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魔法少女学園  作者: 弟子
1章
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1章V 『瞬間移動』

 体育の時間だ。今回は室内で行う種目の体力テストの測定らしいが、こんなもの魔法が使える者達にとっては出来レースでしかない。


「はい、速水さん反復横跳び976回ね」


「しゃぁぁ!!自己べ更新!!!」


 すげぇ〜などといった声が各地で上がってる。彼女は速水彩夏(はやみあやか)、オレンジ色の髪をした活発な少女で、魔法は『速度変化』である。彼女にとってこの体力テストは子供のお遊びでしかないだろう。


「速水のやつ凄いな〜20秒間で反復横跳び976回だってさ。どんだけ速く動けるんだ」


「んっっ、はぁ、そう、ふぅ!ね。速!いよね…ぜぇ……はぁぁ。ほんと、へぇ、羨ましい」


 斜め上に見える愛莉がジト目でこちらを見てくる。なんだその目は。なにか私に言いたいことでもあると言うのか。


「あのー、紗夜ちん。いつになったら私は上体起こしの1回目カウントできるのー?」


「う、うるさ…はぁ、体が!はぁ動か、ないんだよ。魔法がふぅ…ないから!」


 私が今やっている種目は上体起こしだ。2人1組でペアになり、私は今愛莉に足を押さえてもらっている。いわゆる腹筋と言うやつを30秒で何回出来るかを測定する種目なのだが、20秒経過しても私は1回も自身の胸を膝の元へ付けることが出来ていない。


「もう紗夜ちんの運動音痴は魔法がある無い云々に関係ない気がするけどな〜」


 そ、そんなはずない。魔法が使える人はそのおかげで身体能力もいいだけなはずなんだ。ほら、向こうでも涼風さんが自身の体を一時的に分解して長座体前屈で80cmとかいう偉業を……え?それ大丈夫なのか…?死なない…?


「はい、上体起こし組そこまで。記録を記入してください」


「紗夜ちん〜上体起こし0回だよ…?私紗夜ちんが心配だよー」


 0回かぁ…まずいなぁ。体力テストはせめてC判定は取りたいのだけれど…。ハンドボール投げは苦手だし、走るの遅いし体も固いし…。うーん、握力で稼ぐしかないか…?


「はぁ、疲れた。大丈夫だって。何かあっても私は愛莉が守ってくれるって信じてるから」


「やば〜私めっちゃ信頼されてるじゃんー。これは期待に応えないとねー」


 今のは正直適当に返事した。まぁ向こうも適当に相槌うってるっぽいしなんの問題もないでしょう。


「次は…うわぁぁ、シャトルランじゃん」


「シャトルランかー、どう攻略しようかなー」


 体力テストの測定を行うだけなのに、攻略とかいう似つかわしくない単語が何故か愛莉から聞こえたので思わずツッコミを入れる。


「またなんか悪いこと考えてるでしょ」


「さぁねー。どうでしょー?」


 愛莉も基本的な身体能力はずば抜けて高いわけじゃない。だから、魔法を工夫して使いながらどうにかして高得点を狙いに行っているはずだ。

 シャトルランの順番は…クラスの席順か。ということは小鳥遊さんの隣に行けばいいのかな?


「居た、小鳥遊さんが走る場所はここですか?」


「は、はい。位置的にはここだと思います。な、なので早乙女さんもここかと」


 小鳥遊さんを見つけた。小鳥遊さんは内気な少女で、会話をするといつも最初の1文字を繰り返して言ってくれる。分かるよ〜その気持ち。人と話すのって苦しいよね。


「ありがとうございます。いつもすみませんね。うちの愛莉が席を休み時間ごとに占領してて」


「い、いえ。私はいつも休み時間は、は、速水さんと外に出ていますので…」


 へぇ、小鳥遊さんと速水さんって仲良いんだ。初めて知ったな。確かにその2人とも授業中以外で見かけたことないな。2人でどこかにいるのか。秘密の会合的な?


「そうなんですね、いつも何してるんですか?」


「そ、そうですね。毎回変わりますが。き、今日の業間休みは京都に抹茶アイスを食べに…」


 京都…抹茶アイス…?小鳥遊さん何を言ってるんだ?この学園は東京都C地区4番校舎、京都ってだって修学旅行じゃあるまいし。それとも都はまだ東京じゃなくて京都にあると思ってるタイプの思想強め系ですか…?流石にただの言い間違えだと思うけど。


「え…?いやだってここ東京ですよ…?」


「あ、はい。わ、私の魔法は…」


「はい、シャトルラン組始めますよー!」


 先生の声がかかった。私語が一斉に止み、体育館の半面に緊張が走る。この緊張感、50m走の時もそうだが、このスタートダッシュの前の緊張感が本当に苦手だ。好きなタイミングで走らせてほしい。ほんで測定係が忖度してくれればいいのにっていつも思っている。


「5秒前、4,3,2,1,テレレン!」


 不愉快だ…この音、本当にこの音を聞く度に吐き気がする。さっさと諦めて終わりにするか…

  あ、あれ?小鳥遊さんはどこだ?まだ始まったばかり…あれ?向こう岸にいるのは小鳥遊さん?もしや一番最初の段階からスタートダッシュを決めたのか。馬鹿め。シャトルランの1番最初はゆっくり歩いた方がいいに決まっている。


「でーん、1」


 折り返しだ。7回くらいでやめようかな…あれ?小鳥遊さんもう向こう岸にいる。いくらなんでも早すぎない?え?


「でーん、2」


 折り返…


「うわぁぁ!」


 あれ?おかしい。さっきまで体育館の反対側にいたはずなのにもう一瞬でもう片側までたどり着いている。目の前の景色が急激に変わり驚いて変な声を上げてしまった。


「あ、ご、ごめんなさい。魔法行使時にか、体が触れてしまってたみたいで」


「えっと…これは一体どうなって…?」


「わ、私の魔法は『瞬間移動』です。じ、自身と触れているものなら、み、見たことがある場所に瞬間移動できます」


 えぇーーー、それシャトルランで使うのありなん????圧倒的ズルじゃないか。


「でーん、3」


「あ、い、行きましょうか」


「え?」


 小鳥遊さんが私の体に触れると小鳥遊さんの体が一瞬赤色のオーラに包まれ、また反対側まで連れてってくれた。いや、犯罪まがいのことの共犯を作らないで欲しいんだが。私は正々堂々と記録を出して7回で終わりにしようと企んでいたのに。


「なるほど、それでいつも速水さんは『速度変化』、小鳥遊さんは『瞬間移動』で遠出して遊んでいると」


「は、はい。そうです。楽しいですよ。ま、毎日が修学旅行みたいで」


 そりゃ楽しそうでいいなぁ。かなり羨ましい。魔法が使えるとそんな人外的な遊びもできるのか…私も魔法が使えたらなぁ…。


「でーん、4」


 また小鳥遊さんが反対側まで連れていってくれた。これもしかして小鳥遊さんに任せれば好記録が出せるのでは??犯罪まがいとは言ったが、これもしかしたら私の成績を莫大にあげるチャンスなのかもしれないぞ…!!


「小鳥遊さん、これもしかして私たち凄い良い成績が狙えるんじゃ」


「す、すみません。多分無理です」


「え?」


 まさかの返答、小鳥遊さんからは無理であることが告げられてしまう。な、なんで…。


「こ、この『瞬間移動』って距離によらず1回魔法を行使すると私の体力の10%位をつ、使うんですよ。だ、だから私あと3回くらいがげ、限界です」


 え?????ん??????


「じゃあ普通に走った方が良いだろ!!!」


 この後シャトルランの記録は小鳥遊さんが7回。私が10回で終わった。愛莉は自分の実力で50回くらいまで走ったあと、シャトルランの音源自体に「再生速度0.1倍になれ」という命令をかけて、シャトルランの測定自体をぶち壊し、百鬼先生にこっぴどく叱られていた。

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