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どうして勇者と呼ばれたのか  作者: 乙川せつ


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四章 剣聖

 ヴァルノウド家。その一族は王国随一の名家であり、初代から王国最強の剣士【剣聖】を多く輩出してきた。その末裔、アルタイル・レアン・ヴァルノウド――――彼は歴代最強と謳われ、王国の外でも恐れられる人類側の兵器だ。


 その青年は、森の中で静かに暮らしていた。


「いただきます」


 そこは一般人なら近寄らない魔の森。魔王の配下ではない自然発生した魔物が生息する秘境……青年は魔物を狩り、その肉を喰らっている。

 彼の強さの秘訣はそれにあるのかも知れない。


「今日の肉は絶品だなぁ。最上級豚人ハイレスト・オークが居るなんて我ながら運がいい……」


 魔物の肉を食すことは常人にとって自殺行為だ。魔力が浸透し過ぎた、というより魔で肉が構成されたものを体内に入れると余りにも濃い力で内側から破壊されるのだから。

しかし剣聖にとってはただの美味しい肉に過ぎない。彼の抗体はたとえ魔王の瘴気だろうと無力化するであろう。故に彼は勇者候補ではあるが、本人が辞退している。


 辞退の理由は本人にしか分からない。


「…………うん?」


 どこかから気配を感じた。……いや、すぐ近く――――――。


「あの、剣聖様ですか?」


「君は……誰?」


「僕は――――――」


 ◇◇◇


 ぼくの前に現れたのは、勇者を名乗る戦士だった。そして、それが事実なのも理解できる。


「…………僕を、鍛えて頂けませんか?」


「君は充分強いだろう? 魔族にも勝てるぐらいには」


「それだけじゃ駄目なんです! 魔王を……この戦いを終わらせるには、もっと力がいる!」


「…………」


「お願いします!」


 頭を下げる少年の姿が、ひどく儚く見えた。両手に繋がる魔法回路の光も相まって、直ぐに消えそうな閃光のよう。


「……一本、かかってきなさい。ぼくに勝てるか勝てないか、試練と修行はそれだけだ」


 ぼくは腰に携えていた《聖剣アルファリア》を抜刀する。この世界に七本だけ存在する《七大魔剣》のうちの一振り。最強の剣とも言われる究極の一だ。


「分かりました」


 少年も自身の剣を構えた。片手剣――――魔剣ではないが、かなりの名刀だ。魔法付与もなしにオーラが見えることは今までなかった。

 魔力の濁流が見える……この強さ、いったいどれほどの――――――。


「…………いきます!」


 速い。


「だが、真っ直ぐだ」


 軌道は読めた。しかし重い。両手剣で片手剣を受け止めるのが精一杯……魔剣でなかったらこの一撃で両断されていただろう。


「火よ。我が腕に来たれ、【ファイアボルト】!」


「⁉」


 火の魔法……魔法剣士か。身体強化以外を使う剣士など見たことがない。そして、ここまで大成した戦い方も初めて見た。

 更に魔法の使い時が上手い。鍔迫り合いでこちらの両手が使えないときに短文の高速魔法で視界を潰す。実に効果的な使い方だ。


「対人戦にも慣れているというわけか……なら、全力で行こう」


 全力で踏み込み、振り下ろす。鎌鼬を呼び、聖剣の周りをコーティングする。これは聖剣流剣術基本の型、【裂空刀製】。


 輪廻へと誘う螺旋の剣(エクスカリバー)


「…………ファイアボルト!」


「風車ノ太刀」


 炎を斬り伏せた。しかし、その一瞬で接近される。飛び道具を使われると流石にキツイか。


「剣式……雪崩滝!」


 剣術も高いレベルで習得しているな。……しかし、達人とは言えない。魔法に関してもそうだろう、宮廷魔法師ならば先程の火魔法もぼくにダメージを与える。

 それらを組み合わせ、強さを示す。


「勇者の名に、偽りなしか!」


「せぁ!」


 ◇◇◇


「はぁ、はぁ……」


「ふーっ……はーっ……」


 結局、日が暮れても勝負がつくことはなかった。


「勇者……君は強い」


「ありがとう……!」


「だが、基礎ができていない。君を勇者学院に推薦しよう……そこで、更なる強さを得なさい」


「…………はい……!」


「また会おう、勇者―――」

剣聖の一族ヴァルノウド家はかつての王家(600年前)が魔法で遺伝子組み換えによって造り出した人造の一族です。

故に魔法に対する免疫、圧倒的な剣の才能を生まれつき保有しています。

対勇者に関しては誰よりも適任ではありますが、防戦一方になるのは避けられないでしょう。元々が護衛特化型の血統なので。

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