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05 ゴブリンとの死闘 後編

 祈るような気持ちで、洞窟の入口が見えるところまでやってくる。


 洞窟の前には、棍棒を手にしたゴブリンがワラワラと出てくる。ま、当然そうなるか。


「邪魔だ! どけ!」


 俺がゴブリンの言葉を喋ったことに驚き、動きを止めた連中をなぎ倒す。接近して来た奴は柄を使った棒術で殴殺する。


『レベルが上がりました』


「ッたく、使えねえ連中だな。どけ、囲んで逃がすな」 


 人間の大人ぐらいある、大柄のゴブリンが行く手を阻む。手には斧、ゴブリンの上位種って奴か? 雑魚ゴブリンよりは強いのだろうが……


 振るわれた斧を躱し、迷わずデスサイズを振り下ろす。


「はっ! そんなミエミエの攻撃喰らうかよ」


 ゴブリンの上位種は防ごうとした斧ごと叩割られて呆気なく絶命する。


『斧術を記憶しました』

『レベルが上がりました』


「お前ごときに構っている暇はないんだよ」


 上位種を一撃で倒され、すっかり戦意を失ったゴブリンを蹴散らし洞窟へ入る。


 中は火が焚かれていて、思っていたより視界が確保出来る。ゴブリンは夜目が利く訳じゃないんだな。流石に暗闇では戦えない。助かったが、臭いがきつい。排泄物と死臭が混ざり合ったような酷い悪臭が洞窟の奥に進むほど強くなっている気がする。


 先ほどから新手が来ない……嫌な予感がする――ッ!


 突然、洞窟の奥が昼間のように明るくなり、スイカ大の火の玉が飛んでくる。くそっ、魔法か? 


 幸い火球は小学生のドッジボールぐらいの速さだ。それなら――


 ミコトさんのデスサイズに切れぬもの無し!


 デスサイズでぶった斬ると火球は跡形もなく消滅した。本当に斬れたな……スゲェ!


『火魔法を記憶しました』


 おおっ、念願の魔法きた! なるほど……ファイヤーボールね。頭の中に、魔法の使い方が流れ込んでくる。


 杖を持ったゴブリンが3匹――魔法使いゴブリンか?――魔法を斬られたことに驚き、固まっている。魔法を待機していた2匹が、慌てて魔法の詠唱を再開する。


『ファイヤーボール!』


 さっきファイヤーボールを放ってきたゴブリンに、覚えたばかりのファイヤーボールを撃ち込み黒焦げにしながら、詠唱中のゴブリンとの距離を詰める。


『ウォーターボール!』『ウインドカッター!』


 魔法使いゴブリン2匹がようやく詠唱を終える――あと一歩。


『ファイヤーボール!』


 ウォーターボールをファイヤーボールで相殺し、ウインドカッターはデスサイズで切り裂く。


『水魔法を記憶しました』

『風魔法を記憶しました』


 残り1メートル。


「魔法ありがとな」 


 魔法使いゴブリン2匹をデスサイズの柄で瞬殺する。


『レベルが上がりました』


 魂を吸収して更にレベルが上がる。


『レベルが上がりました』


 奥の方から悲鳴が聞こえる。ゴブリンじゃない。まだ生きてる人がいる。自然とデスサイズを握る手に力が入る。


 洞窟の奥は大きな空間になっていて、そこから道がいくつも分かれているようだ。すべての道を捜索するのは骨が折れるが、幸いその必要はなさそうだ。


 広間の奥には、2メートル以上ある巨大なゴブリンがふんぞり返り、岩壁を削って造ったであろう玉座

に座っている。おそらく奴がボスだろう。左右には、斧を持った上位種ゴブリンと杖を持った魔法使いゴブリンが控えている。そして雑魚ゴブリンが……ざっと50匹。


 そして……肝心の人間、おそらくフリアたちの家族を素早く目線で探す――見つけた……しかし、ボスのところか。遠目だが、流血が酷く意識も無いようだ。生きていたとしても急がないと間に合わなくなる。


 どの道、やることは変わらない。下手に連携を取られる前に、全員俺の糧にしてやる。

 

 神水をひと口飲み、デスサイズを手に単身ゴブリンの群れに突っ込む。


 ゴブリンたちは、突然現れた俺に驚いていたが、ボスがすぐに怒声を上げる。


「侵入者だ。構わん殺せ!」


 ボスの命令に、ゴブリンどもが一斉に襲い掛かってくる。だが……判断が遅いんだよ……


『ウォーターボール!』『ウインドカッター!』『ファイヤーボール!』


 群がる雑魚ゴブリンに魔法を浴びせる。もちろん誤爆はしない。


『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』


 たまらず、上位種と魔法使いが前に出てくるが、今の俺には足止めにもならない。デスサイズでまとめて斬り飛ばす。


『レベルが上がりました』 


 ボスゴブリンは、一瞬驚きの表情を浮かべるが、すぐに獰猛な笑みに変わる。


「お前、中々強いな。折角の食事の邪魔をしたんだ。楽しませてくれよ?」


 ボスゴブリンが口から何かを吐き出す。人間の指だ。頭にかっと血が上り、心の中で何かが切れる音が聞こえた。


 自分でも驚くほど冷たく低い声が出る。


「お前は俺の糧だ。大人しく喰われてろ! 雑魚が」

 

 雑魚と言われてボスゴブリンが激怒する。刃渡り1メートル以上の頑丈そうな大剣を抜くと、見た目からは信じられないスピードで剣を振り下ろす――くそっ、避けられない。


 高い金属音と共にデスサイズで何とか大剣を受け止めるが、力負けして膝をついてしまう。……なんて馬鹿力だ。


『身体強化を記憶しました』 

『剣術を記憶しました』


 なるほど、こいつの馬鹿力は身体強化スキルのおかげか。ならば俺も――『身体強化』を発動。


「どうした。威勢がいいのは最初だけだったな。ぐふふふ」


 ボスゴブリンが更に力を込めて押しつぶしにかかる――が、


「な、何故だ? 急に力が……バカな」


 ボスゴブリンの剣を押し戻しながら、デスサイズを反転させ柄の部分で鳩尾を突く。


「ゲボォァッ」


 取り落とした大剣が地面に刺さり、思わず膝をつくボス。


「どうした。威勢がいいのは最初だけだったな。死ね」


 デスサイズを一閃させると、ボスの身体から青い血が噴き出し、地面を血の海に変える。しばらく痙攣すると崩れ落ちて動かなくなった。


『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』


 ボスの身体から、他のゴブリンよりあきらかに輝きの強い魂が出てくる。これは期待できそうだ。迷わずデスサイズで吸収する。


『レベルが上がりました』

『レベルが上がりました』


 ……さすが、ボスだけあって結構レベル上がるな。魂も強さに応じて質が上がるのか?


 まだ雑魚ゴブリンが少し残っているが、無視だ。本当は殲滅した方がいいのだろうが、今は時間が惜しい。


 倒れている人は、中年の男性だった。フリアたちの父親だろうか? 手足が喰い千切られ酷い状態だが、辛うじて生きているようだ。一番生存率が低いと思っていたが。


 すぐに神水を口に注ぐと、逆再生したように手足が生え、元通りの状態になった。さすがに服は破れたままだが。神水……マジ半端ない。


「う……うう、ここは……? 私は死んだのか?」


「大丈夫、ちゃんと生きてますよ。俺はカケル。フリアたちに頼まれて助けに来ました」


「……フリア? フリアたちは無事なのか? ……良かった」


 よかった。やはりこの男性はフリアたちの父親のようだ。


「俺が会ったのは、フリアとフリオです。母親ともう一人のお兄さんは一緒じゃないんですか」


「マリアナとトマシュも一緒に捕まっているはずだ。私が最初に檻から連れ出されて、奴に食べられ――ッ!手足が――あ、あるぞ? 傷も無くなっている……どうなっているんだ……」


「あー、怪我が酷かったから俺が回復薬を使って治しました。調子はどうですか?」


「部位欠損が治る回復薬なんて聞いたこともないが……すまない、貴重なものを使わせてしまった。名乗るのが遅れたが、私はロナウド。行商人をしている」


「いえ、仕舞っておいても宝の持ち腐れですから、どうか気になさらず、ロナウドさん。フリオにも言ったんですが、町の案内をしていただければ十分です。それより、お二人を探さないと」


「ッ!そうだった。場所ならわかる。こっちだ――うわぁ!」


 ここでロナウドさんが初めて周囲の状況に気が付いたようだ。そりゃゴブリンの死体が死屍累々と積み重なって酷い惨状だから驚くのも無理もない。臭いもひどいし。


「……これ、全部カケルさん一人でやったのか?若いのに大した腕だな」


 ロナウドさんが驚いているが、正直自分でも驚いている。この短期間でここまで強くなれるとは思わなかった。 


 ロナウドさんの案内で分かれ道の一つを奥へ進む。ゴブリンは逃げ出したのか1匹も見当たらない。 


「無事でいてくれよ……マリアナ、トマシュ……」  


 ロナウドさんの祈るような呟きが聞こえた。



5話終了時点でのステータス

 

【名 前】 カケル=ワタノハラ(男)

【種 族】 人族

【年 齢】 17

【身 分】 自由民

【職 業】 流浪人

【状 態】 良好


【レベル】 22

【体 力】 389

【魔 力】 2467

【攻撃力】 389

【耐久力】 389

【素早さ】 389

【知 力】 2467

【幸 運】 90


【スキル】 瞬間記憶 スケッチブック<1> デスサイズ<1> 火魔法<1> 水魔法<1> 風魔法<1> 剣術<1> 棒術<1> 弓術<1> 斧術<1> 身体強化<1> 人語 ゴブリン語 


【加 護】 死神の加護 


 


 

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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[一言] もう向かうところ敵なしじゃないですか( ´∀` )
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