表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうして勇者と呼ばれたのか  作者: 乙川せつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/20

勇者の章 追憶Ⅴ

「失礼します」


「どうぞ」


 彼女の自室を訪ね、顔を合わせる。

 部屋に入ると、金色の髪が揺らいでいるのが目に入った。 


「…………」


 何だろう、すごく唖然としている。

 僕に何かついているだろうか? どこか変なのだろうか?


「……ふっ」


 彼女の顔が可笑しくて、この状況が不思議で……笑いを堪えられなかった。


「……何故笑っているのですか?」


「いやぁ、王族も驚くんだなって」


 あまりにも立場が違うけれども、同じ人間なんだと実感した。


「僕は勇者レオンといいます、お見知りおきを」


「王女、シルヴィアです。勇者に敬語を求めるのもお門違いでしょうか?

 素で構いませんよ」


「助かります」


 正直なところ、貴族の雰囲気と空気が苦手だ。


「改めて、よろしく」


「ええ、こちらこそ」


 こうして、僕たちは出会った。

  

 ◇◇◇ 


「勇者レオン、汝を近衛騎士に任ずる」


「はっ」


 この日は僕が正式に騎士となった日。

 王国最上級の兵、近衛騎士に任命された僕は王女殿下の護衛に就くことに。


「まさか貴方が騎士を引き受けるとは思いませんでしたよ。

 貴方はいつも、一人ですから」


「殿下、それは傷つきます。僕だって一人が好きなわけじゃありませんよ?

 僕の場合、味方が邪魔になることも多いんです」


「それでも、魔王と戦うためには軍とともに?」


「敵は魔王だけではありませんから。

 魔族や魔物、それらの敵軍を倒すのに戦力は必要です」


「そうですね、私も力になれるように努力しましょう」


 僕たちは笑えていた。

 それでも、それを快く思わない人達もいたのだ。


「お前など勇者の器ではない」


「どうせ魔物に殺される」


「汚らわしい平民の分際で、殿下に触れるなど……」


 予想通りではあった。


 貴族はプライドの塊なのだから、平民の英雄を嫌う。分かっていたのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。

 どうしてこんなに、胸が痛いのだろう。


「ああ、くそ」


 一人、自分の部屋で涙を流す。

 もう、二度と泣かないと決めていた筈なのに……堪えられなかった。


「なんで、僕なんかがこんなことに……!」


 僕は、神を恨む。

 だが、憎めない。


 僕がやらなければ、誰かがやる。


 それだけは駄目だ。


 この無限地獄は、僕だけが背負う。それで、充分なんだ。


「ああ、そうだ」


 僕は、勇者なのだから。


「レオン、いますか?」


 殿下? こんな時間帯に何だろうか?


「どうぞ」


「………………失礼します」


「――――――……⁉」


 何故か、殿下は薄着だった。

 もう、肌が見えてしまうような……踊り子が着るような、それだった。


「殿下っ、どうしてそんな恰好……っ」


「……少し、話しませんか?」


 ◇◇◇


「殿下と何かあったのか?」


「い、いや何も」


 僕たちは、誰にも言えない秘密を抱えた。


 ◇◇◇


 だが、その日常も突然終わることに。


「…………魔族!」


 辺境の視察へ赴いた時、一人の魔族から襲撃を受けた。

 紫の肌、緑の瞳が特徴の青年。 


『私の名前はシャルナ。魔王軍の剣士だ』


「どうして、こんなところに…………!」


『どうして? 将来の障害は先に潰すものだろう』


「…………姫様、逃げてください。僕が時間を稼ぎます」


「レオン………貴方はどうするの…………?」


「大丈夫、必ず…………生きて帰るから。約束だ」


 その約束を、僕は守れない。

 

 何故か。


 ここで死ぬからだ。魔族の青年は明らかに強い、僕より遥かに。


相打ちにも出来ないだろう、だからこそ戦う。殿下を守るために、時間を稼ぐ。


「そんな、レオン…………」


「いけっ、シルヴィア!」


「…………っ」


 彼女が走り去るのを確認し、僕は剣を構える。


『――――――』


 彼が言った言葉に、どこか納得した。


「勇者、レオン・ヴァリス。参る!」


 そして、戦いは始まった。


『この程度か、勇者というものは』


「…………そうだね、()()、この程度だ」


『次があると思っているのか?』


「いや、君が思う次は違うだろうね」


『…………』


 《僕》の権能は、今まで発動したことがなかった。


「いくぞ、魔の者よ。最後の覚悟は済んだのか?」


『そんなもの、とっくに済んでいる』


 権能が、目覚める。


『終わりだぁ‼』


 死の一撃。それは寸分たがわず、僕の心臓を狙っている。


 だが、僕にはそれが酷く…………ゆっくりに見えた。


「…………」


『防いだ⁉ 馬鹿な、そんな力残っているはずが……』


「舐めるなよ、魔族。僕は……勇者だ」


 絶技


「比翼双連」


 結果、僕は負けた。


 それでも、【()】は生きている。一歩、前に進む。


「繋げ、未来への希望を」


「…………久しぶりに見たなぁ、先輩」

次回、勇者と案内人。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ