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Sランク

背後に何かが出現した。


カーフェはそれが何なのか確認しようと振り向く。

その瞬間、爆風が吹き荒れカーフェの体を巻き上げる。

上空へ巻き上げられたカーフェだが、体勢を整えると爆風の主に目を向ける。


今ならはっきり見える。

その主は地面から這い上がり、今や森の木々よりも高くまで頭を突き出している。


「ドラゴンワーム!!」


カーフェは、驚愕と同時に絶望に襲われる。


ドラゴンワーム。

ランクはSで強靭な鱗に覆われたドラゴンのような姿をしたワームである。

そのワームはオークを出現ざまに丸呑みにし、また、潜りざまに他のオークを丸呑みにしていった。


潜りざまに放たれる爆風にカーフェは吹き飛ばされ、勢いよく木に背中をぶつける。

苦悶の表情を浮かべるが、すぐさま地震が起き、カーフェはしゃがみこむ。


現れるだけで、これだけの災害を起こす。

これがSランクの魔物である。


ワームは移動を開始する。

森のあちこちで爆音が鳴り、爆風と地震が起きる。

それと同時に魔物の悲鳴とおびただしい数の足音。


カーフェはすぐさま撤退を開始する。

スキルをフルに活用し、その場を後にする。

しかし、手負いのカーフェにワームを撒けるほどの速度は出せない。


ワームの捕食を何とか間一髪で躱すが、爆風で吹き飛ばされ、意識を刈り取られそうになる。


ワームは、動いているものを狙っているようだ。

カーフェが倒れている間は他の獲物を捕食していた。


カーフェは逃げる隙を窺う。

しかし移動速度が速く、今のカーフェでは逃げられそうもない。


カーフェはナイフを握る。


戦うしかない。


カーフェはドラゴンワームを待ち受ける。

何とかかわし、ナイフを振るう。

しかし、爆風に押し飛ばされ飛ばされる。


攻撃が届かない。


ワームは巨大なため気配察知で口の正確な場所を特定できない。

速度が速く、巨大なため回避にしか意識を割けない。


暫く命がけの逃避行が始まった。


どのくらい経っただろうか。

体感では数時間はたっている。

大地は荒らされ、多くの木々が倒れ、多大な被害を出していた。


カーフェは辛うじて生き残っていたが、体力の限界に迫っていた。


しかし、気付いたこともある。

まずドラゴンワームは地面から出て、地面に潜る。

この攻撃パターンしかしてこないこと。

そして、地面から出た後、数秒間は体が晒され、攻撃のチャンスになる。

という事である。


しかし、カーフェはその隙を突くことができなかった。

なぜならば、地面から出た瞬間に爆風が起きるからだ。

爆風に飛ばされ、体勢を整えた時には目の前にドラゴンワームの大きな口が迫ってくる。

つまり攻撃する余裕がないのである。


辺りの魔物を刈りつくし、とうとうカーフェに狙いを定める。

ワームが顔を出すと同時に回避する。

爆風に飛ばされるが、木に掴まることで何とか体勢を整える。

視界を上に向ける。

今までよりは時間に余裕ができた。

そう思った瞬間下から衝撃を受け、宙に舞う。


突然の衝撃に意識が飛びかけ、地面にたたきつけられたことで、意識が覚醒する。

身体が動かない中、目線だけを動かす。

その目に映ったのは、大きく揺れ動く尾であった。


カーフェは尾で攻撃を受けたのだ。


しかし驚く暇はない。

ドラゴンワームは捕食しようと飛び込んでくる。


カーフェは必死に回避行動をとろうとするが、体が動かない。

正真正銘、限界が訪れたのである。

カーフェは観念し、目を閉じる。


思い出すのは、孤児院の家族の事。

リア、シル、エア、グリード、ブラッド、ティア達ら子供たち、カイン、リリイ、そしてレアード。


「ごめんね」


涙を流し、諦めるカーフェ。


しかし、その時は訪れなかった。


ドラゴンワームはカーフェの遥か隣を通り過ぎて行ったのである。


何が起きたのかわからないカーフェ。


「カーフェ!!」


聞きなじみのある声。

自分は助かったのだと思えるほどの安心感に包まれた。


「レアード・・・・・・」


「まったく、ガキが夜遊びなんてしてんじゃねえよ。100年早ぇぇ」


レアードら"希望の守り手"の登場だ。


「どうして・・・」


「そんなもん迎えに来たからに決まってんだろぅが」


するとレアードらの後ろから、とある人物が姿を見せる。


「ギルド長・・・・・・」


ギルド長ガロである。

筋肉質の体に形の整った髭。

渋さが目立つおじさんである。


ガロはレアードらに目を向ける。


「突然、地震が起きてな。あまりに連続で起きるものだから何が起きたのかと思ったら、こいつらがやってきてな。お前が戻らないって言ってたから連れてきた」


ガロは続ける。


「おかげで今、町は大混乱だ。ギルドメンバーはギルドに集めて警備させて、町中に退避準備をさせておる」


どうやら、とんでもない状況のようだ。

ドラゴンワームを起こしてしまったのが私かもしれないと思うと居た堪れない。


カーフェは、ここであることに気づく。


ドラゴンワームが近づいてこない。


「いったい何が・・・」


カーフェは辺りを見回しながら呟く。


「こいつのスキルだ。認識阻害。こういう時に便利なスキルだ。と言っても、こいつレベルだと、持って数分だけどな。」


ガロは傍で控える人物に目を向ける。


「クトリだ。よろしく」


「・・・よろしくお願いします」


「さて、まずはこいつをどうにかしないとな」


ガロは僅かに顔を出したドラゴンワームに目を向ける。


ドラゴンワームにかけた認識阻害が解けたのか、奇声を上げてこちらに飛び込んでくる。


「ちっ!もう解けたか。手筈通りに行くぞ」


ガロの傍に控えていたもう一人の男、エイトがドラゴンワームに手を向ける。


エイトが身に着けていたブレスレットが輝くと同時に、何かがドラゴンワームにぶつかる。


その瞬間、ガロがドラゴンワームの懐まで潜り込み、小手を装備した拳を振るう。

同じくブレスレッドが輝き、ドラゴンワームの軌道を変える。

クトリもブレスレッドが輝くと同時に認識阻害を発動し、ドラゴンワームの五感に偽の感覚を埋め込む。


レアードら"希望の守り手"は、このタイミングでカーフェを避難させる。


「お前はしばらくここで休んでろ」


「わ、私も、た、戦う」


カーフェは立ち上がろうとするが動けず、表情をゆがめる。


「ここは私たちを信じて。大丈夫。ギルド長が私達には付いているんだから」


カーフェはリリィの目をじっと見つめる。

強さを感じるまなざし。

きっと大丈夫なんだろう。

カーフェは頷く。


「行くぞ」


レアードはカインに告げると、二人はドラゴンワームに向かっていった。


それと同時にクトリが下がり、陣形が出来上がった。


ガロ、エイト、レアード、カインが前衛。

クトリ、リリィが後衛兼カーフェの護衛になるようだ。


ドラゴンワームはガロらを捕食するべく、地面から顔を出す。

ドラゴンワームはクトリの認識阻害の影響で見当違いの方角に顔を出している。

爆風が発生するが、レアードが地面から岩の壁を作り出し、吹き飛ばされるのを防いでいた。


レアードのスキル、岩石操作。

地表の岩を操り、チームのサポートを得意とする。


後衛の陣営にも壁を作り、カーフェらを守っている。


リリィは壁から顔を出し、空中にいるドラゴンワームに弓を放つ。

クトリも認識阻害をかけ続ける。


爆風に耐え抜いたガロら前衛も迎撃すべく、スキルを使用する。


ガロの腕のブレスレッドが光輝くと同時に、魔素のようなものが小手に収束される。

そして、それを空中にいるドラゴンワームに放つ。


エイトもブレスレッドを光らせて、強力な一撃を食らわせる。

レアードは両手剣を地面に突き刺し、地面から岩の矢をいくつも飛ばしていた。


そして、カインは剣を振り、それによって生じた斬撃を飛ばして攻撃していた。


「あれは・・・」


カーフェはガロとエイトのスキルを観察していた。


「ガロギルド長のスキルは、チャージという。魔素を拳に収束し、放つことで、強力な魔物だろうと一撃で粉砕する。エイトも空気圧縮というスキルを使用し、ドラゴンワームに圧力をかけている。本来ならば、これだけ攻撃を受ければ、状況が変わるものなんだが・・・・・・」


クトリが言葉を遮り、ドラゴンワームに目を向ける。


ドラゴンワームの強靭な鱗はすべての攻撃を防ぎきっていたのだ。


「まったく、これほどの魔物と戦うのは数十年ぶりだ」


ガロは悪態をつく。


戦闘は続く。

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