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青き時間の朱い夏  作者: ジョジョ
初幕 Sunset
1/9

壱ノ話 序章は電子遊戯

8月の1ヶ月間で始まって終わるような、いくつも転がっている物語の1つ。

貴方にとっては与太話ですが、少なくともこの者達は全力で生きていた。

そんな物語です。




8月1日、午前9時30分。

ピンポーンと、家のベルが鳴った。

誰かなんて、分かりきっている。

高校二年の水無月翔太みなづきしょうたは仕方なくリビングのインターホンに向かった。

「アイツ今度は何用だ……?」

母親は2階で、周辺には誰もいないが誰かに届くよう愚痴をこぼしながら翔太は歩いた。

「はーい」

「遊びに来たよー」

遠目でも誰かわかるインターホンのカメラに誰も映ってないのに、声だけがした。

「どちら様ですか?」

少し迷った末に翔太が出した返答だった。

「入るね」

「おい」

翔太が返答をした時には既に玄関のドアがガチャっと音を立てて開いていた。


「お邪魔しまーす」

明るい声が玄関中に響いた。

「あらぁ、いらっしゃい!」

ベルが鳴った時には何も言わなかったのに、2階から母親が聞き取れる声で言った。

「ねぇ、ゲームしない?」

「別にいいが……、お前勝手にここまで入ってくるのそろそろ止めろ。コトワリ」

翔太が呼んだ先にいる少女―――初霜理(はつしもことわり)は「別にいいじゃん」と言わんばかりに肩をすくめた。

「私ここに何回来たことあると思ってるの? もう……」

「よくはないからな?」

「まぁいいや。ほら、持ってきたからやろうよ。この暑い中頑張って通ってきたんだよ?」

「何mあったっけ?ここからお前の家まで」

「5mあるのかな」

「じゃあ何が『この暑い中頑張って通ってきた』だよ! しかも家の日陰で大して暑くねぇだろ」

「え、バレた?」

「何でバレないと思った?」

理は不満そうに頬を膨らませて「テレビ借りるよ?」と言って勝手にゲームを繋げた。


翔太と家が隣の幼稚園からの幼馴染(おさななじみ)。それが理。

頭がかなりいい上に端正(たんせい)な顔立ちと、神様が与えすぎた感が出てるけど別に違うのが現状で、不器用で運動神経は悪く、何かと弱点が多い。あと我儘で人見知りだから友達もあまりいなくて、翔太がほとんど唯一の友達。ただ学校にファンは一定数いるらしいが、常に翔太と歩いているから周りから付き合ってる(翔太曰く『そんなわけがない!』)と勝手に認識されているため誰も話しかけず。そしてその事実を2人は知る由もない。


「ていうかお前来るの早くないか? 夏休みだし俺、起きてからまだ時間経ってねぇよ」

「大丈夫、私起きたの8分前だから」 

「それ絶対健康面悪いと思うぞ」

「仕方ないじゃん。お母さんもお父さんもお姉ちゃんも家にいなかったんだもん」

食卓の長椅子を1つ勝手にテレビの前に持ってきて、そこに座る。

「ところで、これ何のカセットが入ってんだ? ゲーム」

「レーシングゲーム」

「ならいい。銃撃戦系のやつは俺に勝ち目がないからな」

「人誘っといてそれはしないって。私でも流石に」

「したよな? 割としたよな?」

「さーってじゃあ翔太の車を廃車にしよう」

「人の話を聞け」

急ピッチで取り繕ったであろうニコニコ笑顔の理に翔太は文句をすぐさまぶつけた。


翔太が言った通り、銃系のゲームなら理は持ち前の頭脳で無類の強さを誇る。

巷ではゲームで理が愛用している名前の『reason』(日本語で『理由』)と、ついでの風評被害で基本一緒にいる翔太が使ってる『No.6』(水無月、つまり6月)の2つは結構恐れられているとか。ただ、この事実も2人は知る(よし)もない。


「お前スピード特化させすぎだろ」

「コントロールなんか見てタイミングくらい合わせなよ」

「ちょっと前まで『コントロール難しすぎる!!』とか言ってたやつの台詞かそれ?」

「……、早く選んでよ。車」

「おい、しれっと誤魔化すな」

当然、この幼馴染は聞く耳を持たないが。

―――そこから何時間か程度、ひたすら翔太と理はゲームで車を走らせた。

翔太の車は恐らく落下により3台くらい犠牲になった(だからどうしたという類いのゲームだが)。尊い犠牲だった。何色だったかも覚えていないが。

ただ、適当に翔太が置いておいたトラップに理が知らずに突っ込むことなどがよくあるので、順位的にはあまり変わらない。

あと、理は炭酸が飲めないので翔太が自分が飲む用+理への嫌がらせ用としてコーラをコップ二つと一緒に持って行ったら、理が持ってきたオレンジジュースのペットボトルで頭を叩かれて、それからというものしばらく殺意のこもったプレイングで翔太に車をぶつけてきて崖下に叩き落とされた(その時に翔太の車2台がスクラップになった)話などもあるが、至極(しごく)どうでもいいので一旦置いておくとしよう。



日常と非日常を行くこの『青い時間の朱い夏』、最後まで見てくれたら嬉しいです。

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