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魔法少女学園  作者: 弟子
1章
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1章II 『時間遡行』

 数学の授業がぬるっと終わった。こういう座学は私得意だな〜本当に魔法が存在しなかったと言われる世界にタイムスリップしたい。そもそも魔法が存在しなかった世界でも、今私たちがやっている数学と同じものをやっていたのかどうかは分からないのだけれど。

 もしかして、文字配列から違ってたりしてね。そしてタイムスリップに関してもしかしたらあの子に死ぬ気で頼めばできるのかな……。

 その私の目線の先にいる少女は数十枚の紙束を持ち、おもむろに教壇の上に立ってこう告げた。


「皆さん、英語の小テストの予想問題をお作り致しましたので是非解いてください。今からお配りしますね。」


「「え〜〜〜」」


 クラス中に響く呻き声。もちろん私の声も含まれている。せっかくの休み時間が勉強の時間として消失してしまうのを許せる人間なんてそんな数多くは存在しないはずだ。

 このお節介極まりない少女は七五三柚葉(しめゆずは)さん。黒髪ストレートの髪で凛とした佇まいをしており、基本的に話し言葉は全て敬語である。お家がお金持ちなのだろうか?いつも気品のある雰囲気をだしており、令嬢のような貴さがある、近寄り難い少女だ。

 このクラスの学級委員長を務めており、かなり面倒見が良くみんなからも慕われている優等生である。ただ、この子には若干問題点があって。


「何ですかそのうめき声は!この英語の小テストは毎週クラス対抗で順位が廊下に張り出されるんですよ!1位以外を取るなんて有り得ません!」


  この子、極度の負けず嫌いなんだよな…もちろん学園の定期テストも毎回1位、そしてクラス対抗の行事でも1位以外を取るのは自分が許せないらしく、どうにかして1位を取ろうと模索しているらしい。

 どうにもこうにも、この委員長はメンタルも弱いらしく、私は見た事がないのだが、数年前にテストで初めて2位を取ってしまった際には1週間の間落ち込みモードに入っていたことがあるそうだ。なんで2位を取ったという歴史がこの世界に残っているのか私には割と甚だ疑問ではあるのだけれど。だって、委員長の魔法は……。

 そして、ネガティブモードは自分でも避けたいらしく、結果たどり着いたのがこの予想問題制度なんだそうだ。クラスメイト全員の休み時間を生贄にして、クラス対抗の英単語テストランキングで1位を得ることが出来る。


「委員長さんさ〜」


 愛莉が喋る。私含め、クラスメイト全員が察したような面持ちになる。あーこの展開は。


「はい、どうされましたか?姫野さん」


「その予想問題破って捨てて?」


 もちろん愛莉の体はピンクのオーラを纏っている。『服従』による命令の行使だ。でも、これもお決まりの流れで進級してから1ヶ月も経った5月の今ともなれば恒例行事として見飽きたものである。


「お断りします」


  一瞬紫色のオーラを纏った七五三さんはニコニコとした笑顔でこう告げた。愛莉の魔法を自身の魔法を使って防ぎ、『服従』を阻止したのだ。


「かーっ。またその魔法か〜。私の魔法って最強だと思ってたんだけど2度も防がれると自分の能力の都合の効かなさにイライラするな〜」


「ふふ、貴方のその魔法は私の『時間遡行』の前には無意味です。お分かり頂けましたら、予想問題を解いていただけますね?」


「実質クラス最強だよね〜その魔法。」


 そう。委員長の魔法は『時間遡行』だ。委員長曰く、この魔法には2通りの使い方があるらしい。1つ目はある対象の時間を巻き戻すこと。2つ目はある対象以外の全ての世界の時間を巻き戻すこと。だそうだ。

 おそらく今回委員長が使ったのは1つ目の方だろう。委員長という対象の時間を『服従』の命令を受ける前まで巻き戻したと思われる。これにより愛莉の魔法が実質的に無効化されたという訳だ。

 愛梨の魔法は最強に見えて実は少し使い勝手が悪い。それは一度に2つの条件を命令できないということと、同じ相手に命令する際は5分のインターバルが必要ということだ。それでも充分強いと思うが、この委員長に対してこの能力を行使するためには、「命令の内容」と「魔法使用禁止の命令」の2つが必要になる。仮に後者から命令したとしても、本題の命令をする前に5分のインターバルが必要なので、その間に百鬼先生を呼び出せば魔法無効の能力を行使してもらうことができるため、委員長の勝ちとなる。このパターンは先週の小テストの際に見た記憶だ。

 私も委員長に頼んで2つ目の効果で私以外の世界を魔法が存在しなかった世界に巻き戻してくれないか頼んだことがあったが、やんわり断られてしまった。なんなら1つ目の効果で私を産まれる前まで巻き戻してもらっても構わないのだけれど。


「では、問題をお配りいたしますね。」


 委員長が予想問題を配る。面倒だが正直嬉しい。なぜならこの委員長の予想問題は的中率が100%という優れものだからだ。少しでも成績を上げるのに精一杯な私からするとかなり有難い存在である。この学園で魔法が使えないというハンデを背負ってしまっている以上、魔法の有無に左右されない座学では、優秀な成績を収めなければ私の居場所がとうとう無くなってしまう。

 でもこれって普通に小テストの実施された世界から時間遡行してきて、暗記してきた問題をそのまま私達に解かせてるだけなんじゃ…?とも思ってたりする。まぁ野暮なことは考えないようにしよう。

 

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