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魔法少女学園  作者: 弟子
1章
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1章VI 『秘密』

 体育のドタバタシャトルランも終え、無事に昼休みとなった。お弁当だ。私は毎朝自分のお弁当を自分で手作りしている。その方が自分の好きな物だけを入れられるのだから当然だ。親に作らせたら彩りを意識〜とか言われた野菜を入れられてしまう。そんなことがあっていいはずがないのだ。

 今日のお弁当はウィンナーに卵焼きとミートボール、こういうのでいいんだよ弁当である。あぁ美味しそう…


「紗夜ちんー、卵焼き食べさせて〜」


「え、いやだけど…」


 と言った瞬間気づいた。愛莉の体がピンク色のオーラで覆われている。やられた!!私の体は意思と関係なく箸で卵焼きを持つ。必死に止めようとするが歯止めが効く気配は無い。そのまま私の右腕は卵焼きを愛莉の口の元へと運んでいく。


「あ、あぁぁ…」


「んーーー!!美味し〜やっぱ紗夜ちんの作る卵焼きは最高だね〜」


「許さない、絶対に。本当に許さない」


 いや本当に許さない。私の渾身の卵焼きが、2つしか入っていないのに1つ持ってかれた…、世界が終わっている。視界がモノクロになっていく。あぁ、絶望とはこのことを指すのだろうか…もう今ならいっそ何をやってもなんの感情も湧かない気がしてならない。


「もーごめんってば。ほら、購買の限定たまごサンドあげるから」


「許すーーー♡」


 許すに決まってる。購買の限定たまごサンドと言えば、1日10食限定のとんでも人気商品。一生で1回食べられれば良い方と言われており、購買の前ではこのたまごサンドをめぐって毎日魔法バトルが開催されている。

 まぁそんな魔力バトルにおいても愛莉にすれば簡単に勝ちを取れるのだろう。退けとでもいえばいいのだから。


「うま、たまごサンドうま〜〜」


 ふわふわのパンに挟まれるたまごソースはゆで卵が完全に潰されておらず、ゴロゴロ食感が残っており食べていて心地が良い。そこに特製マヨネーズとの相性は抜群という域を超えている。


「ほんと、紗夜ちんは美味しそうに食べるよね〜」


「ふん!美味しいものはきちんと味わって食べるものだ!こんな美味しいものを生み出した人類には本当に頭が上がらない…」


 無我夢中でたまごサンドを食べる。もうお弁当なんて視界に入っていない。ウィンナーよりたまごサンドの方が大事だ。


「いいね〜紗夜ちんのそのとろけた顔、いつ見ても可愛いよ」


「か、かわ!?ゲホ」


 思わずむせてしまった。あぁ、たまごサンドが飛び散ってしまった。勿体ない…。


「か、可愛いとかそういうことを言うんじゃない全く」


「なんでー?美味しいものを美味しいという紗夜ちんみたいに、可愛いものを可愛いっていうのがこの私愛莉だからね〜」


「ぐぬぬ…」


 1分前に言った自分の言葉のミラーリングで返されてしまった。これでは何も反論出来ない。こういう時に頭の機転が地味に早いのが愛莉のいやらしい部分だ。


「あの、いちゃいちゃしてる所申し訳ありません。少しお時間大丈夫ですか?」


「んー、いいよー?どうしたの?」


 話しかけたのは七五三さんだ。昼休みだと言うのに書類を抱え、何かの仕事に追われているようだ。大変そうだが、七五三さんは楽しそうに仕事をしている。この人にとってはこのような役割が天職なんだろう。


「午後の魔獣討伐訓練のペアですが、お2人はいつも通りペアでよろしかったですか?」


「うん、良いよー」「はい、お願いします」


「分かりました。それじゃあそういうことで通しておきますね」


 七五三さんは委員長として魔獣討伐訓練の際のペアの確認をしているようだ。私と愛莉はいつも通り一緒に訓練を受ける。といっても私が愛莉に頼んでいる側だ。さもないと私は一瞬で塵と化してしまう。


「訓練楽しみだねー」


「いや何が?」


 訓練なんて私にとってみればただの地獄に他ならない。魔法という魔獣への対抗手段を持たない私は魔獣へ立ち向かっても返り討ちにされるだけだ。ただの蹂躙である。それの何が楽しいというのか。本当に理解が難しい。


「大丈夫だってー、この私が紗夜ちんのことは守ってあげるから〜」


「うん、本当にいつも助かってる。ありがとう」


「えへーどういたしましてー」


 これは本心だ。だって訓練といえど最低限の護身ができなければ命を落とす可能性がある。私が入学した時からずっと6年もの間生きてこれたのはこの愛莉のおかげだ。

 この学園は7歳までに魔法を発現させた後、女子は必ず入学することとなり、そのまま22歳までエスカレーター式となっている。なお、卒業後は進路は概ね学園の講師となるようだ。そして魔獣討伐訓練は7歳の頃からカリキュラムに組み込まれており、その時からずっと私は愛莉に助けて貰っている。


「でもさー、ちょっとは手伝ってくれてもいいんだよー?紗夜ちんも」


「本当に、それが出来たら苦労しないんだけど…」


「あはー、対象、紗夜ちん、魔法を使え」


「そんなんで使えるようになったら…」


 言いかけたところで言葉が喉に詰まった。なんだ?胸が痛い。左胸、心臓だ。鼓動がとても早くなっているのを感じる。自身の体の深層部分から何かが湧き上がって来ようとするのを感じる。が、それと同時にそれを押さえつけている何かが自分の中に存在しているのも感じる。言いようのない圧迫感、まるで心臓を握り潰そうとしているかのような窮屈さ。息が苦しくなっていく。


「紗夜ちん!?大丈夫!?」


 体が言うことを聞いていない。今自分の体での現象に自分の意思は一切含まれていない。体が熱い。手の周辺、これは?オーラ?自分の体の周りが黄色のオーラで一瞬覆われては消える。魔法が使えそうで使えない。脳がオンとオフを繰り返す。そのまま私の体はショートを起こし、意識を失った。

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