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第二章 scene8 パン屋とコント

パン屋の裏に案内されたサーヤは、

パン工房の中央にぽすん、と座らされた。


ぐるりと囲む職人たち。

そして中央に腕組みした――店主。


大柄で怖そうだが、腕は確かそうだ。

ただ今は怒っている。


「で」

低い声。


「正直に言え。どこから盗んだ?」

 


「だから盗んでないって言ってるでしょーーー!!」

サーヤ、机バンッ!


 「じゃあどこの店のものだ?」

「店じゃない!」

「誰からもらった?」

「もらってない!」

「どっから持ってきた!?」

「作ったの!!」

「どこのパン屋の弟子だ?」

「弟子じゃない!」

「じゃあどこの国の修行帰りだ!?」

「修行してない!!」


 「じゃあなんだ!!!」


 


「元アラフォー日本のワーママです!!!!」


 

沈黙。


工房内の空気が止まった。


パン職人たち(コソコソ)

「いま何て言った?」

「わからんが…“呪文”か?」

「魔法かもしれねぇ…!」


店主、額を押さえる。


「落ち着け。いいか、子ども」

「はいはい」


ぐいっと身を乗り出し、


「どこから来た?」


 


サーヤは天井を見上げる。


「……泣ける話って言ったら信じる?」

「話せ」


 


サーヤ、腕を組んで勢いよく語り出す。


 


「父と2人で潰れそうな食堂を立て直して!!」

「……ほう」

「超繁盛させて!!」

「なかなかやるな」

「母親が泣きながら帰ってきて!!」

「物語だな」

「父が“本当のスプーン亭が戻った”とか言い出して!!」

「なるほど」

「客が“夫婦が中心だよな~”って言って!!」

「ありがちだ」

「わたしの存在、空気ェッッ!!!」


 


どーーーん!

床を叩くサーヤ。


職人たち、完全に泣き笑い。


「……悲しい話だった……!!」

「“娘あるある”すぎて胸に刺さる!」

「そんなこと、ほんとにあるんだな……!」



店主はため息をついた後。


「……で」

真顔に戻る。


「盗んだのか?」




「なんでええええええ!!!」

机バン!!!!



サーヤ、荷物をごそごそ。

そして――


どん。

机の上に置かれる、小さな瓶。


中でぷつぷつ泡立つ――

生きた酵母。



工房がざわつく。


「な、なんだそれは」

「見たことない種だぞ」

「パン種ってもっとこう……泥みたいな……」


店主が目を細める。

「……どこから手に入れた?」

 


サーヤ、にっこり。

「作ったの。」



店主、机ドン!

「やっぱ盗んだんだろ!!!」 


「だから違うって言ってんでしょおぉぉぉ!!!!!」



サーヤ、立ち上がる。

「もういい!話早くしたい!」


ぐいっと袖まくる。

「見るなら見て!わたしがパン、作るから!!」


工房に緊張が走る。


職人たちは息をのむ。店主も腕を組みなおす。


「……言ったな」


重い声。


サーヤ、真っ直ぐ見返す。


「舐めた真似をしたら、警察に突き出すぞ」

店主の口元が、ほんの少しだけ笑った。


「いい目をする」


背を向け、指を鳴らす。


「――材料は貸してやろう!厨房に来い」


鉄の鍋。

粉の山。

計量道具。

そして、工房に満ちる熱。


 街の小さなパン屋で――


少女とパン職人の、本気の勝負が始まった。

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