第十章 プロローグ
夕方、カフェの扉が開いた。
「……あ」
リオが、声を詰まらせる。
母だった。
今日は、妙に背筋が伸びている。
目も、前を向いている。
サーヤ
「いらっしゃい」
母は、席に着くなり言った。
「リオ!カイ!私、決めたの」
リオ
「……え?」
カイ
「……え?」
サーヤ
「……嫌な予感」
母は、ぐっと拳を握った。
「働く!」
一同
「……?」
母
「ちゃんと自分の足で」
「髪結いになる」
リオ
「……かみゆい?」
母
「そう、母さん、綺麗にするの好きじゃない?」
「だからさ、町の奥に、年寄りの職人がいるでしょ」
「あの人に、弟子入りしてくる」
サーヤ
「…だいぶ…急だね」
母
「急じゃないわ。ずっと、考えてた」
嘘か本当かは、誰にもわからない。
でも。
母
「だって子どもたちが働いて、笑ってるの見て」
少し、声が揺れる。
「私だけ立ち止まってる気がして、
なんか寂しいじゃない」
リオは、何も言えなかった。
母は、ふっと笑う。
「大丈夫。失敗しても、転んでも」
「今度は自分で、立つから!」
サーヤ
「……うん」
レオン
「……ぶっとんでるけど、覚悟はある顔だな」
母
「でしょ?」
母は立ち上がる。
「じゃ、行ってくる」
「日が落ちる前に挨拶してくる」
「ちゃんと帰るから。
ご飯も一緒に食べる、だから見てて」
リオ
「……今から?」
母
「思い立ったら、今!」
扉が閉まる。
鈴の音。
しばらく沈黙。
カイ
「……母さん、走るの、早かったんだ」
リオ
「……置いていかれた感じ?てか、むしろこども?」
サーヤ
「でもさ」
にこっと笑う。
「追いかけなくていい背中、だったでしょ」
リオは、少し考えてから頷いた。
「……うん。今までよりずっといい。
続くかわからないけど」




