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異世界は君と  作者: 白老の庶民
第一章:幼少期
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4話 魔法をぶっ放すお話

 


 ローは相変わらず一心不乱に剣を持って練習をしている。ルナもマンツーマンで徹底的に指導を繰り返している。ここまで一生懸命に剣を振る姿はもはや尊敬に値するレベルだった。



 (すごい。成長してる・・・。)

 2階の勉強部屋からファストがローの足運びと剣筋を眺めていたが明らかに上達していた。

 速度、読み、作戦、身かわし、全てが洗練されてきている。

 しかし、もちろんだがルナは全く本気をだしていなかった。


「甘いな。上達はしているが、まだ下手だ。教師雇って器具も使ってるお貴族さんには及ばないぞ。あいつらはなんでもつぎ込むお金の桁がちがう。俺は教師の代わりをしているが、上達のための器具はない。だからもっと剣を振って振りまくるしかない」

 ルナは回りながらローの剣を交わし左手で突き倒した。



「・・・。俺にできんのかな。」

 ローは仰向けになり剣を空へつきだして言った。


「なによ。心配すんな。おまえはまだ9歳だ。今後身体ができあがっていくから、その時は各段に強くなるさ。今はとにかく全力で振り込むんだ。」


 ローは自分の両手を見た。

 その手は木剣を振り込んですっかり変貌していた。

 そう。これは努力の証。


「それにだな。」

 ルナは続けた。


「俺の経験上、器具を使いだすお貴族さんは伸びしろがなくなっていくんだ。」

 ローはルナを見た。


「というのも器具を使って練習するやつは頭を使わなくなるんだ。だからお前はすごいよ。練習に対する姿勢で既にそのへんの貴族は超えている。」


「うん」

 ローはその手を握った。


「だから立派な剣士になりたいなら今苦しめ。お前は素質がある。自信持て」


 ーーーーーーーーーー


「ねぇ。ローが結構上達してるよ。なんかすごいよ。」


「そうだね。剣筋がルナとそっくりになったわね。15歳の試験に向けて練習あるのみだね。」

 ペンを握りながら頬杖えをつくカンナは夕日に照らされながら懐かしそうな顔でそう言った。そしてファストと目を合わせると若干の間をおいて言った。


「ねぇファー。魔法、使えるようになりたい?」


「魔法って、、あの魔法?」


「それ以外になにあるのさ。」


「もちろん。魔法は使えるようになりたいけど」


「その心配なら大丈夫よ」

 (はて?)

「私大学時代に使った本を倉庫から掘り起こして勉強し直したんだよ。」


「えっそうなんだ。ありがとう!教えてほしい!」


「うん。じゃあ今日はもう勉強なんかやめて、魔法の練習しよっか」


「うん。!」


「じゃあ先に外いっててね。」


 ファストは勢いよく階段を駆け下りた。

 カンナは大きな本を順番に軽く目を通すと一冊の本を抱えて一階へ下りた、


「お、ついにファーも魔法か。」


「お母さんが大学の勉強をやり直したらしい!すごく大変だったはずなのに。」


「よかったよかった。」

 ルナはそう言いながら剣を振った。

 ローは上体を起こして手のマメをいじりだした。


 ーーーーーーーーーーーーー

 カンナに導かれてファストが付いていった先は原っぱだった。

 空高くそびえたつ巨木が一本たっているその原っぱを走りまわる子供がいた。


(あぁ同年代ってあんな感じか。やっぱ俺ってやばいやつだな)

 ファストは自分と男の子を比較して優越感と落胆が入り混じった感情に襲われた。

 さすがに同年代の男の子をみてもとくに不安感などはなかった。さすがに幼すぎた。


(もう1人・・・いや、一匹?)


 一瞬目を疑ったがよく見れば木陰には猫耳がついた猫のような人間がいたのだ。これにはファストも興味津々である。


(コスプレ・・・か?でもなやけにあの耳は本物っぽい)


「あらら、珍しいね。人獣族よ。」


「じん・・・じゅうぞく?」


「ざっくり言えば人間の仲間よ。同じ人類。3種類いる人類のうちの一種類よ。」


「へー」


 その人獣族は立ち上がると巨大な木の上に猫のようにしてよじ登り、大きな枝のうえで周囲を見渡していた。


「なにしてんだろ。」


「なにしてんだろうね。」


 一方で小さな男の子2人組は大声ではしゃいでいた。

 戦いごっこに夢中になっている。


「ファー。あの子たちにもしも遊ぼっていわれたら遊びにいける?」

 

 カンナはふと思ったことを口にしてみた。子供達はファストと年齢がそう変わらないはずだがファストとは明らかに発達の程度が異なる。ファストのあまりにも知能が高いという面を懸念しての発言だった。


(まぁ行けなくはないのかもしれないけどきっとお父さんみたいな感じになるだろうな。)


「まぁ行けない事はないと思います。」


「そっか」


カンナは笑顔になった。このファストの発言によって裏付けされた不安と安心の両方に葛藤することになった。


「じゃあ魔法のことを教えてください。」


枝の上にいた猫耳の人間は耳を動かして横目でファストを見た。

ファストとカンナは気づくはずがない。


「そうだね。始めるか」




「一般魔術を扱うにはまずはこの本のここの部分を読んで」


そこには非常に難しい内容がかかれていあった。簡単にいうと一般魔術を使う時、身体を流れる魔力に力をくわえて動かすには頭の中でプログラミングをしなければならない。

「ただ魔法を使うだけだったらゆっくりこの本に書かれている事を読みながら応用をしていくでいいんだけど、それはすっごく難しいし実生活で使うなら理解して暗記していつでもスラスラと呪文を組み立られるようにする必要があるわ。」


「これはすっごく大変で難しいですね。」


「うん。6年間みんなで教えあいながら練習たくさんしてようやくある程度の実力者として認められるわ。ローみたいに剣で生きていくのもすっごく大変なんだけどファーみたいに魔法で生きていこうとするのもすっごく大変なんだよ。実際に魔法使ったら頭にすごく負荷かかるし。」

カンナはかつての辛さを思い出すようにして指で文章をなぞった。


「今回はまずは凝り固まった魔力を動かせるためにする呪文を組み立てるから」


カンナは本に挟んでおいた大きな紙をとりだしてファストの前で開いた。

文字がたくさん並んでいてざっと単行本の1ページ分はありそうな文字量だった。

その紙はカンナが書き上げた魔力を動かせるようになるための呪文だった。すでに組み立てが終わっているのでただ読むだけで魔術師の一歩手前まで来れるというわけだ。

加えてみたことのない文字もかかれていた。ファストは困った表情になるも下側にはカンナの気遣いで読み方が書かれていたので読むことができそうだった。

 

 枝の上からは身を乗り出して猫人間がファストを見ていた。

 

「じゃあ読むね」


「さぁこれで魔術師の一歩手前よ!」


 そのままファストは紙にかかれた呪文を読んだ。

 ゆっくりつっかかりながらも正確に読み上げた。

 しかし何も起こらなかった。


 「あれー。おかしいな呪文は間違ってないはずなんだけど・・・。」

カンナは困った顔でその紙を読み直しはじめた。


 その時だった。


 バチン!と脳内で大砲をうちこむような音が鳴るとファストの意識は飛んでいった。




 その暗闇の中で何者かが声をかけてきた。

 



「君は・・・。一体何者なんだい?どこから来た・・・?」


「僕は、、、ハギの村出身の」

その声の主はまるでファストがかろうじで返した返事を聞いていなかった。


「君。なんか匂いというか、雰囲気というか、生理的にというか、そのずばぬけた深い思考の得意さも色々と引っかかるところだけど・・・。」


「まぁそっか。君は別にそういうやつじゃないよね。いいよ。失礼言ってわるかった。それ相応の魔法ね使っていいよ」


 その瞬間、ファストは意識を取り戻した。

 カンナは紙を眺めて悩んでいた。



 ファストの身体全体を囲むようにして白い光が浮かびはじめた。まばゆい光でその場にいた者はすっかり見惚れてしまうような光だった。魔法を一通り学習したカンナはその光をみて驚いた。驚かざるを得なかった。


 その白い光は次々とファストの体内へと取り込まれていく。

 新しい光が浮かび続けさらに体内へ取り込まれていく。


「想像以上にたくさん取り込んだね。今までみたことないよ。聞いたこともないし。」


 ファストは自分の体内にまるで巨大ななにかを抱えこむような感覚を覚えた。しかし重さもなにもないので日常動作には影響がないのでたいそう不思議な感覚だった。


「なんかさっき一瞬意識が飛んで。暗闇で誰かに話しかけられたんだけど」


「そうなんだ!きっと魔帝の寵愛よ!感謝しないとね!」

カンナは適当にそう返した。カンナの発言は適当な憶測だったので結局正体などはなにもわからなかった。でも剣と魔法が発達したファンタジー世界に生まれた以上ファストもたいして気にすることはなかった。そのくらいなんらかの偶然でおこるだろう程度にしか考えていなかった。


「まぁ今日は試しに魔力を外部に打ち出す練習でもしておこうか。基礎練習はこれね。ここに自分がつかいたいように呪文を組み合わせて色々な魔法に形を変えるのよ。その難しい話はまた今度ね。」


魔力を打ち出すこと自体は3つの呪文をくみあわせればいいらしい。

頭の中で呪文を組み合わせていく。


(よし。これで組み立ては終わった)

その時だった。前方に突き出した右手が勝手に震えだした。左手で必死に抑え込もうとするも無理だった。

「ファー!危ない!」

カンナはとっさにファストに飛び掛かり右手をつかむと右手にしがみついて右手が空を向くように全身で固めこんだ。


(あっ・・・)

その瞬間右手からは巨大な滝のようにして透明な液体が空に向かって発射された。その瞬間ファストは頭の中が3日間睡眠をとらなかったかのような感覚に襲われて気絶した。


(お母さんがおさえてくれなかったら、もしかしたらとんでもない被害があったかもしれない・・・)

ーーーーーーー

気が付くとさっきの猫人間とカンナがそばにいた。


「あっ目がさめたにゃ」


「よかったよかった。これは困ったね。」


(困った・・・?気絶の後遺症でもあるのだろうか)


「やけに白い光がとりこまれるなって思ったけど、まさかいきなり怪物級の魔力が右手からでるとは思わなかった。」


(えっと・・・。ほめてくれているのだろうか。もはや僕は天才魔術師としての第一歩を歩んだことで嫉妬しているのだろうか)


「これはそうとう重症にゃ。頑張ってほしいにゃ。」


「ねぇチビもそう思うでしょ?」


(なになに。もっと素直にほめてくれよ)


「君、ファーくんっていうんでしょ」


「はい」


「もってる魔力の量が頭おかしいうえに、5歳の子供が今の段階でそんな魔力が出てきちゃうなら今後魔力の制御がちょー難しいにゃ。君は才能が偏りすぎて相当苦労するにゃ。」


言葉の意味がわからなかった。



「今のうちに補足しておくにゃ。このまま制御ができなかったら多分魔術師として仕事するのは無理にゃ。戦いも無理にゃ。灯りとか暖をとるだけであっても殺人レベルにゃ。戦いでも魔法ひとつで地形変えて街ごと森ごと仲間さえも消し去る可能性があるにゃ。」



「だから魔法使うのは今後気をつけようね。お母さんもつきっきりで指導するからさ。」

よくわからないが、とにかく謎の悲しみが込み上げてきた。

 (おんぶされていた頃に見て感動した魔法をようやく使えたと思ったら今度は威力がすごすぎて、制御がききそうにないと見切られて遠まわしに遠慮しろと)


 ファストはこの世界に来て初めて思い通りにいかない経験をしたのであった。



―――――――――――――――――――――――――


よろしければ下側の星などよろしくお願いします。

一生懸命に書いているのでもの凄く励みになります



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