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魔素だまり

ランクアップ試験の試験管を務めた翌日、カーフェはギルドに赴いていた。

中は相変わらず喧騒に包まれている。

未だ魔素だまりの対応に追われているのだろう。


いつもの様に担当ギルド職員に依頼書を持っていこうとすると、突如大声が響き渡った。


「今この場にいる冒険者に告ぐ。ただいまより魔素だまりの浄化に対する護衛任務を募集する。報酬は弾む。参加者を集う!!」


ギルド員が依頼書を掲げる。


冒険者たちはその依頼書に集まる。


依頼内容はこうだ。

魔素だまりの氾濫により新たなまりの浄化に異常をきたしている。

至急、応援を求む。

報酬は一律銀貨500枚。

参加ランクはEランクから!!


というものだった。


銀貨500枚!!

1週間分の依頼金!!


カーフェは勿論くいつく。

視線を端の方に向けるとレアードら"希望の守り手"の面々を見かけた。

彼らも参加のようだ。おそらく事前に聞いていたのだろう。


参加者は多いようで、皆挙手して参加を表明する。


「午前10時に参加者は街道の森に集まってくれ。皆の活躍を祈っている!」


「「「「「ウオオオオオオオオオオ!!!」」」」」


カーフェは黙って気を引き締めていた。




午前11時。

時間と同時に皆街道の森に入っていく。


たくさんの冒険者とともにカーフェも進む。

今のカーフェには大きく変わったことが一つある。

それは肩から足の方にかけて担いでいる両手剣の存在である。

これはレアードから引き継いだものである。

特別報酬により両手剣を新調。

今まで愛用していた両手剣をカーフェに譲った形となる。

レアードのサイズに合わせていたものなので少々大きすぎるが、カーフェが扱う分には問題ないだろう。


勿論この場には、カーフェファンの”4つ子の魂”の面々もいる。

新たな武器を装備している事もあって質問攻めにされている。

”希望の守り手”の面々はこの光景に少々面食らっていた。


この依頼に参加した冒険者は約20人。

パーティーでの参加もいれば、ソロでの参加もいる。

皆、話した事は無くても顔見知りである。


冒険者のほかにも教会から派遣された者が20名ほどいる。

半数が浄化。

もう半数が護衛というのが、普段の組み合わせらしい。


今回の依頼は2つ隣り合って存在していた魔素だまりの片方が反乱を起こして、魔物を生み出し始めてしまい、浄化が困難になってしまったらしい。


冒険者の役目は氾濫によって生まれた魔物の殲滅と浄化が完了するまでの護衛となっている。


道中、”4つ子の魂”の面々によって空気が緩んだのか、ちらほら会話が聞こえてきていたが、近づいていくごとに会話が無くなり、圧力のようなものを感じ始める。

それにより、徐々に表情を引き締めていく。

”4つ子の魂”の面々も同様である。


しばらく進んでいくと、目の前に大きな黒い靄のようなものが一点に集まって玉の様になっているのが見えてくる。

あれが魔素だまりである。

遠目で見ても一目でわかる。

非常に多きなサイズ。

氾濫寸前の様に見える。


教会員が指示を出し、冒険者は散らばる。

我々の役目は勿論、魔素だまりに集まっている魔物の殲滅である。


魔物は魔素を好む。

この常識がこの状況を作り上げている。


冒険者たちは、カノンの指揮によってそれぞれの持ち場に着く。


Cランク冒険者カノン。

”深紅の刃”のリーダーであり、この依頼のリーダーを務める男だ。

経験豊富な男性で、人望があり、たびたびリーダーを任せられる男である。


カノンの指示により、冒険者たちは前衛と後衛に分かれる。そして、前衛と後衛の連携で敵を一方的に屠って行く。

カノンの指示は即席でもこなし易いように簡単なものとなっている。

良く知る者と数人1組となり、必ず前衛後衛が揃うようにする。

そして、基本的に後衛の小リーダーを決めて、その者の指示で動くというものだった。


カーフェは”4つ子の魂”とグループを組むことになっている。

前衛1人、後衛4人とバランスは良くなさそうだか、カーフェの実力的にバランスは取れている。


カノンのスキルは分析。

対象の強さ、相性などが確認できるというもの。

戦闘系ではないが、指揮官として非常に優れた能力である。


各グループはそれぞれ実力を発揮し、魔物を殲滅していく。


魔物はゴブリンが多く、敵のランクは低い。

しかし、数が多いのが難点であった。


「くそっ!切っても切っても湧いてきやがる!」


どこからかそんな声が聞こえてくる。


カーフェたちも、初めこそ順調であったが次第に雲行きが怪しくなっていくのを感じていた。


ゴブリンの数が減る気配がない。

奥からどんどんやってきて冒険者に襲い掛かる。


「キリがないですよ!」


「しのごの言わずに手を動かす!」


四女フォルに対して叱咤する長女のファル。


しかし、ファルも時間が掛かるにつれて動きが鈍るのを感じていた。


カーフェは教会職員に目を向ける。


教会職員は杖のような魔道具を掲げて、魔素だまりを中心に魔法陣のようなものを発生させていた。

あれが、浄化の儀式のようなものなのだろう。


様子を見るに、まだしばらくかかるようだ。


ゴブリンの群れの勢いは衰えない。

奥の方から、ゴブリンの進化種であるゴブリンナイト、ゴブリンメイジ、ゴブリンアーチャーなどが現れ冒険者を押していく。


冒険者が完全に劣勢になっている。


まだ脱落者が出ていないがそれも時間の問題だろう。


カーフェはどうすればいいのか考えを巡らせる。


「全員落ち着きを持て!数は負けているが敵は低レベル!もう一度立て直して、戦況を変えるんだ!」


カノンの叱咤激励で、眼に光を灯した冒険者が再び優勢に引き戻していった。


劣勢となっているグループは、優勢なグループが手助けし、互いに背中を預けながら、戦う状況が続いていた。


ゴブリンの進化種が多く出てきてからは、それぞれのグループが戦いやすい魔物を選び、戦局を有利に進めているのがカーフェの目からでも確認できる。

この状態で混乱しないのは、きっとカノンの指揮によるものなのだろう。


カノンは状況に応じて各グループに指示を送り、隙のない布陣を引いていた。


やがて魔素だまりが消えたことにより浄化が完了したが、ゴブリン種が多いことでこの場に留まることを強いられていた。


教会員も自前の魔道具を駆使して、戦闘に参加。

主にサポートだが、大いに活躍していた。


そんな中ゴブリン種が減ってきた時、大きな地響きが鳴る。


冒険者と教会員は何事かと辺りを見回す。


地響きがどんどん大きくなりその方角に皆、目を向ける。


奥からやってきたのは、体躯の大きい人型の魔物。

ゴブリンロードであった。


ゴブリンロード、ランクBの魔物。

大柄な人族と同じような体躯で緑色の肌。

牙とツノを生やし、全身に盛り上がった筋肉。


ゴブリンロードは現れると同時に、怒号を上げる。




「ゴブリンロードだと!」


「ゴブリンとはいえ、まさかロード級の魔物が出てくるとは・・・」


各々、驚愕と戦慄があり混ざったように狼狽えている。


そこを見逃すほどゴブリンロードは甘くなかった。


ゴブリンロードは雄叫びを上げると、そばに控えていたゴブリンパラディンが一斉に冒険者に襲いかかる。


狼狽えていた者は、反応が遅れ致命傷を負う。


ゴブリンロードとゴブリンパラディンは、それぞれ首切り包丁を持っている。


後衛は慌てて後退し体制を立て直す。

カーフェ達前衛も応戦するがパワーでは負けているようで、大きく吹き飛ばされるものもいる。


「前衛は必ず1対複数になるように動き回れ!パラディンが相手でも一騎打ちを仕掛けるな!」


カノンの指揮で皆、冷静さを取り戻しつつあった。


冒険者、教会職員率いる連合隊とゴブリンロード率いるゴブリン部隊の戦いは激しさを増していく。




残り人数、冒険者15名。教会職員10名。


ゴブリンロード1体。ゴブリンパラディン10体。ゴブリンナイト10体。ゴブリンメイジ5体。ゴブリンアーチャー5体。ゴブリン30体。

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