表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
昆虫たちの旅物語  作者: オオミノガ
ラヴォイデア共和国編
6/11

5話 幻夢

 その夜、ヤマトは鮮明な夢を見た。

 夢だと信じがたい程あまりにも鮮明な夢だった。しかし現実世界とは程遠い光景だったのでヤマトは一目で夢だと気づいた。

 黄色く、どこかふんわりとした柔らかな夢の中でヤマトは後ろから誰かの声が聞こえてきた。

 「こんばんは。ヤマトくん。」

 そこに居たのは長い碧色の髪の少女。結構可愛い。しかし、奇妙なことにヤマトは今まで一度もこの子に出会った事が無い。なのに彼女は平然とヤマトの夢の中に居る。

 少し驚いたがヤマトは落ち着き、彼女に問いかけた。

 「…聞きたい事は色々あるがとりあえず名前を名乗ってくれ。無名だったら別の話だが。」

 「私はマイラ・ピリム。種族はミヤマカラスアゲハ。」

 「なぜお前は俺の夢の中に居る?現実でお前に会った覚えは無いが…」

 「私、絶滅(フォークロア)スキル「胡蝶之夢々(インキュバス)」っていうチョウ目に伝わる他人の夢の中に入れるスキルが使えるの。だから別に一度も会ってなくてもあなたの夢の中に入れるわけ。」

 ヤマトは顔を抱え、

 「俺とした事が…何を読んだらこんな非現実的な夢を見るようになったんだ…」

 と少々恥じらった口調で言った。

 「まだ私の事を信用しないの?じゃあ次寝たらまた現れてあげるから。その時には絶対に信じれるわよ。」

 「そんな事はもうどうでもいい。それより聞きたい事がある。さっき『俺の夢に入ってきた』という事はお前は現実世界にも居るんだろう?」

 「一応そう言う事になるわね。」

 「じゃあなんで俺の夢に入ってきた?仮に入らざるを得なかったとしてもなぜ俺の夢を選んだ?」

 「まあ、あなたの言う通り私には事情があって他の者の夢の中に入らなきゃいけない。夢っていうのはその人が今まで見たり、聞いたり、感じたりした記憶などが集結している場所、いわゆる一種の精神世界。だから私は夢という名の精神世界に入るとその人の全てを知る事が出来る。だけど今まで入ってきた昆虫たちの夢は常に欲望や悪意などが溜まっていて居心地が悪かった。そして転々と夢から夢へと移っている時、たまたまあなたの夢の中に入ったけど、ここは凄く居心地が良かった。今まで見たことのない、欲望も、下心も、悪意もない、優しさで美しくて澄み渡った精神。これが私の探し求めていた場所だと確信したから今ここに住み着いているのよ。」

 「だから俺の精神世界に寄生しているっつーわけか。」

 「『寄生』なんて気持ち悪い言葉使わないで!こんな可愛い女の子が夢に住み着いているなんて年頃の男子のあなたにとっては最高でしょ!」

 「知らない女が勝手に人の夢の中に住み着いている時点で十分気持ち悪い!

 …それより、さっき、俺の名前を言ってたよな?つまり俺の記憶や精神は既に見られてるって事か?」

 「うん。それがどうかしたの?」

 「時々俺の夢に出てくる茶髪の女性は知っているか?」

 「知ってはいるけどね…私もあの女性の正体を調べてみたけど結局何も見つからなくて…」

 「そうか…」

 「また何か分かったら知らせるね。そろそろ朝だし今夜はここまでにしようか。」

 「ああ。俺の体に支障が出ない限り俺の夢に住み着いても構わない。」

 「オッケー。じゃあね────


 ヤマトは起きた。まだ午前6時だった。隣ではミナ、ナナシ、そしてマリーが寝ている。

 しかし、彼は不思議な感覚だった。夢の中の出会いだった筈が、あたかも本当に出会ったような、そんな複雑な気分だった。

 彼は考えた。

 (マイラはなぜ夢の中に入らなきゃならないのか…なぜ宿主の記憶全てを知るあいつがあの女性について何も知らないのか…なぜ俺には「欲望」が無いのか…謎が深まるばかりだ…)

 しばらくした後、彼は考えることを止め、静かに居間へと向かった。

作者の都合より長期休載させていただきます。連載再開は未定です。時間があれば不定期に連載します。すみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ