古代遺跡
大会議室を出た後、カーフェらはある男性の元に集まっていた。
「自己紹介をしよう。私の名前はトライセン。Sランク冒険者で、”勇敢なる者”のリーダーをさせてもらっている」
笑みに見下しや優越感は感じない。
自分という存在に絶対の自信を持っている。
トライセンはそのパーティー名に恥じない人物なのだとカーフェは感じた。
「早速だけどパーティーメンバーと共にダンジョンに潜る仲間たちを連れて来るから待っててくれ」
待つこと10分。
トライセンは大勢を引き連れて戻ってきた。
「まずはパーティーメンバーを紹介するよ。まず、隣にいるのが妻のイーリア。その隣にいるのがガイア。そしてレイブンだ」
妻のイーリア。
妙齢の女性で所作の一つ一つが丁寧な女性。
母性に溢れているように見える。
大きなとんがりハットと両手のブレスレットが特徴。
後衛なのかもしれない。
ガイア。
一言でいえば筋肉。
相容れなさそうに見える異端の者と思えるほどの存在感を感じる。
背中にハルバードを二振り背負っている。
レイブン。
無口そうな男性で、チームの支え役のような雰囲気を感じる。
腰に一振りの刀を携えている。
「全員単騎でもAランク以上の実力を持っている。足手まといにはならないはずだよ」
「逆に俺らが足手まといだろ・・・」
レアードの一言に同意するカーフェ達。
CランクとAランクでは天と地ほどの差があるのだ。
「そして・・・ここからは各パーティーのリーダーに任せようかな」
「なら私からかしらね」
一人の女性が一歩前に出る。
二振りの刀を携えた騎士といった風貌である。
「私はレオーネ。そこのレイブンの姉よ。Aランクで”神威一閃”のリーダーをしているわ。そして、メンバーは右からエイドス。ランザ。エスノトよ」
エイドス。
若い男性。
刀を一振り携えて、ハチマキを付けている。
カーフェらと目が合うと、そっと会釈する。
礼儀正しい人物のようだ。
ランザ。
幼い見た目の女性。
しかし、目つきは怖い。
武器のようなもアクセサリーも見えない。
どのような戦闘スタイルなのだろうか。
エスノト。
イスに寄りかかって寝ている。
腰に一振りの刀を携えている。
起きる気配がない。
変な人。
「私はエルザノーツ。エルザでいい。Aランクで”楽園”のリーダーをしている。メンバーは、アンネローゼ、セレスティア、ミニヴィアだ、よろしく頼む」
エルザノーツ。
全身を赤で統一している。
赤黒い髪と褐色の肌でとても様になっている。
まるでどこかの騎士のようだ。
仕草も騎士を彷彿とさせる。
両手剣を背中に背負っている。
アンネローゼ。
全身を赤で統一している。
青い髪バランスが素晴らしく美しさを感じる。
お淑やかな感じを受けるが、仕草は騎士のようである。
武器は分からない。
セレスティア。
全身を赤で統一している。
エルザノーツと最も距離が近いような気がする。
尊敬?崇拝?そんな感じだ。
短刀を二振り腰に付けている。
ミニヴィア。
全身を赤で統一している。
他三名の背が高いため小さく見える女性。
ローブで身を隠しているため良く見えないが、きれいな赤い髪が時より見える。
杖を持っている。
「俺たちも自己紹介しねえとな」
レアードが代表して自己紹介をしていく。
仲間のランクに物おじせずに堂々とした佇まい、立派である。
「さて、顔合わせも終わったし、早速ダンジョンに向かうとしようか。トレントの冒険者たちには道中、ダンジョンの説明をさせてもらうよ」
一同はダンジョンに向けて、移動を開始した。
オークスを出て東にまっすぐ。
カーフェ達は整備された街道を進んでいた。
「立派な街道ね」
「オークスはルイン最大の都市だからね。貨物の行き来が盛んだから、きちんと整備しなければならないんだよ」
「それに他の街から来た冒険者や商人さんが迷わないように、ちゃんと看板も設置されてるのよ」
イーリアが指をさした方へ皆が目を向ける。
そこには岩壁のダンジョン。推奨Dランク以下、と書かれていた。
「ここはいたるところにダンジョンがあるからね、間違えてぽっくりなんて笑えないからね」
「今回行くダンジョンはまだ先なのかしら?」
「まだ先だよ。今回行くダンジョンは、この付近最大級のダンジョンなんだよ。そこで新しい隠し扉が見つかってその先に遺跡があったらしい」
カーフェは、リリイとトライセン、イーリアに会話に耳を傾ける。
遺跡、とても興味が魅かれる。
宝を見つければ、子供たちにもっと楽をさせてあげられる。
カーフェの頭は宝の事でいっぱいである。
その後、足を進める事数十分、ついにダンジョンに到着した。
原初のダンジョン、と看板に書かれている。
「原初?」
「もっとも古いダンジョンだと言われているんだ。それなのにまだまだ未知の部分が多い。今だ深層に到達した人すらいない。この付近では最も広大で難易度が高いダンジョンなんだ」
ダンジョン入り口にやってきた。
「準備はいいかい」
トライセンは各リーダーに確認を取り、そしてダンジョンに足を踏み入れた。
ダンジョンを進む一行。
ダンジョン内は湿気があるようで多少ジメっとしている。
今の所遺跡のいの字も感じられない。
ダンジョン全体が遺跡というわけではないらしい。
それにしても・・・。
「魔素が濃いわね」
「まだ浅いけど、油断は禁物だよ。気をつけて進むよ」
とはいうが、流石Sランクのリーダー。無駄なことはせず、最短で階層を降りていく。
道中、魔物が現れるが難なく倒していく。
ここは魔素が濃い。
現れる魔物も強力だ。
さしずめ、深淵の森ダンジョンバージョンといったところだろう。
その後、一時間ほどの脅威のスピードで遺跡への入り口にたどり着いた。
17階層、新たな道の前に一度休憩をとる。
その間は各自思い思いの時間を過ごす。
カーフェらはさらなる情報収集のためにトライセンら各リーダーが集まっている一角に集まる。
「あなたたちもこの先へは行ったことが無いのよね?」
「そうだね。どんな遺跡が待っているのか楽しみだよ」
トライセンは新たな道に目を向け、笑みをこぼす。
「油断はしてはいけませんよ。速攻全滅なんて可能性もあるのですから」
レオーネは武器の手入れをしている。
「そうだな。精神統一でもしておくべきだ」
エルザノーツは瞑想をしている。
三者三様の考えを持っているようで、休憩の過ごし方もバラバラである。
「そういえば、あなた達全員Cランクなのよね」
「はい」
「ここまでの戦闘を見てて思ったのだけどとてもCランクには思えなかったのだけど・・・」
「それは私も感じた。そもそもCランクじゃこのダンジョンは荷が重いだろう。ここまで私たちがいるとはいえ五体満足でなんの問題もなく来れている時点でBランク相当はあると思うぞ」
「それは僕も感じたね。無事、全てが済んだらランクアップ試験を受けてみたらいいよ」
リーダーらは、トレントの冒険者であるカーフェらの実力を認めてくれているようだ。
「ありがとうございます。しかし、あなた方についていくのが精一杯なので、私たちの実力の無さにガッカリしてしまいます」
「そんな事は無いさ。君たちはその年ですでにCランク以上なんだ。自信を持っていい。僕らなんてその年のころは点でダメだったよ」
「ふ、なつかしいな」
「懐かしいですね」
各々懐かしんでいる。
「一つ聞きたいのですが、我々の実力と魔族の実力を測る為に、未踏破の遺跡に挑むのはなぜですか?既存のダンジョンの方が良いと思うのですが?」
リリイの質問にレアードらは耳を傾ける。
「理由は主に二つある。一つは、遺跡の最深部に入る前に君たちの正確な実力を図る事。二つ目は、遺跡の特徴からくることなんだけど、遺跡の最深部には必ず門番というべきなのか試練というべきなのか必ず立ちはだかる兵器がいる。その兵器のランクはS以上。つまり、二つ目に来る理由は、その道中までの情報をもとに兵器と戦闘を行って、魔族の正確な実力を測る・・・・・・だね」
「兵器・・・・・・ですか?」
「ああ、遺跡の最深部には魔物ではなく、その時代の技術の結晶ともいうべき、戦闘兵器がいる。魔物の形をしていたり、ロボの形をしていたり、様々だね」
「なるほどな、けど俺たちはその魔族の実力すら把握できてねえんだぜ」
「そこは問題ない。君たちの実力と情報それらを照らし合わせれば、相手の実力をある程度は測ることができる。僕らだって、格上と戦ったことも一度や二度じゃない。君たちと同じ経験をして、今この場に立っているからね」
「お前たちは全力で戦え。今はそれでいい」
「分かりました。では他の質問なのですが・・・・・・」
こんな風に話していると、時間が来たのか、他のメンバーが集まってきた。
「おや、もうこんな時間か」
トライセンは懐から丸い魔道具を出すと、それを起動させる。
魔道具は光を宿すと、上空にホログラムを作り出した。
どうやら、マッピングできる魔道具のようだ。
「これから、遺跡に入る。ここからは未知の世界になる。よってフォーメーションの確認をしよう」
トライセンは説明を開始した。
1.パーティーごとにまとまり、それを一点として菱形を作る
2.先頭は”勇敢なる者”、中央左に”神威一閃”、右に”楽園”、最後尾に”深紅の刃”とカーフェ
3.先頭は正面、中央左は左側、右は右側、最後尾は後方を確認しながら進む
4.基本的にはトライセンの指示で動き、パーティーで勝手な行動は許さない
との事だ。
以上のことに同意し、一行は通路に入る。
菱形の陣形でも余裕があるほどの広さの通路である。
少し進むと階段があり、それを上って行く。
階段を上るたびに、魔素が更に濃くなっていくのを感じる。
一行は気を引き締める。
そうして、階段を登り切った一行が見たのは、広い空間一杯に存在する巨大で神秘的なピラミッド型の遺跡であった。