6話 金髪の少女
「タマ、今日は帰っていいにゃ。その予定はあとにするにゃ。」
「かしこまりました。では。」
そういってタマは帰った。
「ちょっと!そこの王族ちゃん一体なんの用にゃ?」
チビは堂々と王族に向かって口ごたえをするのでファストは慌てた。
「チビだめだって、相手は本当に王族かもしれないじゃん。ちゃんと敬語つかわないと」
「やだにゃ。そんな必要ないにゃ」
「なんでさ」
そんなやりとりに少女は嫌気がさしたようだ。
「もう!一体なにをごちゃごちゃ言っているのかしら。」
そこらの同じ年の子供なら間違いなく泣きじゃくって親のとこへ行っていただろう。そのくらいに不機嫌そうな言い方だった。
しかしチビはそんなことにはお構いなしだった。人を見下したように振舞う少女にもチビはチビらしく振舞おうとした。
「ねー大丈夫にゃ!。ちょっと挨拶いってくるにゃー」
「おいちょっとまてよ」
チビは鼻歌をしながら少女の元へ歩いて行った。
「ねぇー君名前はなんて言うにゃ?私はチビにゃ。」
「ミナ・オーガナイツよ。コタンの国の王女よ。」
「へー。なんでこっちに来たにゃ?王族は王都にいるのがふつうにゃ。」
「それは・・・。そんなこと言えるわけないでしょ!」
チビはミナの肩を組んだ。
「えーそこをなんとか・・・。」
我慢しなきゃ・・・。と一生懸命に耐えようとミナは頑張った。言ってはいけない。言ってはいけない。
「ねぇ教えるにゃあ」
我慢などできるはずがなかった。
「わ、私は王族であることにつかれた。ただそれだけよ。別荘に行くとか言って一生家出するわ!」
チビは笑顔でミナの頭をなでた。
「あらー。コタンの国の王族はそんな問題抱えてたにゃんねー。それなら今日から私たち友達にゃー。」
「と!とと友達!」
ミナは顔を赤らめて明らかにうれしそうな言い方だった。
(ほぉ。仮にミナが王族だったとして、友達がほしいだけなのかな。俺もようやく女子慣れしてきたとこだったしもう少し友達いてもいいころあいだな)
「ミナ。あのさ、今僕たち二人で遊んでいたんだけどどうかい?一緒にあそばないかい?」
(いたいた。虚言癖を持ってる人ね。王族って嘘ついて見栄はりたい気持ちはわかるよ。でも30ねんぶりくらに人と話す楽しみを思い出してきたし!この子も大切にしていきたい!)
「なによ!平民のくせに!敬語くらい使え!それに王族の私に指図する気?信じられない!」
(えっと・・・。え?もしかして・・・。本当に王族!?)
「ミナ様。もしかして本当に王族の方でありますか?」
「なによ!さっきからそうだって言ってるじゃない!」
「ごめんなさい」
ふんっとミナは腕を組んでそっぽを向いた。
「にゃにゃ!ミナ様は剣と杖を持ってらっしゃるのですかにゃ?戦いは好きですかにゃ?」
「わたし!戦うのすきだわ!物心ついた時からお兄ちゃん3人に鍛え上げられてきたわ!」
「おっ!いいね!じゃあ一緒に戦って遊ぶにゃ?」
「いいわ!人獣族。私が格上だってことを見せつけてやるわ。」
全身真っ白のドレスに装備した剣と杖。
まず二人は距離をとった。
「久しぶりにいい獲物にゃ。」
「本気でいくわ。」
チビはとてつもない速度で一気に距離をつめた。
腰から双剣を出すとミナは腰から剣を出して交えた。
まさに猫がなせる技である
このすばやく力強い攻撃はミナの体勢が安定しなくなるほどの威力だった。
かろうじて双剣を弾き続けた、
結局のところ人獣族であるチビの方が強かった。
ベルヌーイ流の技術でチビの双剣を受け流しても猫由来の身体能力で結局翻弄されるばかりだった。
ミナが振り回した剣の上を一瞬右手をついてはねるとミナの背中に足でしがみついて喉元に双剣をつきつけた。
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「あんた強いわね!」
「まぁもちろん人獣族ですから!亜人にまけるわけないにゃー」
「ねぇ今度私の別荘の城においでよ!今日からお友達よ!」
「にゃにゃにゃ!うれしいにゃー!」
そういってチビはミナを抱きしめた。
「ほらほら!ファー君もくるにゃ!」
(えっと・・・。さすがにやばいよな・・・。)
チビは下りるとファストの背中を押してミナの前に連れて行った。
ファストは右手を出して握手しようとした。
「えっじゃあ。こちらからもよろしくお願いします。」
その時、バチン!と右手をミナは叩いた。
「君とは握手なんて絶対にしないわ。弱いし、平民だし、かっこわるい!」
(えー。まじか)
さすがにチビも驚いて口があいていた。
「友達になんて絶対にならないわ。でも今度その男も私の別荘にきていいわ!二人できなさい!そんな庶民のくらしなんてしょうもないでしょ!」
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家に帰った時のためのいいお土産話が手に入った。そう思って浮かれながら家に帰った。ファストの話を聞いて1番驚いたのはルナだった。意外なことにカンナは落ち着いていた。
「なああに!オーガナイツ家のご令嬢だと!?!?」
そうルナは叫んで夕食中に席を立った。
(驚くのは仕方ないが行儀が悪い。僕だってまさか王女がこんな田舎にくるなんて信じられなかった)
カンナは嬉しそうにファストのお土産話を聞いた。
ローはニヤニヤしていた。
「ねぇねぇお父さん。オーガナイツ家って剣聖サントッシュ・ブラウン率いる王国騎士団がいるあの」
「そうだそのオーガナイツ家だ。」
ローはもはや夢のまた夢のような事態が弟にふりかかって笑ってしまった。
あまりの衝撃に笑うしかなかった。
「ファー。オーガナイツ家の内部事情はだいたいわかったわ。もしかしたら別荘に一流の魔術師がいるかもしれないわ。何かご縁があったらきいてみなさい。きっとファーの才能を知って快く協力してくれるはずよ。」
「わかった!明日が楽しみすぎる!だって人生初めてのお城だもん!」
「おいファー。決して失礼のないように気をつけるんだぞ。」
「いいなぁファー。俺も剣聖に会いてぇ。」
「ローは剣術の練習だぞ。」
「はーい」
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集合場所は巨木。
巨木は根本の部分が大きくえぐれていてそこは秘密基地になっている。
そこにはいつの子供が残したのかわからないが丸テーブルなどといったものが置かれていて
二階なども作られているので部屋として生活で使えるようになっている。
はやく友達と遊びたい。女の子二人と遊べるのはものすごく刺激的で楽しいが。それ以上に人と関われる幸せ。もう二度と一人になりたくない。
「おーいチビ。いるかー」
「いるにゃ。ミナは二階で寝てるにゃー。私と早く集まって運動したら寝ちゃったにゃ」
チビは丸テーブルに肘をついて小声で言った。
「二階行くなら今のうちにゃ」
(こいつ!)
意外とミナはすぐに目が覚めた。
ミナはやばい!と叫んで急いで一階へ下りたものの、全然時間が経っていないと知らされて安心した。
「いくわよ!ついてきなさい!」
ミナは昨日とは違い今日は赤色の動きやすそうな服装できた。ボタンが印象的な服だ。
「にゃにゃにゃー」
相変わらず能天気な性格のチビは鼻歌をずっとしていた。
「ファーはなにか魔術のこと進展あったにゃ?」
「別に特になかったよ。」
「ふーん。こまったにゃんね」
「どーしたのよ!ファスト!魔術のことなら私に聞いて!」
ミナは堂々とそう言った。
「ファーくんは魔力の量がえげつないにゃ。なのに制御しきれないから魔術が使えないにゃ」
「へー!そうなんだ!」
(あいつ絶対に嫉妬してんなー言い方がもう。)
「多分。ファーくんの魔力量だとモ・ルラン地方の中将から大将くらいはあるにゃ。まーもしかしたら総大将に匹敵するかもしれないけど。」
(モ・ルラン地方ってあれか!強力な魔物がはびこるルナのふるさとのハシナウウク共和国があるとこだ!ルナからはこのモシリ大陸の中で最強の軍事国家と聞いているが。僕ってそんなすごいのか!)
「嘘もいいとこだわ。そんなやついるわけないじゃん。そんなやついたら護衛として私が雇うわ。」
(ああこいつ言っちまったよ)
「あとで後悔しないでにゃー」
気が付けばだんだんと草原が石のタイルに変わっていた。
そして徐々に巨大な石の建造物があるのではないかと思わせる
そんな雰囲気が漂いはじめた。
そしてついに
「ここが私のお城よ!喜びなさい!」
ミナは腰に手をあていばった顔で命令口調を使う。
王族のような立場の人はみんなこうなのだろうか。
「わーすごいにゃあ」
ファストを少しの間みたチビはあきらかに気を使った様子でほめた。
あわててファストも便乗してほめた。
チビは貴族なので見慣れているはずだが、ファストは興奮していた。
そんな興奮を忘れるかのようにしてミナとチビのやりとりに便乗した。
いつのまにかミナの機嫌は損ねてはいけないという了解がチビとファストの間にあった。
「この城は私が直々に王様の秘書に頼んで不正にお金使わせて建てたんだよ!」
(この年で不正という言葉を使いこなすのか。こんな考えになる王族ってどういう教育だよ)
「ミナ。そんなことしていいのかいにゃ?」
「いいのよ。別になにかあってもお父さんがなんとかしてくれるわ!」
(とんだ小娘だ。この先が恐ろしいよ)