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シミュラクル!〜強くて(?)ニューゲーム──リセマラしたデータは全部パラレルワールドになりました〜  作者: やご八郎


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29/30

#29.大魔女のミレッタ

 ◇◇ 霧の帯・岩背──


 目の前の“絵面”が強すぎて、思わず首を一回ぶん振る。見間違いじゃないか、もう一度——いや、やっぱり。


「ミ……ミレッタ? “大魔女”のミレッタじゃないか。なんでお前がここに——」


 “シミュラクル”本編でおなじみ、メインNPCにして“パートナー”候補。漆黒に金の蔦模様、露出多めのローブが風で鳴った。


「えっ? だって私たち“パートナー”でしょ。夫婦は一緒にいるべきよ。そう思わない?」


(待て待て待て。どういうフラグ回収だよ。……いや、それより今は後ろの黒い霞——)


「ちょ、ちょっと待って! フィンの“パートナー”は、あたしだよ!? あなた誰なの!?」


 ラミーが眉と耳と尻尾ぜんぶ総立ち。興奮しすぎて、肝心の()()()を完全スルーしてる。


「あら、可愛い子がいるわねぇ……。ダメよフィン、“遊び”が過ぎると女の子はすぐ本気になっちゃうんだから」


 ミレッタがするりと間合いを詰め、ラミーの頬を両手で包む。うなじまで指先が滑って、子猫をあやすみたいに撫でる。


「くすくす……よしよし、可愛い子ね。いったいどこから迷い込んだのかしら」

「わ、わわ! あーもう、くすぐったいよう!」

 ラミーはじたばたと身を捩るが完全にミレッタの思うままにされている。


「フィン〜〜助けてぇ!!」

「は、はわわわ! これはどういう状況ですかっ!? それとそっちの禍々しさ全開の“黒い霞”は何ですか!? 説明をお願いします!」


 マリエラはさすが、視線を霞から外さずに混乱を言語化してくれる。


 俺もはっとして霞へ顔を向ける。


「これ? これは——()()魔法じゃないわよ?」


「だろうな!」


 言葉が重なった瞬間、“ゴォン”と聖鐘の音が響く。続けて──


 ────ワールドクエスト、“始まりの災厄”が発動されました。

 “シミュラクル”に生きるすべての生命は、全力でこれに抗いなさい。


 勝利条件:個体名『ディノケンタウルフ』の討伐。

 敗北条件:すべての生命の“死”。

 達成報酬:貢献度上位10名の生存者にのみ通知・授与。

 以上────


 天の声(イシュタル)——前回と同じ。それが俺たちの頭に直接響く。


 黒い霞が、低く唸りながら膨張を始める。ゴゴゴ……と地鳴りめいた鼓動。前と同じ、いや、いやな予感はそれ以上。


(やっぱりスポナーだ。……このタイミングで条件一致かよ。不意打ちにもほどがある)


 でも——今回は違う。いまの俺は学園編限界まで仕上げた転生個体、スキル継承もしっかり。陣形も前回よりはマシだ。後衛に回復のマリエラ、そして——


「ミレッタ、戦えるか?」


「もちろん。……と言いたいところだけど、私は基本的に“口出し担当”なの」


(嫌なフラグの匂いがするな。ゲーム時代と仕様が同じだとすれば……)


 念のため、ステータスを呼ぶ。視界の端に淡金色のウィンドウ——


 ⦅ミレッタ⦆

 魔力:()()()()()

 MP:0(()()()()()


(…………なるほど、やはり)


 残念ながら、ミレッタは——


 戦力として全く当てにならない!!


 俺は咳払いで気を取り直し、拳の中で“爆裂鉄甲”の紋をそっと撫でる。ラミーは渋々ミレッタの手から抜け出して短剣を逆手に、マリエラは杖先に微光を灯して霞の鼓動に呼吸を合わせた。


「行くぞ。今回は——ぜったいに勝つ」

【更新予定】

毎日20:00更新!


【次回】#30『記憶の継承』

災厄の兆し——黒い霞が大きくなる中、ラミーの様子がおかしい。瓦解する計画、及ばぬ理解。でも、やるしかない。


面白かったらブクマ&★評価、明日からの20:00更新の励みになります!

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