古代遺跡④
一行はキリンの攻撃を躱し、体勢を整える。
エイドスは刀を振るい雷撃を飛ばす。
雷撃がジグザクを描いて麒麟に向かっていく。
「!!」
しかし、キリンは雷撃を意に返すこともなく無視し長い首、そして足を駆使して責め立ててくる。
「くっ!!思ったよりも俊敏ですのね!!」
セレスティアは、首による攻撃を搔い潜りその長い首に向けて短刀を振りかざす。
ガキィイイイン!!
鋭い金属音が鳴り響くだけで傷はつけられない。
「なら、これなら!!」
今度は、カーフェが大きく跳躍し、後方からその長い首を狙って両手剣を振り下ろす。
ギガガガガガガ!!
金属音が鳴り響き、今度は胴体ごと吹き飛ばす。
わずかに後ろ足がが浮き前方に倒れ込む。
「ダメ。硬すぎて突破できない!」
「私の短刀も傷をつけられませんの」
「雷撃も効きません」
トライセンの元に一旦集まる。
トライセンは考えるそぶりを見せたが、キリンが起き上がるのに気づき、剣を構える。
「ここは僕が出よう。皆は援護をお願い」
カーフェ達は隙を作る為に、縦横無尽に動き回る。
トライセンは剣を鞘に納め、居合の構えを取る。
「皆、トライセンの直線状には決して入るなよ」
それを見たエイドスは皆に指示を出す。
その瞬間、トライセンは居合抜きを行い、剣を鞘に納める。
しんと、静寂が辺りを包み込む。
麒麟が雄たけびを上げて動き出そうとしたとき、それは起こる。
空間が突如割け、キリンの首に大きな傷が刻まれる。
暴風が吹き荒れ、カーフェ達はしゃがみ込む。
暴風が止み、キリンに目を向けると、まだ動いてはいたが首に大きな傷ができており、首の機能不全が起きていた。
首によく目を向けると、ショートしたように傷が電気を発している。
「すごい!」
カーフェはあまりの一撃に驚愕する。
「やはり威力は落ちますのね」
「どういう事?」
「あの技は本来魔素を断ち切る技、しかし、魔素を感じないこの場所では威力を完全に発揮できないのよ」
「けど、勝ち筋は見えた。このまま押し切る!」
「待て!!」
このまま、首を落とすべく動き出そうとした矢先、トライセンがそれを制する。
カーフェ達が立ち止まり、トライセンに目を向けようとするが、その瞬間にキリンが動き出す。
ギュオオオオオオオ!!
麒麟の体内から機械の玉のようなものが無数出てきて、この広場を満たす。
何が始まるのかと警戒する間もなく、キリンの反撃が始まった。
機械の玉同士が電撃を繋げ、一行を襲う。
「「「ぐっ!!!!!」」」
トライセンを除く3人はその雷撃を躱しきれず、動きを止める。
機械の玉は更に移動を開始し、再び、視覚からの雷撃を放つ。
体が痺れ、意識も朦朧とする中、キリンの攻撃はさらに猛威を振るう。
麒麟は足を上げると、踏みつぶさんとする。
カーフェは間一髪のところをトライセンに助けられた。
トライセンは残りの仲間の安否を確認する。
セレスティアは雷撃で動きを止めていたが、カーフェと同じようにいち早く回復したエイドスに助けられていた。
エイドスは雷の膜を作り、雷撃を受け流す。
トライセンたちはエイドスの元へ一時避難する。
トライセンは、雷の膜を確認する。
麒麟の雷撃が、一か所に集まった為に集中放火されているが、数分なら持つようだと感じる。
「まずいことになったね。あたり一面を覆う玉。その球が一つ一つ動いて、様々な方角から雷撃をつないでくる。正直言って、躱し切るのは困難だね」
「な、ならどうしますの?」
セレスティアの表情は苦悶に満ちていた。
「法則があるのかもしれない。それを探ろう」
「法則・・・」
ピキッと音が鳴り雷の膜に亀裂が入る。
「時間がない。ここからは死闘になる。皆何としても生き残るんだ」
その瞬間、膜が壊れ、雷撃が一行を襲う。
一行はその攻撃を躱し、各々玉の破壊を試みる。
カーフェは近くにある玉に接近して両手剣を振るう。
玉は思いのほか簡単に真っ二つになる。
あれ?もしかして・・・。
カーフェは一つの結論に気づく。
背後に回った玉に気づくと、両手剣を投剣し玉を破壊する。
やっぱり!
「みんなこの球は迎撃機能はあっても、回避機能はないみたい!」
その発言に各々反応を見せる。
「よく気づいてくれたね!」
「そういう事でしたのね。分かればくらいませんわ!」
「なるほど」
法則に気づき、一気に形勢が逆転する。
「よくもやってくれましたね!お返しですわ!」
セレスティアルは大きく跳躍する。
その身を風に纏わせ空中での移動を可能にする。
それにより、雷撃を身軽にかわし、玉に接近する。
「くらいなさい!」
短刀に風を纏い刀身を伸ばす。
そのまま、横なぎに払い玉を破壊する。
「どんどん行きますわよ!」
セレスティアルは空中を移動し、玉を狙い続ける。
「雷撃化」
エイドスは自身を雷とすることで高速移動を可能にしていた。
瞬時に玉に近づき一閃。
同時にいくつもの玉を破壊する。
狙われる前に狙う。それがエイドスの戦略であった。
いくつのも玉がエイドスを狙い続けるが、それが届く前に破壊される。
エイドスの迎撃は続く。
「はあ!」
カーフェもまたスキルを活かし、破壊していく。
エイドスやセレスティアルほどの機動力はまだ持ち合わせていないが、スキルを活かした頑丈さで、攻撃を受けながらも破壊を続けて行った。
「君の戦い方はまだ危なっかしいな」
トライセンがやってきてカーフェの目の前に立つ。
剣を鞘に納めると、居合で剣を振るう。
その瞬間、視界全ての玉を一瞬で破壊する。
トライセンの実力はほか3人とは次元の異なるものだった。
トライセンが残りの玉を破壊しようと剣を鞘に戻すと、その瞬間今まで以上の眩しさが辺りを覆う。
その眩しさに目を覆ったその瞬間、雷撃がトライセンの体を駆け巡る。
「ぐっ!!」
回避行動を取ろうとするが、次から次へと雷撃が落ちてきて、身動きが取れずにいた。
雷撃が止み、意識が飛ぶのを何とかこらえたトライセンだったが、辺りを見回してみれば、カーフェ、セレスティア、エイドスは地面に倒れ伏し身動きが取れずにいた。
ドスウウウウウウン!
巨大な足音が鳴り、視界を上に向けるとキリンがトライセンを睨んでいる。
麒麟の姿が変わっていた。
麒麟の角の上に雷を帯びた輪が出来ており、そこから更に上空に雷が繋がっていた。
上空には雷撃を纏った巨大な輪が浮いており帯電していた。
「みんな大丈夫かい!」
「体が痺れているけど、なんとか・・・」
「これくらいどうってことありませんわ・・・」
「わ、私も・・・」
皆雷に打たれ少なからず疲弊している。
しかし、この場において静止は命取り。
それが分かっているのか、満身創痍ながらも皆すぐに立ち上がる。
トライセンは前に出る。
上空からの雷により空中の玉も瞬時に消え去っている。
トライセンは、剣を鞘に納める。
麒麟は雷をトライセンめがけて落とす。
トライセンはそれめがけて剣を振り、斬撃により雷を相殺する。
「ここからは僕が相手をする」
トライセンは剣を振るう。
すると、空間が割れる音がして、次にトライセンと麒麟を覆う新たな丸い結界が出来上がった。
「「「トライセン!」」」
「心配しないで。そこで黙って見ていてごらん」
トライセンはキリンに目線を戻す。
「君は強い。けど・・・残念だけど僕には届かない」
トライセンは跳躍し麒麟に近づく。
麒麟は雷で撃ち落とそうとするが、トライセンの周りに新たな結界が出来上がり、攻撃をはじく。
「その雷撃はもう届かない!」
トライセンは空中で剣を振るうと、大きな衝撃波が起き、上空の輪を破壊する。
「これでトドメだよ」
再び剣を振るったトライセンの一撃は、キリンを纏う膜結界ごと吹き飛ばし、キリンを消滅させた。
カーフェはあまりの桁外れの力に驚愕していた。
そしてそれは、エイドスやセレスティアも同様であった。
「ただいま」
トライセンは笑みを浮かべて戻ってくる。
「あなた強すぎですわ・・・」
「謎の多いスキルだ」
「Sランクなんてみんなこんなものだよ。それに僕のスキルは特殊すぎるからね。悪いけど詳細は話さないよ」
冒険者にとって、本来スキルの開示はパーティー間など真に信頼できる間柄の人物にのみ公表するのが主である。
その為、話さないと言われれば納得せざるを得ないのである。
トライセンが率いる臨時パーティーは無事麒麟を撃破し、軽い会話の後、すぐに空間が崩壊。
現実世界に戻されたのである。