第九章 scene17 屋台
レオンが、腕を組んだ。
レオン
「で、店を借りる手配は?」
クルス
「……まだ」
テッド
「探してはいる!」
レオン
「金は?」
クルス
「あんまりない」
テッド
「ほぼない!」
レオン
「……」
サーヤ
「事業計画は?」
クルス
「……なにそれ」
テッド
「食えるか?」
サーヤ
「食えない」
⸻
レオンは、ゆっくり息を吐いた。
「……いいか」
「順番が逆だ」
テッド
「え?」
レオン
「売れてるのは事実だ」
「場所もいい。人もいる。需要もある」
クルス
「だろ?」
レオン
「確かにすごい。正直、俺たちが昔やってた移動より、完成度は高い」
テッド
「お?」
レオン
「だがな」
声が、少しだけ低くなる。
「“店を回せるか”は別だ」
リオとカイは、自然と背筋を伸ばした。
レオン
「勢いだけで店を持てば」
「潰れる」
クルス
「……」
⸻
サーヤが、カウンターに手をついて言った。
「ねぇ、屋台っていうのは、どうかな?」
クルス
「……屋台?」
サーヤ
「ゴールじゃなくて」
「準備にするの」
テッド
「準備?」
サーヤ
「そう」
「いきなり店を持つのはね」
「いきなり“大人になる”みたいなものだから」
レオンが、静かに頷く。
レオン
「屋台は失敗ができる場所だ」
テッド
「……おぉ」
レオン
「ここで回らなきゃ、店は回らない」
「回るなら、次へ行ける」
クルス
「……なるほどな」
サーヤ
「人も、お金も、やり方も全部、試す場所」
視線が、自然とリオとカイに向く。
「働くってことも」
「生活するってことも」
「ちゃんと、練習してからでいい」
リオは、少し驚いたように瞬きをした。
カイは、黙って、でもしっかり頷いた。
⸻
レオン
「……まずは許可だな」
クルス
「だよな」
サーヤ
「勝手に出したら、怒られるやつ」
レオン
「怒られるだけならいい」
「最悪、全部取り上げられる」
テッド
「それは困る!」
⸻
机を全員で囲む。
サーヤ
「じゃあやること、整理しよ」
レオンが、淡々と書き出していく。
・出店許可(港の管理人)
・場所の確保
・水と火の扱い
・材料の仕入れ
・仕込み場所
クルス
「……意外と多いな」
サーヤ
「だから屋台は、練習なの」
⸻
そのとき。
カイが、遠慮がちに手を挙げた。
「……あの」
全員が、顔を上げる。
カイ
「港って朝と昼で、人の流れが違いますよね」
レオン
「……続けろ」
カイ
「朝は、船の人」
「昼は、仕事終わりと観光の人」
言葉を探しながら、でも、ちゃんと繋げていく。
「だから」
「朝は、すぐ食べられるもの」
「昼は、座って食べたい人向けがいいかなって」
テッド
「……お前よく見てるな」
クルス
「確かに」
レオン
「……使える案だな」
サーヤは、ぱっと笑う。
「いい!」
「じゃあ、朝用と昼用、分けよう」
⸻
テッド、サーヤ、リオは、メニュー側へ。
テッド
「やっぱり、足りねぇよな」
サーヤ
「うん」
リオ
「あ!ポテト!」
「仕込みできるし」
「揚げ物は……正義です!」
サーヤ
「採用」
次。
サーヤ
「ドリンクは必須ね」
リオ
「コーラは?」
サーヤ
「もちろん」
「白いソーダも」
リオ
「……あと」
「寒い日は、温かいの」
サーヤ
「……それも、採用」
⸻
最後は、パン。
テッド
「今のでもうまいけど」
「もう一段、上げたい」
リオ
「少しだけ、甘み足すとか……」
サーヤ
「いい」
レオンが、向こうから顔を出す。
「……焼き色は?」
サーヤ
「軽くトースト」
レオン
「表面だけ」
サーヤ
「中は、ふわっと」
レオン
「……決まりだな」
テッドは、拳を握った。
「わくわくしかしねぇ!」




