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生ミコトさん


「うわあ!? か、カケルくん?」


 突然現れた俺たちに腰を抜かすイソネ君。


「悪いけど、邪神が動き出した……なんで全裸?」


 言っておくが、今回だけはワザとじゃない。そもそも元男の裸を見て喜ぶほど飢えてはいない。まあ、しっかり記憶はするがな。


「あ、ああ、みんなから着せ替え人形扱いされてここに隠れていたんですよ……」


 なるほど……さぞ良いオモチャになったことだろう。女性陣にとって、たまらないシチュエーションだしな。


「状況は理解した。ちょうど良い、これを着てくれ」


「? 何も見えないんですけど?」


 ふふふ、そうだろうそうだろう。これは俺の夢の集大成……完成したばかりの傑作だからな。


「じゃじゃん、『透明マント〜!!』これを着ていれば、視覚的にはもちろん、匂いや魔力、音までも、周囲から完全に消えるのだよ!」


 これでイソネ君のリスクはほぼ無くなる。


「す、すげぇ……カケルくん……これは男の夢そのものですよ!!」


 さすがはイソネ君。このマントの有用性に瞬時に気付いたか……。伊達に英雄と呼ばれてはいないということか。


「ふふふ、見事成功の暁には、そのマントはイソネ君にプレゼントしようではないか!!」

「うおおおおおおお!!! やる気マックス!! カケルくん、俺死んでも成功させますから!!!」


 ふふっ、その心意気やよし。ただ、全裸美女の見た目で言われても変態……としか思えないが。



「よし、頼んだぞ、状況は最悪だ。邪神が自暴自棄になって世界ごと消し去ろうとしている」

「邪神が自暴自棄……!? いったい何が?」


「……黒歴史に耐えられなかったんだろう」

「……それは仕方ないですね」


 はっ!? いかん、気分がお葬式になってしまった。


「だからこそ、俺たちが止めてやらないと。自分の黒歴史のせいで自爆するなんて、あまりにも悲しすぎるだろ? まさに誰も得をしない負の連鎖だ」



「そう……ですね、俺、このチェンジスキル、最初は使えない外れスキルだと思っていたんですよ……でも、そうじゃなかった。ちゃんと意味があったんですね」


 ここで何で俺がこんな目に~とならないところがイソネ君の凄いところだ。心底世界を救うスキルの所持者に相応しいと思うよ。ありがとう。



「そ、それより、なんだか空が暗いような……!? 空気も淀んでいる?」


「ああ、邪神のいる世界から漏れ出る邪気の影響だな。世界同時多発でスタンピードが発生しているんだ」


「うえっ!? それってヤバいんじゃ!?」

「大丈夫だ。俺の嫁さんたちと召喚獣たちが時間を稼いでくれている。俺たちが邪神を止めれば全ては終わるんだ。行くぞ!!」


「は、はい!!」



『カケル、邪神への転送が始まる……』


 ミコトさんは、特例で今回だけ死神ミコトとして本来の姿で参戦している。もう嬉しくて、さっきから抱きつきたくなる衝動を必死に抑えているのだ。


『むふふ~ミコト先輩~!』


 なのに、キリハさん。なんで貴女だけミコトさんに抱きついているんですか!? 羨ましい!!


「きゃああああ!! ミコトさん可愛い~!! 本物初めて見た~!!」


 何の躊躇もなく抱きつく美琴。くっ、美琴、お前もか……? 俺だけ我慢する意味ないじゃん。もう……いいよね?


「ミコトさあああああん!!!」


 ミコトさんの胸に飛び込む。どうせ転送が終わるまではやることなど無い。貴重な生ミコトさんを堪能しなければ!!


『ふふふ、カケル、存分に甘えるといい』


 ミコトさんに優しく頭を撫でられる至福の時間。ああ……幸せ。



「……こ、この仲間はずれ感……俺も参加した方がいいのかな?」


 仲間はずれ状態のイソネ君には申し訳ないが、それはご遠慮願おう。



『いい? 邪神のところに飛んだ瞬間にイソネはチェンジを発動しなさい。どれぐらいかかる?』


「い、一秒もかからないかと思いますけど……」


 ミコトさんの質問に不安そうに答えるイソネ君。


『遅いね。一秒あれば千回は殺される……カケル、時空魔法でサポートして』

「わかった。安心しろイソネ君。時間の流れが百分の一になれば、十回殺されるだけで済む」


「ええ……結局殺されるんじゃないですか……」


『馬鹿ね。そのために私とミコト先輩が付いてるんじゃない。一瞬なら時間稼ぎくらいできるわよ?』


 イソネ君を安心させるように笑うキリハさん。確かに心強いことこの上ない。



『でも、念のため、カケルも切り札を使って』

  

 ふえっ!? 切り札って何? そんなの知りませんけど?


「すげえ! そんなのあったんですね、さすがカケルくん!!」


 いや……さすが言われても心当たりありませんよ?


『はい、これ食べて、カケル子になりなさい』


 期待に満ちた目で世界樹の実を差し出すミコトさん。


 ああ……そういえば、そんなことがありましたね。忘れたかったんですけど?


「…………あの、そんなのが邪神に効くとは思えない――――」



『大丈夫、初見殺しだから絶対に効く』

『大丈夫よ。イリゼ様ですら動けなかったんだから、邪神ごときでは意識も保てないんじゃないの?』


 え……? 俺の女体化ってそんなにヤバいの? 女体化が俺の切り札っていうのも……まあこの際気にしても仕方ないか。


『イソネ、絶対にカケル子を見るな。死ぬから』


 ミコトさんの言葉には、一切の誇張もない。震えあがるイソネ君。



 どうでもいいけど、なんか俺の方が邪神っぽいんだけど、気のせいだろうか……? 



***



 七色に輝く光のドームが俺たちを包み込む。イリゼ様による転送が始まったのだろう。 



 もう後戻りは出来ない。待ったなしの一発勝負が今、始まる。

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i566029
(作/秋の桜子さま)
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