断章 勇者
今回はかなり短いです。
ですが、かなり大事なお話です。
「勇者様だ!」
「おぉ、勇者様……!」
「早くアイツらを倒してくれ!」
「お願いします!」
人々の声援が一人の男に向けられている。
その男は勇者であった。
敬愛する王によって任命され、自分が背負う運命を知った。このために生まれてきたのだと、大きな使命感を抱えて。
王国の勇者とも違う、もう一人の勇者だ。
彼が神に選ばれし勇者なのだとすれば、この勇者はそれに対抗する者。
勇者はいるだけで圧倒的な気配を放つ存在、故に一つの国だけが保有してはならない。だが、この時代に勇者と呼ばれた男は二名だけ。
女の勇者は生まれたことがない、それが神の意思なのか、人の選択なのかは不明だが……男の筋力もある程度は求められるのだろうというのが研究者の主張だ。
「―――――スラッシュ」
他の時代では勇者が六人存在したこともあった。だがそれは、王が選んだ暗殺者という面を持つ。真に力を持った勇者はいつも二人だ。
「おい、あれが本当に勇者なのか?」
「平民ではないか」
「顔も美しくない」
「貧相な身体も汚らわしい」
「死ね」
勇者に向けられたのは声援だけではなかった。
それは何故か?
彼が、勇者だからだ。
完全版完結のため、エピローグを一度削除します。




