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どうして勇者と呼ばれたのか  作者: 乙川せつ


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勇者の章 追憶Ⅲ

「ここは……?」


 目を覚ますとそこは、見知らぬ天井。

 確か、森の中で戦って……そこからの記憶がない。傷は……消えてる。


「これは、回復魔法……?」


 血塗れだった身体は綺麗になっており、戦闘時の不快感も見受けられない。


 いったい誰が――――――。


「目を覚ましましたのですね」


「君は……」


 そこに立っていたのは、美しい女の子だった。金髪で緑の眼……人間なのかが疑わしくなるほど精巧な、神による人形。

 少し前なら一目で心が奪われていた自信がある。


「申し遅れました、私の名前はアリス・レティーナ。神殿の回復術師です」


 神殿……。


 確か、この国の国教を支える総本山だったはずだ。そうか、この街だったのか。


それにしても、何処かで聞いたことのある名前だ。


「えーっと……。あっ、もしかして君って聖女?」


「一応そう呼ばれております」


 そうだ、この容姿に名前―――騎士団時代に聞いた噂、『稀代の天才聖女』のアリスだ。


「君が僕を治療してくれたのかい?」


「ええ、神は全ての人に平等です。森から血塗れで飛び出てきた貴方を治療したのも、神の思し召しなのです。故に、感謝なら天にいらっしゃる神へと――――――」


「いや、治療してくれたのは君だからね。ありがとう」


「…………変な人ですね」


「変かなぁ? 普通、何かしてもらったらお礼言うでしょ」


「まあいいでしょう、それで、いったい何があったのです。

 森で魔物とでも戦ったのですか?」


「ああ、よくわかったね。そうだよ」


「魔物の数と種類は?」


「もう全部倒したから大丈夫だと思うけど、動く騎士の魔鎧(リビングアーマー)小鬼の上級兵(ゴブリンエース)がそれぞれ十体ずつくらい」


「…………」

 

 うーわ、滅茶苦茶疑われてる。


 マジかコイツみたいな顔しないで、結構心に刺さるから。その冷たい視線もお願いだからやめて。


この人、本当に聖女なのだろうか。


 もう、女王様というか……マズい方の趣味持ってると言われた方が納得できる雰囲気だけど。


「それ、本気で言ってます? よかったら精神治療も致しますが」


「いや、本気だし正気だよ。実際戦ったから、何なら魔石見る?」


「……本当のようですね」


「信じてくれた?」


「ええ、信じましょう。信じ難いですが」


 まあそうだろうな、と内心苦笑する。

 だが、この事実は決して変わらない。もう、実際に叶えたことなのだから。


「……あれ」


「どうかしましたか?」


「魔力が練れない……」


 いつものように魔力をストックしようと意識しても、魔力が廻らない。

 

 こんなことは初めてだ。


「ああ、回復の弊害ですよ」


「回復の?」


「回復魔法は対象の生命力・魔力を大幅に消費して再生力を高める魔法。

 そのため、直後に魔力障害が起こることもあるのです」


「ふーん……まぁいっか」


「数日もすれば改善されるでしょう。それまで絶対安静ですからね!」


「あ、はい」


絶対安静、か。思えばこのひと月、休息なんてとってなかったな。いい機会だから兎に角休もう。


 彼女が部屋から出ていくと、また一人になった。

 ……いい天気だ。


 身体は大丈夫だし、少し外を歩いてみようかな。


「…………剣だけは持っていこう」


 念のため、護身のためと自分に言い聞かせ、壁に掛けてあった愛剣を腰に携える。

 

「ここが神殿なのかぁ」


 大理石製の建物が荘厳な雰囲気を醸し出している。優しいような気もするが、白い見た目のせいで変に意識が締め付けられた。

 今まで王城でも感じたことのない緊張感。少し苦手だ、この感覚。


「あれっ、さっきのおにいちゃん!」


「だいじょぶだった?」


「君たちは?」


 外に出ると数人の子供たちに囲まれた。

 話を聞いてみると僕を見つけてくれた子達らしい。


「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」


「ねぇそれって剣⁉」


「ほんもの⁉」


「本物だよ、ほら」


 抜剣し、剣身を見せると子供たちは目を輝かせた。


 神殿関係の孤児院で暮らしているらしく、中々見る機会がなかったようだ。確かに宗教的なことを考えたら争いに触れさせないことは当然ともいえよう。


「カッコイイ!」


「きれー!」


「あー、みんな? あの……聖女様には秘密だよ? あと大人たちにはね。約束できる?」


「なんでー?」


「どしてー?」


 無垢だなぁ。まあ、それが子供のいいところなのか。


「だって、宗教的にマズいだろう? それに、あの聖女様……怒ったら怖そうじゃないか」


「「「「あ」」」」


「…………あ?」


 何だろう、子供たちが酷く怯えた顔をしている。

 僕に恐れているのではない。

 僕の後ろ。何かいる。


 恐ろしい気配が、背中越しでも伝わってくる。後ろを向くのが、怖い。


「誰が、怖いのですか?」


「えっ」


 後ろには、先程礼を言った聖女様が立っていた。


 先刻より目が怖い。むしろ、睨んでいないか?


「いや、あのー……」


「子供たちに何てものを見せているんですか!

 ここは神の箱庭なんです! 命を奪う武器などひけらかさないで下さい!」


「ご、ごめん!」


「ねーたん。おこないであげて」


「そーだよ、わたしたちがみしてもらったんだからぁ」


「うっ」


「みんなぁ……」


 なんでだろう、涙が出てきそう。


「…………まあいいでしょう。それで貴方……名前は?」


「え? ……ライト。僕の名前は、ライト・フォートだ」


「ではフォートさん、貴方にはここで数日過ごしていただきます」


「えっ。それって治療のため?」


「それ以外ないでしょう? はぁ、では……」


 何か、疲れてるんだなぁ。


次話へと続く。

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