表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/181

第九章 scene16 作戦会議

早めに閉めたカフェ。


看板を裏返し、椅子を上げ終わる。

昼間のざわめきが嘘みたいに、店内は静かだった。


床を拭きながら、サーヤはふと手を止める。

カウンターの向こうで、リオとカイが小声で何か話している。


リオは、いつもより少しだけ声が低くて、

カイは、さっきから何度も入口の方を気にしている。

(……あの子たち)

(今日は、家に帰るの、ちょっと不安かもしれないな)


サーヤは、それ以上考えないことにした。

考えすぎると、口に出してしまいそうだから。


「……なんか、楽しいことでもしよっかな」

独り言みたいに呟いた、そのとき。



扉の鈴が、

いつもより乱暴に鳴った。


「助けてくれぇぇぇ!」


聞き覚えのありすぎる声。


サーヤ

「……え?」


入ってきたのは、汗だくのクルスとテッドだった。


テッド

「もう無理!腕もげる!」


クルス

「焼いても焼いても終わんねぇ!」


リオとカイが、同時に目を丸くする。


サーヤは一瞬きょとんとしてから、息を吐いた。

そして、いつもの調子で言う。


「……久しぶり」

「で、どうしたの?」


クルスが肩で息をしながら答える。


「ハンバーガーが」

「売れて売れて」

「大変なんだ」


テッド

「旅に出るつもりだったのにさ」

「街を出る前に、全部売り切れ!」


サーヤ

「……それ、完全に成功してるやつじゃん」


クルス

「だから助けて」


サーヤ

「雑!」



カウンターの奥から、レオンが顔を上げる。


レオン

「……また面倒ごとか?」


リオとカイは、状況がわからず、そっと顔を見合わせる。


リオ

「……誰、ですか?」


テッドが思い出したように紙袋を持ち上げた。


「そうだ」

「とりあえず、これ」


どん、と置かれた包みから、

焼きたての匂いが広がる。



結果。


リオとカイは、テーブルに並んで、この世界で

初めてのハンバーガーを手にしていた。


テッド

「な?うまいだろ?」


リオは慎重に一口。

目が、少しだけ見開く。


「……おいしい」

「なんか……懐かしい」


カイは、黙々と食べている。


クルス

「だろ?」


テッドが、ふと二人を見て首を傾げた。


「……で?」

「お前ら、誰?」


リオ

「……リオです」

「ここで、働いてます」


カイ

「……カイです、弟です」


クルス

「……働いてる?」


テッド

「ここで?」


サーヤ

「そう」


テッドが、にやっと笑う。


「いいじゃん」

「若手」


クルス

「あのさ、俺たち港に店出そうと思ってて──」


サーヤ

「ちょっとちょっとちょっと!」


テッド

「なに?」


サーヤ

「引き抜き禁止!」


クルス

「まだ何も言ってねぇ!」



その様子を見ながら、

サーヤはちらりとリオとカイを見る。


二人とも、ちゃんと笑っている。

でも、どこか「今夜の話」を避けている顔だ。


(……やっぱり)

サーヤは、決めた。


レオンがコーヒーを一口飲んで言う。


「……で、何が問題だ」


クルスとテッド

「全部だな」


サーヤは、少しだけ口角を上げる。

「……でしょうね」


レオン

「……嫌な予感しかしない」



サーヤは、リオとカイに向き直る。


「ねぇ」

「今日はさ」


一拍。


「もうちょっと、ここにいようか。

作戦会議があるの」


理由は、言わない。

帰らなくていいとも、泊まれとも言わない。


リオは、少し迷ってから頷いた。


「……はい」

カイも、小さく頷く。


レオンが、ぼそっと言う。


「……今日は長くなるな」


サーヤ

「うん」


それでいい。


カフェの灯りは、

その夜、いつもより少しだけ遅くまで点いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ