表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シミュラクル!〜サブ垢に転生した俺は何度でも『強くてニューゲーム』する〜  作者: やご八郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/85

#84.核を穿つ

 ◇◇【Side:ミルダ】城壁外──


「小癪な……そんなオモチャで私と遊ぼうなんて。いいわ、上等よ。手足を捥いで、生きたまま腹わたを喰らってあげる!」


 二度も不意打ちを食らったベルゼビュートが、苛立ちを隠さず吐き捨てる。砕けた腕はメキメキと音を立てて再生し、鎧の罅もみるみる埋まっていく。


(ちっ、こりゃ確かに相性が悪いね……)


 汗が頬を伝う。ミョルニルは“一撃必殺”──それを易々と再生されると、どうしても手数負けする。キースは時間稼ぎと言ったが、並の芸当じゃない。


「はっ、再生は大したもんだが──腕力はそこまででもない。それに……ここが甘いかい?」


 こめかみをトントン叩き、ミョルニルの頭で指し示す。


(とにかく隙だ。あのデカい鎌、起こしさえ引き出せば必ずほつれる)


「……言わせておけば! 調子に乗るんじゃないよ、メスゴリラ!」


 挑発に乗って大鎌が唸る。ミルダは縦横に振るわれる刃に戦鎚の腹と縁を噛ませ、滑らせ、受け流す。


 ◇◇


 数十合切り結び、二人は一度距離を取った。

 決定打はまだない。だが、浅い裂傷がミルダの鎧に増え始めている。


「なるほど、得物の扱いは中々やるじゃないか」


 素直に舌を巻く。


 大鎌や斧のように先端が重い武器は、掠めただけでも大きなダメージを与えられる反面、振り出しに“溜め”が要る。だから軌道は読まれやすい──のが普通だ。

 だがベルゼビュートは刃を自分の身体に這わせるように滑走軌道で振り回し、起こしを短縮してくる。見切りづらく、手数も伸びる。


 一方ミルダの魔導戦鎚(ミョルニル)は投擲と打撃の切替に優れるが、身体に纏って捌くには柄がわずかに短い。一撃の破壊力は甚大でも、連打勝負では分が悪い。


「あらあら、さっきまでの威勢はどこへ行ったの? 動きはもう読めたわ。そろそろ何か斬り飛ばせそうね。……くすっ、痛みに歪む顔が早く見たいわ」


 赤褐色の仮面が醜悪に笑う。


「ミルダ! 無事か!」


 壁上で指揮していたキースたちが到着した。フィン、セリエ、そして師匠(ミレッタ)も揃っている。


「ああ、何とかね。だけど、動きは見切られかけてる。長くは持たない。……怪我人は?」


「お陰さまでスライムは大半片付きました。最大個体の処理待ち。第二大隊は被害甚大ですが生存者は多い」


「そりゃ良かった。じゃあ残りはコイツってわけだ。──踏ん張るよ!」


「ええ。二人がかりなら通せます」


 戦況は整ってきた。だが、目の前の魔王級が最も厄介なのは変わらない。

 二人は武器を構え、最後の強敵と対峙する。


「へえ、騎士様ともあろう方々が、か弱い女性を囲むの? がっかりだわぁ」


 大げさに肩を落とすベルゼビュート。


「黙れ、魔族! 弱きを守るために剣を取った。ここで終わりだ」


 キースの魔導鎧から蒸気が噴き、騎士剣が抜かれる。


「はっ! かかってらっしゃい。雑魚が何人いようと同じことよ!」


 ベルゼビュートの身が赤いオーラに包まれる──加速。同時に、キースとミルダが一気に間合いを詰めた。


「おらぁ!」


 ミルダが大振りに見せて遠心を作り、投げに繋ぐ。だが刃先は空を裂く。


「ほらほら! 無駄よ。止まって見えるわぁ!」


 踏み込みざまの膝がミルダの腹に刺さる。さらに体術を織り込んだ縦横の鎌が襲う。

 苦鳴とともに一歩退くミルダ──その刹那の追撃を、キースの剣が滑り込みで受け止めた。


「させるか!」


 弾いた返しの斬撃も、ベルゼビュートは不可能角の反りで躱す。


「いいわねぇ! もっと楽しませて!」


 狂喜が笑みに滲む。


「望むところだ。行くぞ、ミルダ!」


「おう!」


 三者の攻防はさらに加速した。


 ◇◇◇【Side:フィン】


 剣閃が絡み、鎚と鎌が火花を散らす。

 キースとミルダは挟撃で攻めるが、核へは一太刀も届かない。

 左半身を常に隠す立ち回り──さすが万魔殿の魔王。


「まだですの、フィン!? そろそろ私たちも──」


 セリエが不安げに問う。俺は小さく首を振った。


「まだだ。あと少し……」


 今の俺たちでは速度帯が足りない。連携を崩すだけだ。

 訓練よりも二人のテンポも連動も一段上。付け焼刃は逆効果。


「くっ……!」

 鎌がミルダの鎧に浅い溝を刻む。


「ミルダ! この──」

 キースの剣が返るも、ベルゼビュートは海老反りで躱し、蹴りを叩き込む。「ぐっ!」


「これで終わり!」


 大鎌が振り上がった瞬間──


「いま、⦅感覚攪乱(センス・ジャム)⦆⦅重心偏差符(バランス・ブレイク)⦆」


 俺は片腕を伸ばす。赤のオーラが霧散した。大鎌の位相が一瞬ぶれ、刃は空を切る。


「ふん! 今さら支援? 遅いのよ!」


 吐き捨てて俺から視線を外す──その一瞬が欲しかった。


「……“頃合い”さ」


 俺は続けて味方側へ手を翳し、セリエも加護を重ねる。


「《加速(ヘイスト)》《治癒(ヒール)》!」「⦅祝福(ブレス)⦆」


 薄金色のヴェールが二人を包み、傷が塞がり、足取りが一段跳ねる。


「ああ!? 何よあんた達!」


「⦅盲目(ブラインド)⦆⦅減速(スロウ)⦆⦅(ヘヴィ)⦆」


 視界を奪い、行動速度を落とし、重さを上乗せする。青のオーラがべたりと貼り付いた。


 ベルゼビュートの逆鱗が震えた。


「気持ち悪い小僧が……! まずはお前から──」


 視線が一瞬だけ俺に流れる。


 直後──


「こうも上手くいくとはな」


 キースの低い声が、奴の耳を打った。


「なにっ!」


 左脇腹──いや、全身を激痛が駆け抜ける。


 キースの騎士剣は、“核”を穿っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ