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第8話 精霊の門

-side オーウェン-




「はあ、賢者のお前さんを追放--?正気かい、王国は?」

「ふっ……!まあ、正気では無かったことは確かですね」

「笑ってる場合かい……。まあ、今はいいか。それで、賢者ということは上級光属性魔法も使えるということかい?」

「ああ」

「なるほど。それで、リッチを倒したと」

「そうなりますね。リッチだった事は知りませんでしたが」

「そんな、無自覚に有能さを見せるのやめて欲しいものだねえ」

「そう言われましても……」



 本当に、リッチだとは知らずに倒してしまったし、知っていたら、もう少し用心して、魔法を放っていただろう。

 そんな言葉は、口に出さず、エリーゼさんの様子を伺う。彼女は何か考えた様子で、こちらを見ていた。



「ふむ、あーー、だったら、お前さんに頼みたい事がある」

「頼みですか?」

「ああ。もっとも、すぐに出来ることでもないだろうがね」

「はい……」

「実はねえ。あの町の近くに、精霊の国へと繋がる門があるらしいんだが……今は、聖女がいないから、光魔法1発で、その門を、開けられる人物がいないんだ。光属性の魔法を使える人物がこんな辺境に来るわけでもなく……、精霊界の門は、閉じたままでねえ」

「へーー」



 もしかして、その聖女って、ヒロインの事だったり、するのだろうか?ゲームには、そんな設定無かった気もするのだが。覚えてないなあ。



「正直、別に精霊がいなかったところで、やっていけているから、あたい達にはなんの関係もないと思うんだけど、ここに住むエルフ達に頼まれてね……困っていたところなんだよ」

「ああ--、確かエルフは、精霊を信仰しているんでしたっけ?」

「そうさね。冒険者の中にも、エルフは結構いる。あたいらもポーション作りとかでお世話になっているから、彼らを助けたいという気持ちがあったけど、流石に、光属性持ちの魔法使いをこんな辺境には呼べないからね。そんな時、オーウェン様が来たってわけだ」

「なるほど……、分かりました。引き受けます。領民の願いを領主が聞くのは当然のことですから」



 そう言うと、エリーゼさんは、驚いたように目を見開く。



「ククッ……!眩しいねえ。全く、なんでこんな立派な人間が追放されてきたのか、いや、立派だからか……。どちらにせよ、こちらとしては嬉しい限りだねえ」

「は、はあ」

「今まで、結構ひどい人物が領主の時もあったからあたいがその度に追い出していたんだけど、お前さんはその心配もないようだし、安心だね」

「そ、そんなですか」

「ああ。ろくな奴いなかったよ。もっとも、みんなあたいらに愛想を尽かされて、魔境に隣接する土地で、魔物にやられていなくなったと思うが」

「は、はあ」



 さらっと、物騒な事言ったなこの人。

 しかし、なるほど。どうせそいつらは冒険者を下に見ていたせいで、反感を買って、色々助けて貰えなかったのだろう。

 もし、その状況でも、俺なら一人でもやっていけたか?いや、この魔境で、人の助けがないとかは無理だろう。

 冒険者ギルドを敵に回さなくて、良かったな。特に、目の前にいるエリーゼさん。この人だけは、敵に回すまい。



「ま、昔の話さ。少なくとも、ここ10年くらいは国もここへ貴族を送り込んでくることも無かった。ユリウス様があたいに全て任せてくれていたからねえ」

「へーー」



 ユリウスが信頼している人物がいるから、俺はここへ送られて、来たのか。下手に、安全な土地より確実に信頼できる人物が治めている土地の方が良いからな。

 エリーゼさん、敵に回すと怖いけど、信頼は出来そうだし、下手なことをして信頼を損ねない限りは守ってくれるだろう。



「その様子だと、やっぱり、ユリウス様とがっつり仲がいいみたいだねえ。あんた」

「ええ。まあ……、親友だと思っています。一応は」

「ふっ……!そうかい。あの、人間不信の完璧王子が、懐くなんてあんた、やっぱり相当だねえ」

「あはは……、その言葉、そっくりそのまま返しますよ」



 人間不信の王子……懐かしい響きだ。



「言うねえ。あんた。やっぱり、ユリウス様の事を抜きにしても、なんとなくあんたとはうまくやれそうだ。……じゃあ、ま、今日のところはとりあえずはそんなところで。これからよろしく頼むよ」

「ええ。こちらこそ、お世話になります」



 昨日今日で、どっと疲れた俺は、一旦、家に帰ることにしたのだった。



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