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ヴァーチャルな世界へ ① きらいなものはおやくそく

 また新シリーズ?とか思わないように。完結なんて考えてないのです。

 予告とちがうとか思わないように。あるあるで流しましょう。


 ゔぉ~~ ゔぉ~~


 ちょっと知ってる牛さんの声も姿もちがうが、草薫るのどかで風がそよ吹くこの場所。今のVR (バーチャルリアリティー)って五感にしみるねぇ。手をかざすと陽に当たってたおでこが影になって、風も涼しい。そういえば、ずーっと歩いてきたのを思い出したよ。夏場は牛の放牧している高原。遠くまできたなぁ。


 お世話をしている牛飼いのおじさんに軽く挨拶をして通り過ぎる。彼は私のようにここで好きなことをしてすごしている住人だ。こういう人にうっかり世間話をしたら長くなるのよねぇ。この牛はどこそこのゲームに出ていたとか、素材を集めた頃の苦労話とかとか。うん、見たことある子もいるねぇ。


 長年ゲームをしてきた。長年というのだから大昔のゲームに対する認識が良くなかった頃もよ~く知ってるものです。友人の家でゲームしたとか1回くらいあるかなという、ゲームとは自宅で一人でするものだったっけ。


 もっしゃもっしゃ


 おおぉ・・・おっきいなぁ。見上げると柵の向こうの牛さんからほんのり草のにおいが漂ってくる。でもそれ以上のにおいはない。フィルター様々ですよ。苦手なにおいや音とか加減できるんです。


 オンラインで集団的ゲームした当時は画面越しで、それでも大きく感じたものだけど。でも後衛だったからねぇ、あまり近づかなかったなー。逆にソロってた頃は戦闘にいそがしいから見てる余裕もなっし。こんな風に眺められるようになったのって、いい時代だぁね。


 さぁって、まだまだ歩くよー




 とある企業が発表したオンライン上の世界は実際の地球の過去を再現したもので、各国や機関、企業に向けての参加条件としたのはただひとつ。現実の揉め事を持ち込まない。いっそ簡単すぎる内容だが、現実とみれば中々大変だろう。だが最初の募集ですべての国、機関、企業が参加表明した。


 理由は簡単だった。その世界でなにをするかは参加したことで決められるからだ。国においては国境問題や宗教問題。企業なら同業他社との牽制。後から参加など何一つ利点がない。持ち込めないのは揉め事で、競争やにらみ合いまではうるさく言わないのだ。


 今新しいこの世界にあるのは海と陸と自然環境のみ。まず最初のお知らせが運営(企業からは切り離され、独立した機関として国際機関に認定された)からあり、国や機関の所在地の確認だった。問題なければ州や市町村といった自治体の所在地、そして道路や鉄道、空路に港湾等インフラを置いた。


 ただこの世界は過去の地球を再現したものなので、当時陸地でなかった場所もある。それの影響が一番あったのは日本の首都だろう。世界に公開する前に地質学者等によって調査が行われた。過去と今の地形差を埋めるためのものだったが、もっと調査したい!と、公開後も旧地形で調査できる権利をげっとしたそうだ。


 次の提案は各国の世界遺産等の観光名所の設置。中でも自然遺産は現実ではできないものでも可能で、すでに計画が上がっているのは富士山の周囲をジェットコースターで取り巻くというものだ。周辺の自治体の仕事がすばらしい。


「なにいってんの!うちはグランドキャニオンでバンジーよ!」


 おぉう、みんなここの趣旨がわかってきたねぇ。国こそまだ静観しているが自治体クラスはもう鼻息も荒い。そこで次は大手企業に向けての話があった。どこからともなくVW (ヴァーチャルワールド)と呼ばれだしたので、そのまま続行というゆるさだ。ここに参加する一般のお客さんに必要なものはというと、まず通貨にかわるものだろう。


 運営が提示したのは活動ポイント。だれかがダサいとか言わない限りそのままだ。基本稼ぐには移動すればいい。歩く・自転車・車・電車・飛行機・船。一番貯まりやすいのは歩きだ。ただし遅いよね。まぁ、ポイント貯めれば運営が用意した自転車とか車は入手できる。でも公共交通の良さもある。だって無料だし。


 鉄道愛にあふれた方たちはもう運行していない車両とか、見るのも乗るのも楽しめそう。豪華客船も船内施設利用ポイント付きで予約始まったそうだし。旅行会社も南極1周ツアーあるって宣伝してる。検疫関係で犬ぞりできなくなってるものねぇ。気温や食事の心配ないなら行きますとも!


 お客さんが利用すれば交通機関にもポイントが入る。このポイントは現実で販売可能で、売り上げでインフラ整備できるのだ。ポイントを買った企業はVWでイベントができる。〇〇ポイント山分け企画といった感じだ。もっとも人気ある音楽ライブとかなら1ポイントでも行くんだろうね。最低1ポイントが企画条件だからポイント数=参加人数になる。


 次は一般のお客さんの参加方法。個人情報を入力し住人登録をする。ただ現時点ではだれでも参加可能ではない。ゲームならβ版というところで、あちこちうろついて気になることを運営に知らせる訳だが。



「ん?」


 キラリーン。


 なんだろう。なんか落ちてる。


 わー、イベントアイテムって感じ。白みがかってまぁるい玉。日にかざすと虹色の遊色がでてウォーターオパールみたい。どれどれ鑑定っと


【??? 運営からの贈り物 】

   特定の場所で使ってね♪



 ・・・・・・・それだけ?


 ほんとに?


 しょうがないなぁ


 運営に登録されているVW用のSNSグループで聞いてみよう。


   【歩く人たちの集い】


『ねぇねぇ へんなの拾った 運営からの贈り物だって しってる?』


『あー 知ってる なんかね赤いのとか真っ黒とかいろいろ見つかってるよー』


『私は白っぽくてきらきらしてる なんだろねぇ』


『まだ使えた人いないみたいだけど 拾ったとこから遠くではないだろうって言ってたよ』


『よし もうすこしさがしてみるねー』


『がんばれ~』




 足取りも軽やかに草原を進んでいく。あぁ、いいなぁ。こんなに歩いても大丈夫だなんて・・・


 子供のころから体が弱かった。大病はしなかったがすぐ熱をだしたりしていた。朝起きた時大量の鼻血がでてパジャマが真っ赤に染まったよ。その日から布団にはバスタオル、枕にはタオルを敷いて寝るようになった。


 冬の思い出は熱だして寝込んでるとき、大晦日の歌番組が別の部屋から聞こえてきたっけ。息苦しい夢と現のはざまで聞こえてくる歌になぐさめられたかといえば全然なかった。


 学校で将来の夢とかで作文や絵を描けといわれても、当時大人になれるかさえ疑問に思っていたからとても困ったのも思い出だろうか。体力をつけるためにしてきたスポーツは体力をさらに消耗することになった。成人式を無事迎えられたときはへろへろだったよ。


 食事も制限だらけだった。胃腸が弱くてすぐお腹下したっけ。油っこいものや濃い味もだけど、消化できないから食べたものがそのままでてくる。もったいなさと食べ残しと変わらない罪悪感でいっぱいだった。小学校時代は栄養剤の世話になり、中学では漢方薬も追加した。社会人になってからはスッポン・マムシ・朝鮮人参の粉で少しましになっただろうか。


 それでも正社員で働ける体力はなかったので、実家の家業をほどほどに手伝うのとアルバイトをしていた。クリスマスな年ごろまでは見合い話もあったらしい。全部断ってたけど。結婚して子供産む姿を1ミリも想像できなかったからね。


 


 特に意識するでもないのに視界の端に白く光ってもやもやしたものがある。


 とてもとても変だ。


 私の脳は黒くて動くものを敵認定して反応する。小さければなお気づく仕様。白くて動かないものを現実では意識したことないんだよねぇ。とりあえず止まろうか。これ以上近づいたり白いものを触ったりしたら強制イベントくさいよ。絶対。




 突然、前置きもなく運営からのお知らせ画面がでた。




《 アトラクションキーを確認しました 》




 は? なんだと。この距離でくるのかよ。イベント。報告だ報告。適切な距離感てものがあるでしょー


 今までただの草っぱらだった景色にほんのり光ながら巨大な区画が現れた。


 つや消しシルバーの蔦が絡まる高い柵が取り囲んでいる。そして目の前に同じ意匠の門。なぜ私の好みを知っているんだか。わくわくするでしょ。でも次のはいただけないね。開いた門をくぐると大きな石板が空からドーンと降ってきた。角が少し欠けた質感とか、苔なテクスチャって門と合わないでしょーー


 どうも運営は私たちに細かいことは丸投げする気だ。こちらの好みは把握済みっていうことね。ええ、ええ、街作り系なゲーム大好きですとも。石板を見るとテクスチャ変更マークがあった。石板ですらないのもある。だめじゃん、なにがいいかなぁ。本に水晶玉か。へー、ノートPCもあるや。ってか、ここでなにしようかが先だねぃ。


 アトラクションというからには、なんとかランドとかみたく遊園地ぽいのかと思ったが。施設をポイントで交換まではいい。石板を読み進めると、出ましたよ。なんでダンジョンキーが限定1とはいえ1ポイントで交換できるのさ。しかも譲渡可って。丸投げの丸投げじゃん!


 『運営からの贈り物』って他にもあるっていってたっけ。何人いるか知らないけど、その人達と協力してVWを盛り上げていくことになるね。んー、他と被ったらおもしろくないけど、今ならもれなく私の思いのままにできるってか。いいぞーいいぞー。真似したい人はしてもいいと思うけど、なんとなくそんな人いなさそ





 早い段階で気づいたのは権力や地位のある者たち。または資金がうなるほどある企業。VWは危険な存在だと。自分たちの影響力が届かないのだから。すでに対策に当たっているができることは少ないだろう。大勢の人にとっては楽しめる場所なのだから。静観という名の歯ぎしりをする姿と、それを思い浮かべて笑うモノとの対比は「粋」だろう。VWはなんのためにできたのかを知ったときに・・・













《チュートリアルをはじめますか?》


 ーーー はい


《まずはメリーゴーランドを設置しましょう》


 --- ポチっと


《しばらくするとお客様が来園します》


 このお客様はゲーム用語で言うNPCノンプレイヤーキャラクター、各自人工AIで活動している。住人との見分け方は服に専用の名札がついている。親子だったりカップルだったり。ちなみに施設のスタッフもNPC。来園数や満足度でポイント入るとのこと。このポイントは個人の活動ポイントと連動していて何にでも使えるが、自分のことは後回しにきまってる。でも、服くらい交換しとこうか。後で役職持ちのNPCもポイントで雇えるし、その人達のお着がえ用に。


 とりあえずタキシードを着てみた。門と同系のシルバーで黒の蝶ネクタイ。何着か交換して支配人とかアドバイザーとかメカニックが増えたら着てもらおうっと。チュートリアルでポイント増えやすいけど、ご利用は計画的にだよ。今は、みーてーるーだーけー


 するとどこかから子供の泣き声が聞こえてきた。あるある迷子イベね。でも、音はどこから聞こえてくるかわかりにくい。報告案件かな。きょろきょろ、あ、いた。小学生くらいかな。しゃがんで目線を合わせた。


「だいじょうぶ泣かないで。だれといっしょに来たのかな?」


「・・・おかあさん」


「どこいくとこだったの?」


「じぇっとこーすたー」


 これは適切な施設を選ぶという意味もあるなぁ。幼児も乗れるやつはどれだ。あった。親子で乗れるやつは1000ポイント。最初に10万あってメリーゴーランドは100。服は50だった。設備も服も交換後はカスタマイズできる。そうすると満足度が上がるというわけ。乗り物の馬かわいくないし。


 メリーゴーランドの横に設置完了っと。ベンチを出して子供をひざにのせながら待っているとおかあさんらしき人が焦りながらやってきた。子供とおかあさんは笑顔でジェットコースターに向かっていった。


《『おかあさんを探して』をクリアしました。満足度ポイントを加算して20万ポイント取得しました》


 この満足度ポイントは接客が要なのね。従業員雇うときは要注意だわ。よろしくないと半分になってたし。ふむふむ、技能とか接客のほかに星マークが1~5ついてるのか。ランクだろうけど成長すると星が増えて、専用イベントも起きると。他の人に雇われ直したらイベントのみリセットだって。みんなで楽しめる仕様なのはいいね。


 石板はもう邪魔。実用一択でノートPCにしましたよ。え~っと今のポイント数は・・・


 ーーー 29万8850ポイント


 多いんだか少ないんだか。たとえばVWで徒歩で稼ぐのに5分100ポイント。自転車10分100ポイント。最初は景色楽しみながらポイント貯めだね。移動すると所持マップが埋まっていって、交換できるものが増えていく。今は人工物が公共か観光名所しかない。それ以外は草地のままの区画になっている。貯めて交換は先が長そうだ。


 個人所有の住居や店舗は基本ロックされていて所有者優先にはなっている。ただし、一応としか決まっていないが。立地によっては短期イベント等で運営が貸すので。土地の所有が認められていないことがVWの強みで現実との違いだ。表立って告知しないことで牽制にもなっている。だって苦情や脅迫を受けると出入り禁止になるだけだからね。


 飲食店などがVW内に同じ場所で店舗を出したいとすると、草地の区画前に開店準備中と看板を出しておく。すると住人は応援するために1日1回1店舗ごとに1ポイントで花の種を交換して草地に蒔く。咲いた花を店舗側がポイント交換して店が建つというシステムだ。少しづつ建物ができるのは見ていて楽しいし、種を蒔いた住人も店側から現実で使えるサービスももらえるご褒美付きだ。


 個人で貯める方法も数多くある。まぁ、今活動中の第1次移住団の場合は、全部運営からの企画イベントに参加して貯めるしかない。通称「1団」は運営が事前調査でVW計画に招待した人たちで、世界告知から遡ること5年前から始まる。それは1通の手紙だった。









「ほぇ?役所からの通知?「仮想世界構想」参加募集案内?なにこれあやしいぞー」






 事前予約した説明会の日、すでに面倒。必要なものと書類もって役所に行った。いまだに紙かよ。似たような人が数人いてどうぞどうぞと小会議室に案内される。ここでもパンフレットだし。


 部屋が暗くなりプチ上映会が始まった。担当者の説明によると福祉とか高齢者政策がふんたらとかわかりにくい。簡単なアンケートに記入して、ペラっと裏返すと最後に参加してやりたいことはなんですかと書いてある。コノヤロウ、この程度の事前情報で聞くことでない、が。これもおやくそく。書きますよ。





『やってみなくちゃわかりませんよ』

 




 この後VWの地に降り立つまでがものすご~くめんどうだったのだよ・・・もうね、思い出したくもないんだよ












 

 これ書き始めと完成のあいだにクリスマス前から正月明けの3週近くほぼインフルだろう風邪で記憶がございませんでした。減った3キロまだ戻りませんね。それにしてもテレビで言うまえにかかったのって、前回の新型インフルさんと同じという・・・

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