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異世界は君と  作者: 白老の庶民
第一章:幼少期
4/10

3話 勉強!勉強!勉強!

 

 ファスト:3歳

 ロー:8歳


 ------------------------

「そんじゃあ学校行ってくる!」

 ローは8歳になり学校へ通い始めるようになった。

 8歳になると4年制の学校に通い出すのだが決して強制ではない点で前世の学校とは異なる。まして礼儀作法や最低限の農業や建築技術など、自給自足な生活に必要な知識を学ぶのだからほぼ別物としてとらえるべきだろう。いわば子供の独り立ちを支援する機関がこの世界でいう学校なのだ。


 ある日の夜、両手を後ろで隠しながらルナはローの前に立った。


「ロー、この前大学行って一流の剣士になりたい。って言ってただろ?」

 ローは一体何が起こるのかを察して表情が変わった。


「これは、剣、こっちは木剣だ。」


 そう。最近になってローは剣を与えられたのだ。

 それからというもの、丁寧で滑らかに作られたその木剣を片時も側から離さずに生活し始めるようになった。


「よし。大学の入学金の話は俺がカンナと進めてる。ローはお金の心配はせずにこの剣を持って自分を追い込むんだ。俺みたいに木剣に血の跡がつくくらい振り続けないと2流にすらなれないかもな。」

 ルナは天井へ向かって持ち上げたその剣を自信に満ちた目でみつめた。その剣はたしかにしみ込んだ血の跡が残っていて壮絶な努力を感じることができた。


 剣の道、それは非常にロマンがあるが、その分過酷を極める生き様になってくる。

 過酷な練習をやり抜いたところで才能がなければ、その他大勢があっという間に追い越してしまうのだ。そういったこと8歳のローにはなんとか理解ができていたようだ。剣をもらってからというもの剣に注ぐ愛情とやらが、明らかに異常なものとなっていた。


 剣は普段はもちろん寝る時でさえも離さなかった。


 (すっげぇ)

 布を巻いて皮ケースにしまった状態で抱きかかえて眠りにつく。

 いくら剣に愛情を注いだとしても、正直ファストにとっては信じられない行動だった。


 剣を学ぶ大学についてだが、入試のシステムが前世の大学とは異なる。

 剣の大学は、純粋に実力と素質の2点を実技で評価して合否が決まるのだ。

 なので15歳の春に入学できるのかどうか。

 それをかけた練習は非常に過酷になる。

 お金で教師や練習器具を購入して上達させる貴族様たちとも勝負をしなくてはならないのだから。




「まずはランニングだ。種類にもよるが、ローは俺と同じ種類の剣を使いたいんだろ?ならば瞬発力が大切だ。体力は剣を振りながらみにつければいい。」


「次は剣の打ち合いだ。この流派をうまくなりたいとかあるのか?」



 この世界には剣の流派が主に3つ存在する。



 ハヤサカ流

 ・圧倒的速度と剣筋で一撃で仕留める事を重視する


 ベルヌーイ流

 ・受け流しやステップを使った華麗な技術で相手を手玉にとり仕留める


 剣帝流

 ・複数の種類の剣を扱い上記2つの流派をつかいこなす。世界でもごく少数しか扱えない最強の流派。一定以上の才能と狂気的な努力が必要。



「ベルヌーイ流を学びたいです。」


「わかった。俺と同じ流派だな。立派な剣士に育ててやる。」


「お願いします。」



 ーーーーーーーーーーーーーーー



 今日も剣を振り回して練習に打ち込むローをファストは家の前の原っぱに座り込んで眺めていた。

 家の庭にあるイチョウの木や家の隅におちる栗などが季節を彩る時期だ。


 ファストの後ろから歩いてきたカンナも座り込んだ。

「ローはルナと違って剣筋に丁寧さがあるね」


 カンナはそう言うと間をおいて付け加えるようにして続けた。


「あのね、ルナって実は剣士としてはなかなか優秀な大学を卒業してんだよ。」


「そうなんだ。大学を出てることは知ってたけどすごい大学をでてるんだ。」

 カンナはそういうファストをみてニヤリと笑った。


「私も実は大学をでてるんだよ。」

 意外な発言だった。

「えっお母さんもなんだ。どんな大学なの?」


「魔法を学ぶ大学だね。」


「え!魔法にも大学あるの!?」


「そうだよ。もちろん。ファーも魔法の大学に興味あったりする?」


「うん。興味はあるよ」


「剣とどっちが好き?まだわかんないか。」


「魔法の方が好きかな」


「ねぇ魔法の大学も実力で入学できるか決まるの?」


「魔法は純粋な学力勝負になるわ。魔法は剣と結構違うのよ。」

(学力試験か。えっと、てことは魔法を使える能力は不問ということか。変なの)


「じゃあ勉強を頑張んないと行けないんですね。」


「そうよ。すっごく大変だったんだから。」


「魔法をどれだけ使えるかっていうのは入学に関係ないんだ。」 


 魔法は入学して学び始めるまで使えない人が多いわ。入学前に使える人は将来王族の護衛を任されるくらいの天才だよね。でもファストはすっごく賢いから魔術師としての才能はすごく高いと思う。一般魔術を使う人は頭にのしかかる負荷に対応しなきゃいけないから賢い人はどんどん複雑で高度な魔法を使えちゃうの。


(なんだと・・・。賢い人に有利なのか!?ならばやるしかないではないか!)


 ぜひ教えてほしいと言った。

 気持ちが昂った。

 カンナの反応はとても嬉しそうだった。

 やはり、息子が自身の得意分野に興味を持ってくれるのはうれしいのだろうか。

 いいよ。とカンナは言葉を返した。



「うんありがとう!」


「ただし、まずは入学試験の勉強ね!」







「えっ???」

 正直まさかすぎた返答だった。

 ーーーーーーー


「おい、お母さんから聞いたぞ!おまえ魔法の大学に進学するために勉強するんだってな!もうファーに家庭教師がつく時期がやって来たのか?」

 ローは興味津々だった。


「いや、僕に家庭教師がつく事はないっぽい。お母さんが国で3番目に難関な魔法大学を出てるし、みっちり教えてあげるって。」


「へーまぁお母さんって意外とすごいもんな」


「うん。まぁ本当は入学のための勉強じゃなく魔法の勉強がしたいんだけどね」


「いいなぁ。ファ―は絶対賢いから絶対凄い人になれるもん!まぁ俺が剣でボコボコにするけどな。」


「うけて立つわ。」


「ローは実際身体能力高いから剣士志望で頑張るのはあってるかもね」


「まだ全然下手だけどね。まぁ俺にめんどっちい勉強はいらないのは確実だな」


「・・・。」


「もしファーくんすごーいって美人がたくさん集まってきたらどうする?全員に好きって告ってね」


「やだ。」


「何緊張してんのか。ファーは女の子と話せないだっさい男だーって街中のみんなに言いふらすよ」


「うん。少し不安。コミュニケーション苦手だし。」


「おもんな!だっさ!俺が恥ずかしくて外あるけねぇわ!」


 ファーはやめて!と言い返した。

 ローはきっしょ。と笑顔で連発する。

 3年も一緒にいれば案外なれるもんだ。

 所詮兄弟だけど成長したとみていいのだろうか。



「まぁいいわ。仮にそうだとしてもお前は大天才だから、十分すげえよ。」


 背中をごつごつの手で強く叩かれた。

 きっと加減がわかっていない。

 ーーーーーーー


「おいファーついに明日から勉強だな!俺もうれしいぞ!お母さんは色々な事しってるからなんでも聞いてどんどん賢くなれよ!」


「うん。頑張る。まぁ本当は魔法の使い方とかを勉強したかったんだけどね。」


「ごめんね。魔法なんだけど魔力を動かせるようになるまでは教えれるんだけど、その後はしっかり教わらないと大変なの。将来王族の護衛についたり最先端研究をするような人達なら入学前から魔法たくさん使うんだけどね。」


「あそうなんだ」


「ごめんね。」


「まぁファーなら勉強の内容くらいすぐに覚えきっちゃうかもね。」


「よーし。ファーとローの両方がどんな将来になるか楽しみだ!。剣と魔法、それぞれ別の道に進もうとしてるんだし!貴族みたいにお金で教師雇って鍛え上げた野郎どもに負けんな!」


「大変だなぁでも剣では負けたくないね。」

 ローは夕食で出されたパンにかぶりついた。


「大丈夫だ。俺のベルヌーイ流を叩きこんでやる。」


 ローはルナを横目でみた。


 ーーーーーー

 2階に新しく勉強部屋が作られた。

 そこで毎日カンナがつきっきりで入学試験対策を進めてくれるのだった。


 紙にペンを持ってカンナは文字を書いていった。


「まずはコタン語からいくよ。コタン語は主にここコタンの国でコタン人が話しているんだけどね、そのコタン語を読み書きして話して伝える能力は大学へ行き国を支える立場になるならば重要だよ」


「コタン語はエイ字とロン字とカイ字があるから地道に覚えていくこと。あとは本を読んだりとか、色々だね。」


 コタン語の文法は日本語と同じということもあって語彙さえ覚えれば複雑な文章を読み書きする事には苦労しないだろう。しかし、日本語のように3種類も文字を覚えなくてはいけない事はかなり大変だった。


 一カ月も経てばエイ字とロン字は覚えてしまった。

「やっぱうちのファーは天才だわ!」


「お母さんがしっかりおしえてくれるから覚えやすかったかな」


「次はカイ字なんだけど、本当に量多くて大変だから、同時並行で基本的な教養の勉強始めよっか。」


「おねがいします。」


 教養なので、広く浅く学んでいくらしい。日にちをかけて多くの事を学ぶのだが、今回魔法の勉強をした時にファストが強く関心を持った内容は以下だった。


 魔法の種類


 ・妖精魔術

 ・一般魔術

 ・陣魔術


 ・妖精魔術

 妖精の力を借りる魔法。外部の力を利用するため疲れない。一部の魔法を使える庶民が使う。妖精と契約することが必要で契約すると他の種類の魔法はつかえなくなる。

(妖精の実体は未だかつて確認された事がない。そもそも妖精は存在しないというぶっとんだ学説もある)


 ・一般魔術

 冒険者など、戦いの場で一般的に使われる魔法。スタミナにあたる魔力量や、威力などは、個人の才能や努力に依存する部分が大きく、体力を消耗するので未熟者が安易に使うものではない。


 ・陣魔術

 魔法陣を壁や地面に仕掛ける。罠や、スパイ活動など用途は様々である。しかし、仕掛けた場合使用者含めて、誰からも認識する事はできないので仲間や自身に対する自滅行為には注意しなければならない。陣の作り方を座学でしっかり学んで実践する事が上達の方法である。


 ある日、神話の勉強もした。

 なかなか神話もおもしろかった。




 ある日無に現れた至高神カマは2人の神を生み出した。


 法帝は世界の法則を書き換える能力を与えられた。

 熱帝は無限の力を生み出す能力を授かった。

 ある日3人の神は話し合った。この退屈な無の世界をおもしろくしようと考えた。


 熱帝は法帝に無限の力を与え続けたので無の中に無限個の時間を生み出した。

 しかし、実際に思い通りにいったのはたった一つ。

 至高神カマはもう一度法則を書き換えようとする法帝を止めてその一つの時間を大切にしようと言ってきかせた。

 ある日さらに4人の神様を至高神は生み出した。その時間の中に3つの世界を創りだし、そこに4人の神様を置いた。


 剣帝は魔力と剣を操り

 魔帝は新たな魔法を自由に作って操る。

 竜帝は最強の人類の頂点に立ち

 天帝は弱い人類の頂点に立つ。


 竜帝はその人類に力と知恵を与えた。その人類は生き物としていきるように導かれた。

 天帝はその人類に高度な知恵を授けた。その人類は瞬く間に傲慢になった。

 剣帝と魔帝はそれら人類が間違った道に進まないように強大な力をもってして、見守る役割を与えられた。至高神はその6人の神と会うことはなかったが6人の神様が間違いを犯さないように確かに見守っていた。


 ある日、ある謎の人類は別の人類に対して戦争を起こした。

 6人の神様はその人類がどこから来たのかはわからなかった。しかし間違いなくその世界には存在しない力を乱用する様に危険を感じて鎮圧しようと動きだした。しかし、熱帝と法帝はすぐに無力化し、剣帝と魔帝は捕えられた。至高神の命令で竜帝は自分の世界を守ることに徹してその世界にすむ人類を臨戦態勢にし鍛え上げた。窮地に立たされた人類を守るべく動き出した天帝は激戦の末、右腕と右足を切り落とされて、鎮圧は失敗しその人類は滅ぼされた。


 その後、至高神カマが動き出すことを恐れて神々は追放され一命をとりとめた。


 この神話には続きがあるらしい、しかし口承として残っているだけで文献はない。


 今から3,4千年前に起こったとされる戦争がおこった。竜帝が守る世界へとついに人類が攻め込んでだ。圧倒的な力でもってしての奇襲で大混乱になった。しかし長く竜帝が人類と共に過ごし、鍛え上げたその世界の人類は竜帝の指揮で態勢を整えし圧倒的な力で疲弊した人類を押し返した。

 一旦退散した人類はその後報復として攻め込まれて、その人類の世界で戦争がおこった。怯み弱った隙をついて天帝により、世界を2つに分断した。


(なるほど。結局は宗教がらみの戦争があったって認識でいいのか?まぁ本当かどうかもわからんが)



 口承という事もあって、それはただの話し家のような人がつくったお話だという人が多いらしい。しかし一応昔実際に起こった事実として入学試験ではたまにでてくるらしい。

(まぁ前世の日本でも史実と教育される内容がどうのこうのってのはあったし、事実かどうかってのよりも覚えているかどうかっていう能力を測りたいわけだから理にはかなっているよな)


 あれこれ余計な事はかんがえずに覚えることは覚える!ただそれだけ!










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