
誰も来ない。 売れない。
レオンの背中がどんどん丸くなる。
「……俺、やっぱ向いてねぇのかな」
サーヤ、腕を組む。(原因分析モード ON)
・旅のよそ者
・知らない料理
・謎の旗
・笑いながら肉汁こぼしてるレオン(怖い)
「……怪しいのよね、完全に」
その時。
ちょん、と袖が引っ張られた。
「ねぇ……それ、美味しいの?」
振り向くと、子どもがいた。
サーヤ、笑う。母性+社会人の包容力の微笑み。
「お腹すいてる?」
こくり。
少し考え。「――試食、いる?」
親方仕込みのちょっと小さいカルツォーネを渡す。
一口。
子ども、目が――ぱあああああって光る。
「すごい!!ふわふわなのに、じゅわってする!!
なにこれ!!!おいしい!!!」
その声が、通りの人の足を止めた。
でもまだ、みんな警戒している。
子ども、ぐるっと振り返り、口いっぱいにパンを頬張りながら――
叫んだ。
「だいじょうぶな人たちだよーーー!!!
危ない人の味じゃないーーー!!!」
サーヤ
「評価雑!!!!」
レオン
「助かるけどなんか複雑!!!」
笑いが起きる。
少し空気が柔らぐ。
子どもは、サーヤの服をぎゅっと掴む。
「ねぇねぇ!あのね、今日はこの街でそんな場所に立ってたらダメなんだよ!」
サーヤ
「どういうこと?」
「今日はお祭りの日だよ!!!」
サーヤとレオン「「は?」」
「みんな、【中央広場】に集まってるんだよ!
屋台ぜんぶそっち!みーんな、そっち!」
――完全なる戦場把握ミス。
サーヤ
(あぁ……やらかした…)
レオンの顔に希望が戻る。
「中央広場、場所あるか?」
子ども、にやぁぁぁ。
「あるよ。初めての人ができる場所ってあるの!」
サーヤ
「失敗前提の制度あるの!?なんて優しい世界!!」
レオン
「行こう!頼む、案内してくれ!!」
子ども、胸を張る。
「任せて!ぼく、毎年食べ歩いてるんだ!!」
たぶん最強の客だ。
荷車が動く。
サーヤが手綱。
レオンが旗を掴む。
子どもの背中を追いながら――
サーヤ、少しだけ笑う。
なんて素敵なプロローグ!
祭りの音が近づく。
太鼓。
笑い声。
火。
匂い。
そこには――本物の戦いが待っていた




