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やり残し②

カインの斬撃によりキラークイーンの巣は地面に落ちる。


キラービーはクイーンを呼ぶように奇声を上げる。


ギビヤアアアアアアアアアアア!!


巣の中から怒号が聞こえてくる。

そして、巣が大きく揺れ動き、巣の頂点から一全方位に亀裂が入る。

そのまま頂点から形が崩れ始め、キラークイーンの姿が見え始めた。


「レアード、お願い」


「ふーーーーっ!ほんとに大丈夫なんだな?」


大きく息を吸い呼吸を整えるレアード。

カーフェはキラークイーンに目を向けたまま頷く。


それを見たレアードは、カインと共に距離を取り両手剣を地面に突き立てる。


巨大な岩がカーフェとキラークイーンを覆い大きなドームを作り上げる。


「はあはあ・・・・・・ぜってえ死ぬんじゃねえぞ、カーフェ」


レアードたちは、後方のキラービーに目を向けた。




ギュイイイイイイイイイイイイ!!


キラークイーンは巣を完全に破壊して完全に姿を現す。


キラービーの嬢王にしては大きすぎる巨体をしている。

6本の足に4本の羽。お尻から胴体に伸びる6本の砲台には針が装着されていて、6本の針がついた尻尾。


カーフェは笑みを漏らす。


「ようやく顔を拝めたわね。さあ、戦いましょう。リベンジマッチよ」


カーフェとキラークイーンは同時に動き出し、両手剣と腕をぶつけ合う。




「レアード!あなたは一旦下がりなさい」


リリイは叫ぶ。


レアードは荒い息遣いをしていて、動きがだいぶ鈍っている。このままでは格好の的になる。


「はああああああああ!」


カインはレアードに群がっているキラービーを切り伏せる。


キラークイーンを閉じ込めたレアードをキラービーは明らかに狙っていた。

キラービーたちは全方位からの攻撃を繰り出しレアードを狙う。


「ぐわあ!」


躱し切れず、肩に傷を作るレアード。

レアードは膝をつき、キラービーをにらみつける。

レアードの肩は次第に紫に変色してきている。


「レアード、脱出するよ」


カインは、レアードを背負い走り出す。


キラービーは執拗にレアードを負うが、リリイとファル達四姉妹の弓に妨害され、分断することに失敗した。


「レアードは後ろで待機!」


リリイは合流したレアードに告げる。


「ふざけんな・・・こんなとこで休んでる暇はねえ・・・」


レアードは立ち上がろうとするが口から血を吐き、再び膝を付く。


レアードの状態はだんだんと悪くなっていく。

キラービーの腕と針には少量の毒が含まれている。

キラービーの毒は有毒ではあるが効き目が弱く遅い。

しかし、弱っているものは別である。

キラービーの毒の効果は、内臓と筋肉を直接溶かすものである。

免疫が落ちているものは、少量でも致命傷に代わってしまう。


皆少なからず毒を受けているが、まだ影響は受けていない。

レアードを除いては。


リリイと四姉妹は弓を放つ速度を速める。

キラービーがどんどん迫ってきて、対応しきれなくなってきているのである。


「俺を置いていけ・・・」


「なにいってるのよ!!」


「このままじゃあ全滅だ。カーフェが仕留めるにしてもまだかかる。今なら俺の犠牲だけで済む」


「そんなことできません!」


「もう少し待っててください!」


四姉妹は口節に焦りを匂わせながらも決断はできず、弓を弾き続ける。


「時間がない。俺が囮になって時間を稼ぐ・・・」


その瞬間、手刀。


カインがレアードを気絶させる。


「カイン!」


リリイがカインに怒りを向ける。


「勘違いしないで、黙ってもらっただけだよ」


カインは続ける。


「皆よく聞いて。レアードを気絶させたことによりもうすぐ囲いが崩れる。そうすれば、閉じ込められていたキラービーたちが僕たちに殺到するだろう。だからこそ、次の手を打たなければならない」


「どうするのよ?」


「簡単な話さ。囲いが解けた瞬間に僕たちでキラークイーンを仕留めて撤退する」


「キラービーに囲まれてるのにそんなことできるんですか!?」


「ああ、間違いなくできる。キラークイーンが打たれれば、群れは統率を無くし散り散りになって逃げる。クイーンさへ打てれば、キラービーは僕たちを襲うことはなくなる」


「そんなうまいこと・・・」


「キラービーは元々臆病なんだ。だから、群れと縄張りの中で生きている。そして、キラークイーンが破られれば・・・」


「なるほど、群れは崩壊し、縄張りも奪われたも同然。そうなれば、キラービーは我先に逃げ出すってことね」


「その為には、勝負は一瞬、解けた瞬間にクイーンが反応する前に首を取る。幸いなことにキラークイーン自体のランクは高くない。十分好きは付けるはずだよ」


「分かりました。やりましょう!」


カインたちは崩れ始めている囲いに目を向け動き出した。





「はああああああ!」


カーフェは両手剣を振るうが、キラークイーンは距離を取って躱す。

そして、腰の砲台から針を飛ばす。

針自体の速度は特別早くない。

冷静にかわし、攻撃の機会を図る。

カーフェは飛びながら、空中にいるキラークイーンに両手剣を振るう。

キラークイーンは後方に下がり、砲台を構えるが、カーフェはすでに後方に回っている。

俊敏さを活かして躱そうとするが、羽に切れ目が入る。

カーフェは縦横無尽に動き回る。

レアードの囲いのおかげで、優勢に立ち回れている。

キラークイーンが動き回るにしては狭く低すぎる囲い。

囲いの中にあるいくつもの障害物。

全てがカーフェに味方をしていた。

キラークイーンが砲台を放ち、そのまま距離を詰める。

カーフェは針をかわし、両手剣を振るう。

キラークイーンは腕で受け、尻尾でカーフェを狙う。

針のついた尻尾をキラークイーンは振るい、カーフェに傷をつける。

キラークイーンは笑みを浮かべるが、その瞬間、痛みを感じ悲鳴をあげる。

キラークイーンは下がり、確認をすると、砲台が一つ切り裂かれ、地面に落ちていた。

キラークイーンは、カーフェが持っているナイフに気づくと、怒号をあげた。


まず、一つ。

ナイフで砲台を切ることに成功したカーフェは、ナイフを確認する。

刃毀れは無い。

砲台は比較的柔らかいようだ。

となれば、狙いは明確になった。

カーフェは肉薄する。

キラークイーンは砲台や尻尾で応戦するが、カーフェは致命傷だけは避けて、まっすぐ飛び込んでくる。


予想外の行動にキラークイーンは動揺するが、その瞬間にまた砲台が切れれる。

空中にいるカーフェを狙おうと体を向けるが、カーフェはすでに囲いの天井に足を付けて切り返そうとしていた。


そして、一閃。


気付くと、再び砲台を切り裂かれていた。


キラークイーンは激しく動揺し、逃げるそぶりを見せる。


カーフェはそこにさらに肉薄する。


その瞬間の出来事であった。


囲いが大きく揺れ動き、少しずつ崩れていったのだ。


カーフェは動きを止め、レアードに何かあったのではと迷走する。


しかし、逃げ道を探そうとするキラークイーンを目にすると、すぐに気持ちを切り替え、行動に移す。

崩れる前に首を切る。


カーフェは肉薄する。


キラークイーンは錯乱状態に陥ったのか、腕、尻尾をめちゃくちゃに動かし、また砲台をハチャメチャにはなっていた。


逆に動きが読めなくて近づきにくくなる。


そのうち、天井が崩壊し、青空がのぞく。


キラークイーンは、青空に気づき逃げ出そうとする。


カーフェは急いで追撃を加える。


しかし、キラークイーンの腕は固く破れない。

キラークイーンの高度が上がっていく。


一か八かだ!


カーフェは大きく跳躍する。

距離が空いたことでキラークイーンは砲撃で牽制をする。


しかし、カーフェはそれを避けず、横腹に突き刺さる。

苦悶の表情を浮かべるカーフェだが止まらない。

そのままの勢いで、両手剣を全力で振り下ろす。


キラークイーンも応戦するが、それがカーフェに届くことはなかった。


砲台と尻尾はどこからか飛んで来た矢によって遮られ、全力で放ったカーでの一撃により腕を切られる。

それでも逃げようと藻掻くが、死角の背後からカインがやってきたことに気づくことができず首を切られ命を落とした。





着地したカーフェは外の状況を確認する。


キラービーはキラークイーンの死体を目の当たりにして、案の定錯乱し、各々全方位に散っていった。


カーフェは急いでレアードの下へ向かう。

カーフェはレアードの脈を確認する。

多少弱まっているが生きている。

安堵の息を吐いた。


それを見ていた、リリイ達も顔を見合わせて、ようやく一息ついたのだった。

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