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第七章 scene12 持ち帰る幸せ

石畳の温泉街。

湯気が細い糸みたいに漂っている。


休憩時間。

エプロンを外したふたりに与えられた、大事なミッション――


ルカ

「じゃあ――“街を歩くところから”だね!」


サーヤ

「うん。“お土産”って、机で考えるより、

 “ここで生活してる匂い”から考えたほうがいい気がする」


ルカ

「それっぽいこと言った!」


笑いながら、石畳を並んで歩く。


―――――――――


湯の噴気が出る石の穴。

子どもが、手をあっためている。


サーヤ

「……ここ、絶対“写真撮りたい場所”だね」


ルカ

「観光客、ぜったい立ち止まるもんね。

 “温泉の風景を持ち帰るもの”って、欲しくならない?」


サーヤ

「“風景の味”……か」


胸の中に、ひとつメモが刺さる。


――――――――――――


市場。


瓶詰めハーブ。

湯の熱で乾かした果皮。

蒸気を使って加工された何か。


ルカ

「見てこれ。“湯風乾燥”って書いてある」


サーヤ(心の声)

(湯の街ならでは……

 “湯気が関わった”ってだけで、もう特別だ)


サーヤ

「“湯が触れたお菓子”、やっぱり欲しいね」


ルカ

「だよね!」


―――――――――――――


通りのベンチ。


湯上がりの人たちが、ただ空を見上げている。

言葉はないのに、幸せがある。


サーヤ

「ねぇ……気づいた?」


ルカ

「なに?」


サーヤ

「湯上がりってだけで、みんな……

 “満足してる顔”してない?」


ルカ

「あーーわかる!」

「言葉いらないけど、来てよかったなぁって顔!」


サーヤ

「じゃあさ――」


サーヤ

「“その気持ちをもう一回、家でひと口思い出せるお菓子”」


ルカ

「……それ、絶対売れる」


サーヤ

「そうなると、やっぱり“蒸し菓子”系かなぁ」


ルカ

「でも、蒸しって“優等生すぎ”じゃない?

 もう少し、楽しいヤツほしくない?」


サーヤ

「たしかに……

 あ、ここ魔道具の街だし――」


サーヤ

「そういえば、最初めっちゃビビった、あの炭酸の粉!」


は! そしてふたりは同時に叫ぶ。


「「シュワシュワ!!」」


炭酸=温泉

炭酸=楽しい

炭酸=子どもが笑う


つながる。

一気に、世界が明るくなる。


―――――――――――


サーヤの思考が加速する。


(蒸し系……饅頭、芋、蒸しパン、栗、プリン……

 あ、チョコ……溶ける……

 フォンダショコラ……歩き食べ……

 温かいとトロトロ、冷めても美味しい、冷やしてもパリパリ……)


(炭酸……ドリンク? ラムネ?

 でも“お菓子”で……

 ジュエリーみたいにキラキラしてて……

 でもただ甘いだけじゃなくて――)


サーヤ

「ルカ! こんなのはどう!??」


――――――――――――


厨房の隅。

粉。粉。粉。

そして――笑い声。


時々、爆発した泡。


遠くから、料理長のジト目。


ルカ

「見て見て!泡暴走してる!!」


サーヤ

「待って、それ化学兵器!床滑る!冷たい!!」


女将

「床!拭きなさい!!!」


でも――

確かに、甘い香りは残っていく。


何度も失敗して、

何度も笑って、

何度か本気の顔になって――


そして、出来上がった。


* 湯の幸福を閉じ込めた

 【温泉フォンダ】


* 湯上がりの楽しさを連れ帰る

 《シュワノキャンディ》


―――――――――――


女将と料理長が座る。

試食。


サーヤ

「……ただ“甘いだけ”のお土産じゃありません」


ルカ

「これは――」


ふたりで、同時に言う。


サーヤ & ルカ

「“この温泉街で過ごした時間ごと、持ち帰るお菓子です”」


静寂。


そして――


女将が、笑う。

「……いいじゃない、これ!

 宿が街の一部として胸を張れる品” だわ」


料理長は腕を組みながら、小さく息を吐く。


料理長

「悪くない……どころじゃないな。

これは――街の看板になる味だ」


ぽん、と肩を叩かれる。


料理長

「よくやったな」


ルカとサーヤ、顔がくしゃっと笑う。


「「 やったぁ!!! 」」



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