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第九章 scene6 呼び寄せる

夕方。

カフェの閉店準備が終わりかけた頃。

レオンは、カウンターの端で腕を組み、天井を見つめていた。

「……うーん」


サーヤ

「なにしてるの?」


レオン

「いや……なんかさ」

「爆発的ヒット、ないかなと思って」


サーヤ

「急に商売人?」


レオン

「ハンバーガー、当たっただろ」

「次も欲しいじゃん」


サーヤは、布巾をたたみながら言う。

「でもさ、あんまり前世っぽいの出すと、

また怪しまれない?」


レオン

「……それは、まぁ」

「でも、もう増えないだろ?」

「転生者」


サーヤ

「さぁね」


レオン

「…元々この世界にいた転生者は、いるな」


サーヤは、少し考えてから言った。

「あぁ……そっか」


レオン

「……でもさ」


声が、少しだけ軽くなる。

「会ってみたい気もするんだよな」

「もし、いたら」


サーヤ

「誰に?」


レオン

「……同じ匂いのやつに」


サーヤは、ふっと笑った。

「なにそれ」


レオンは、急に顔を上げる。

「なぁ」


サーヤ

「なに」


レオン

「転生者を呼ぶメニューって、どう思う?」


サーヤ

「……は?」


レオン

「こう、理由はわからないけど」

「なぜか懐かしくて」

「なぜか頼んじゃうやつ」


サーヤ

「……」


一拍置いて。


サーヤ

「…!じゃあ、メロンクリームソーダは?」


レオン

「……」


目が合う。


レオン

「それ!」


サーヤ

「即決!?」


レオン

「緑で」

「泡があって」

「上に白いやつ乗ってて」


指で空中に描く。


「意味わかんないのに」

「テンション上がるやつ」


サーヤ

「説明が雑」(あ、テッドっぽい)


レオン

「でもさ、理由なく惹かれるって」

「そういうことだろ」


サーヤは、カウンター越しに頷いた。

「……まぁね」


レオン

「よし」


ノートを取り出す。

「“メロンソーダ”」


サーヤ

「名前は普通なんだ」


レオン

「中身で勝負」


サーヤ

「じゃあ聞くけど」


少し身を乗り出す。


「どうやって緑にするの?」

「どうやって炭酸?」

「アイスは?」


レオン

「……」


固まる。


レオン

「……考える」


二人、同時にため息をついて、笑った。


カフェの外では、夜の風が静かに通り過ぎていく。


まだ、何も起きない。

でも――


どこかで、緑の飲み物を見た“誰か”が、

理由もなく、この店を思い出すかもしれなかった。


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